ワンツーした2頭の異なる走りに、ディープインパクト産駒の凄みを感じた
文/編集部(M)、写真/森鷹史
数あるJRA重賞の中でも、
エプソムCは
サンデーサイレンス産駒がかなり
苦手にしたレースとして記憶している。今年も
アクシオンが出走していたから過去形で語るべきではないのだろうが、
エプソムCでの
サンデー産駒の成績は[1.1.6.34]。勝ったのは、後に
宝塚記念を制する
マーベラスサンデー(96年)しかいない。
エプソムCは春の東京開催の終わりに行われ、
梅雨時であることも手伝って、
荒れ馬場で施行されるケースが多い。そのため、
サンデー産駒が自慢の
切れ味を殺がれてしまう、というのが不振の理由として語られてきたことだった。
今年はサンデー直仔が
アクシオンだけだったが、
サンデー2世種牡馬の産駒が6頭出走していた。中でも、
サンデーサイレンスの最良後継種牡馬とも言われる
ディープインパクトの産駒が2頭(
トーセンレーヴ、
ダノンシャーク)いて、いずれも人気を背負っていたので、どんな走りを見せるのか、注目していた。
結果的に、その2頭が
ワンツーを飾ったのだから、
ディープインパクト産駒はサンデー産駒とは一味違うということなのだろう。しかも、その2頭は直線で
異なる走りを見せ、それでいながら接戦を演じたわけで、
ディープインパクト産駒の
奥深さを感じさせられることになった。
先行策を取って残り200mで先頭に立ち、押し切ってみせた
トーセンレーヴは、上がり3Fが
35秒2だった。上がりがかかるなか、へこたれずに走って勝利し、パワーがあるところを見せた印象だった。
一方、②着まで差し込んだ
ダノンシャークは、上がり3Fが
33秒9だった。これはもちろんメンバー中最速で、良馬場発表ながら重そうなあの馬場で切れる脚を使ったのだから、その非凡な能力を見せたと言えるだろう。
今回は、①着馬と②着馬の上がり3Fが1秒以上も異なり(
1秒3差)、それでいて走破時計が同じ(1分46秒7)という珍しいレースだった。言ってみれば、ワンツーを飾った2頭は
違う走りをして高いパフォーマンスを見せたわけで、これが違う種牡馬の産駒なら合点がいく。
ところが、
トーセンレーヴと
ダノンシャークは同じ
ディープインパクト産駒である。しかも、母父も
カーリアンでまったく同じだ。こんなことができる種牡馬はなかなかいないだろう。だからこそ、改めて
ディープインパクトの凄さを感じたのだった。
エプソムCで
サンデー2世種牡馬の産駒が優勝したのは、これで3度目になる。過去2度の勝ち馬は
ダークシャドウと
サンライズマックスで、いずれも
ノーザンダンサーのクロスを内包していた。
ダークシャドウはノーザンダンサーの4×4、
サンライズマックスはノーザンダンサーの5×4というクロスを持っている。
今回ワンツーを飾った
トーセンレーヴと
ダノンシャークは、父ディープインパクト×母父カーリアンという配合で、
ノーザンダンサーの5×4というクロスを内包している。このことと
エプソムCで好走できたことは、おそらく偶然ではないだろう。
ディープインパクト産駒は、すでに1600mから2500mまで、異なる距離の芝重賞で勝ち馬を輩出している。出走歴がありながらまだ勝ち馬が出ていないのは、3000m以上と1400mだけ(芝1200m以下の重賞は出走歴がない)。
距離適性の幅は相当に広いことが窺い知れる。
そして、距離ばかりでなく、今回のように
決して走りやすいとは言えない馬場状態でも高いパフォーマンスを見せるのだから、いったいどれだけ凄いのだろうか。日本と比べれば馬場が整備されてるとは言い難い海外のレースでも、
ディープインパクト産駒なら苦も無くこなすことができるのではないだろうか。
エプソムCはG1の谷間に行われる重賞で、決して注目度が高いとは言えないだろうが、
サンデー産駒が苦手にしたそのレースでディープインパクト産駒が高いパフォーマンスを見せたことは、ある意味で
エポックメイキングな出来事だった。
ディープインパクトなら
サンデーサイレンスを超えていける。そんな気がしてきた。