オルフェーヴルが真骨頂の走りで復活してみせた
4コーナー。大外から堂々と先頭を窺うルーラーシップに対し、オルフェーヴルは内に突っ込もうとしている。開催最終日の馬場は明らかに外の方が走りやすい。こんなときに内をつく人気馬は苦し紛れの距離稼ぎであることが多い。
「やはり今日はルーラーシップの日で、オルフェーヴルの復活はまだまだ先か」とそのときは思ったのだが、次の瞬間、後方にいたショウナンマイティがオルフェーヴルをマークするかのように内に入っていったのを見て、考えが変わった。
「レースを戦っている人たちは、今日はオルフェーヴルが強いと見ているのか?」
いつものように大外から追い込むショウナンマイティなら、挑戦状をルーラーシップに叩きつけに行くはずである。その挑戦状がオルフェーヴルに向いている、ということは…。
ここから先のオルフェーヴルの走りはもちろん心に残るものだったが、今日のハイライトは、4コーナーでの3頭の動きだった。外からレースを見ている私は、「今日はルーラーシップの日だ!」と思っていたのだが、戦っていた人馬たちは「オルフェーヴルだ!」とどうやら感じていたらしい。
本当のところはどうだったのか。特にショウナンの浜中騎手がどう考えていたのかは興味深い。ずっと後ろからオルフェーヴルとルーラーシップを見ながら競馬をしていただけに、いろいろと思うところはあったのではないだろうか。
このように、騎手の心理が知りたくなるようなレースは名勝負に違いないが、さらなる衝撃と感動を与えてくれたのが、オルフェーヴルの走りだ。
今年に入って2戦2敗。特に天皇賞は見せ場を作ることすらできない惨敗。中間も復調の気配は乏しく、調教師も「七割のデキ」と言う状態。こういうことは過去に幾多の名馬も経験し、だいたいは復活までにさらに長い時間を要したものだが、オルフェーヴルはいともあっさりと復活してみせた。直線だけの競馬になったあたりが「七割のデキ」なのだろうが、それで2馬身差をつけられるのだから、底力が違いすぎる。
昨年のダービーのときに、「この馬は、どこをどう走っても突き抜けてくるんだ」と思ってしまったが、今日はまさにそんな走りだった。
馬場状態や馬込みを苦にしない走りがオルフェーヴルの真骨頂。思えば今春敗れた2戦は、いずれも馬込みから外に出していたので、単に馬込みの中にいる方がいい馬なのかもしれない。
これで、体調に問題がなければ凱旋門賞に挑戦することになると思うが、多少の不利は承知の上で馬込みの中で競馬をすれば、オルフェーヴル本来の走りが見られそうだ。正直言って昨日までは、「今年の凱旋門賞は楽しみがないなあ」と思っていたのだが、今日の勝利でこちらも盛り上がってきそうだ。
オルフェーヴル復活の影に隠れてしまったが、ルーラーシップの走りも力強かった。昨年までは「ここ一番でG1が勝てない弱み」がどうしても目立っていたのだが、前走の香港圧勝でひと皮むけ、今日は堂々と勝ちに行く競馬を見せることができた。相手が悪かったとしか言いようがない。
とにかく、サンデーサイレンスが入っていない超良血馬だから、種牡馬としての期待度はすごく大きい。その期待に負けないだけの競走実績を、これから半年で一気に積み上げていけるだろう。
今日はハイペースで力と力の戦いになり、「これぞG1!」と呼べるレースになったのではないだろうか。
宝塚記念としては、アドマイヤムーンとメイショウサムソンが壮絶な叩き合いを見せた5年前と似た流れ。スタミナを失った馬がどんどん脱落し、力のある馬だけが最後に残る。先導したネコパンチも良かったが、それについていった全馬も偉い。結果的には、この流れがオルフェーヴルの眠れる闘志に火をつけ、強さを引き立てる役目にもなったかと思う。
