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着実に前進するトゥザグローリー、残すは「G1の壁」の突破のみ!?
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也


87~96年は12月のハンデG2戦、97~99年は6月の別定G2戦、00~05年は12月のハンデG3戦、06~11年は12月の別定G3戦として行われ、コースも阪神芝2500m阪神芝2000m阪神芝外1800mとさまざま。そして今年から6月の別定G3戦、コースは阪神芝2000mに変更されて行われることになった。

条件がこれだけコロコロと変わる重賞は他に見当たらない。いじられっぷりはインパルス・堤下アンジャッシュ・児嶋ハリセンボン・近藤春菜あたりと遜色ないのではないでしょうか(笑)。位置付けとしては宝塚記念の前哨戦ということになるのだろうが、しばらくはこのポジションで落ち着かせてあげたい感じである。

その鳴尾記念。10頭立てという少頭数に加え、確たる逃げ馬が見当たらず、スローペース必至という印象だったが、イケトップガンが引っ張った流れは1000m通過62秒3。後半4Fは11.9-11.2-10.6-11.6という速いラップが並び、上がり3Fは33秒4となった。

この開幕週のスローペースで前有利の展開を2番手から押し切ったのが、昨年の宝塚記念で2番手から押し切ってレコード勝ちしたアーネストリー、ではなく、前走の中山記念で後方ままで⑩着に大敗していたトゥザグローリーだった。

大外枠からポンとゲートを出たトゥザグローリー。鞍上の福永騎手が内の各馬の様子を見つつ、ジワリジワリと好位へ進出し、2コーナー過ぎで2番手へ。その後は終始スムーズに追走し、直線で逃げていたイケトップガンを交わして先頭に立ち、そのまま脚色衰えずに後続の追撃を封じてみせた。

トゥザグローリーが計時した上がりは33秒2で、これより速い上がりを計時したのは後方からレースを進めた②着のショウナンマイティだけ(32秒9)。地力で上回る馬が前有利の流れでスムーズに先行してしまえば後続は為す術なし、という結果だろう。

ただその中でも、自分の競馬に徹し、自己ベストの上がりを計時してトゥザグローリーに半馬身差まで接近したショウナンマイティ高評価に値する。半年の間に鳴尾記念で2回走っていずれも②着という結果になってしまったが、末脚に安定感が出てきて、ひと皮剥けた感がある。前走で重賞初制覇を飾ったのも納得だ。

一方のトゥザグローリーは近走で掲示板内ふた桁着順という戦績で、安定感には欠ける印象ながら、京都以西のG2・G3戦では4戦4勝と負けなしだったから、能力を発揮すれば今回くらい走っても不思議ではない。

ひと皮剥けた感があるとすれば、[0.1.0.4]と好走実績に乏しかった5~7月の期間で、また、[0.0.1.7]と連対実績のなかった馬番9番より外枠で勝利を挙げた点だろう。この不安材料については、鳴尾記念『メインレースの考え方』でも指摘され、軸候補として浮上しながら評価を下げられる形となっていた。

ひとつだけならまだしも、通常、有力馬で不安材料を複数抱えていたりするとなかなか信頼を置きにくい。今回のトゥザグローリーは勝利実績のない休み明け(3ヵ月半ぶり)でもあったから、中心視する気にはなれなかったが、流れを読み切ったような先行策を取ったことも含め、地力で不安材料をかき消し、勝利を掴み取った、という印象を受けた。

昨年の宝塚記念夏負けして本調子を欠いていたようで、⑬着と大敗していて、今回の勝利によってすぐさま暑い時期もOKとは言い切れないだろうが、そのあたりはおそらく陣営も対処はしてくるはず。

トゥザグローリーは今回の鳴尾記念の勝利によって重賞5勝目となったが、G1では[0.0.2.6]有馬記念で2年連続③着と好走しているものの、連対圏内には届いていない。

宝塚記念ファン投票第2回中間発表では、トゥザグローリー1万6088票を集めて5位にランクインしている。その他の上位馬はG1連対馬ばかりで、競馬ファンはそういった馬たちと同等に評価し、期待している1頭と推測できる。

6月24日の宝塚記念(G1、阪神芝2200m)に向けては、「G1の壁」不安材料として話題にのぼりそうだが、それを突破できるかどうか。夏場や外枠を克服し、栄光に向かって着実に前進している感のあるトゥザグローリーのキャリアにおいて、最大の関門といっても過言ではないだろうが、その挑戦の結果を今後も見守っていきたいと思う。