文/安福良直、写真/森鷹史
4コーナー。大外から堂々と先頭を窺うルーラーシップに対し、オルフェーヴルは内に突っ込もうとしている。開催最終日の馬場は明らかに外の方が走りやすい。こんなときに内をつく人気馬は苦し紛れの距離稼ぎであることが多い。
「やはり今日はルーラーシップの日で、オルフェーヴルの復活はまだまだ先か」とそのときは思ったのだが、次の瞬間、後方にいたショウナンマイティがオルフェーヴルをマークするかのように内に入っていったのを見て、考えが変わった。
「レースを戦っている人たちは、今日はオルフェーヴルが強いと見ているのか?」
いつものように大外から追い込むショウナンマイティなら、挑戦状をルーラーシップに叩きつけに行くはずである。その挑戦状がオルフェーヴルに向いている、ということは…。
ここから先のオルフェーヴルの走りはもちろん心に残るものだったが、今日のハイライトは、4コーナーでの3頭の動きだった。外からレースを見ている私は、「今日はルーラーシップの日だ!」と思っていたのだが、戦っていた人馬たちは「オルフェーヴルだ!」とどうやら感じていたらしい。
本当のところはどうだったのか。特にショウナンの浜中騎手がどう考えていたのかは興味深い。ずっと後ろからオルフェーヴルとルーラーシップを見ながら競馬をしていただけに、いろいろと思うところはあったのではないだろうか。
このように、騎手の心理が知りたくなるようなレースは名勝負に違いないが、さらなる衝撃と感動を与えてくれたのが、オルフェーヴルの走りだ。
今年に入って2戦2敗。特に天皇賞は見せ場を作ることすらできない惨敗。中間も復調の気配は乏しく、調教師も「七割のデキ」と言う状態。こういうことは過去に幾多の名馬も経験し、だいたいは復活までにさらに長い時間を要したものだが、オルフェーヴルはいともあっさりと復活してみせた。直線だけの競馬になったあたりが「七割のデキ」なのだろうが、それで2馬身差をつけられるのだから、底力が違いすぎる。
昨年のダービーのときに、「この馬は、どこをどう走っても突き抜けてくるんだ」と思ってしまったが、今日はまさにそんな走りだった。
馬場状態や馬込みを苦にしない走りがオルフェーヴルの真骨頂。思えば今春敗れた2戦は、いずれも馬込みから外に出していたので、単に馬込みの中にいる方がいい馬なのかもしれない。
これで、体調に問題がなければ凱旋門賞に挑戦することになると思うが、多少の不利は承知の上で馬込みの中で競馬をすれば、オルフェーヴル本来の走りが見られそうだ。正直言って昨日までは、「今年の凱旋門賞は楽しみがないなあ」と思っていたのだが、今日の勝利でこちらも盛り上がってきそうだ。
オルフェーヴル復活の影に隠れてしまったが、ルーラーシップの走りも力強かった。昨年までは「ここ一番でG1が勝てない弱み」がどうしても目立っていたのだが、前走の香港圧勝でひと皮むけ、今日は堂々と勝ちに行く競馬を見せることができた。相手が悪かったとしか言いようがない。
とにかく、サンデーサイレンスが入っていない超良血馬だから、種牡馬としての期待度はすごく大きい。その期待に負けないだけの競走実績を、これから半年で一気に積み上げていけるだろう。
今日はハイペースで力と力の戦いになり、「これぞG1!」と呼べるレースになったのではないだろうか。
宝塚記念としては、アドマイヤムーンとメイショウサムソンが壮絶な叩き合いを見せた5年前と似た流れ。スタミナを失った馬がどんどん脱落し、力のある馬だけが最後に残る。先導したネコパンチも良かったが、それについていった全馬も偉い。結果的には、この流れがオルフェーヴルの眠れる闘志に火をつけ、強さを引き立てる役目にもなったかと思う。