再び「ダート血統、すげえ」と思わせられた
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
ふた桁人気の馬が勝利しても、レース後には
納得できる部分がいくつか見つかるのが
競馬というものだが、今回の
七夕賞については、どうにもそれが当てはまらない。
ただただビックリするばかりで、レース前にタイムスリップしてもう一度予想をしても、おそらく
アスカクリチャンを①着では買えないと思ってます(苦笑)。
レースが終わっていろいろ調べて、ある意味、いちばん驚いたのが
210万円ということだ。
210万円ですよ。何かわかりますか?
3連単配当? いや、違います。
七夕賞の3連単配当は
59万1030円でした。WIN5の配当? いや、それも違います。
プロキオンSも12番人気の
トシキャンディが制したことで、今週のWIN5は3ヶ月半ぶりで
1億円オーバーの配当になりましたから。
何が
210万円なのかは、最後に記すとしましょう。まあ、すでに知ってる人もいるかと思いますが。
優勝した
アスカクリチャンは、今回が
5ヶ月ぶりの休み明けだった。過去3度の休み明けは③③④着。いずれも未勝利~500万のレースで、勝ち切れていない。
また、これまでの7連対をすべて
マイル戦で記録していて、1800m以上では[0.0.3.3]。3度の③着は未勝利~500万での芝1800mだったから、
2000m重賞という舞台は厳しいのではないかと思っていた。
加えていえば、
稍重以上の道悪芝では③⑨⑤着だった。
父スターリングローズ×
母父ダイナレターという砂の猛者同士の配合だから、パワーを求められる道悪芝がダメとは思えなかったものの、実際に好走歴がないのは気になった。
これらすべてが覆されたのだから、
驚くなと言う方が無理だろう。
アスカクリチャンの単勝を獲った、もしくは、同馬を①着にした馬券を獲ったという人がいれば、
『馬迷男』の連載にメッセージをお寄せください。
「七夕賞&プロキオンSの的中報告」を募集しているので。どうして買えたのか、ぜひとも教えていただきたいものです。
この驚きは、ある意味、
1991年の金杯・東以来だ。と書くのは言い過ぎかもしれないが、
アスカクリチャンの母父
ダイナレターを見てそのレースを思い出したので、ここで触れておきたい。
91年の金杯・東(いまの中山金杯)は、最軽量ハンデが前走で900万を勝ち上がったばかりのインドラ・51kgで、トップハンデが
59.5kgを背負った
ダイナレターだった。
ダイナレターは前年に
銀嶺Sを
60kgで勝ち、
61kgで
京葉Sを、
62kgで
武蔵野Sを制していたが、これらはいずれも
ダートの1400~1800m戦だった。芝は3歳時に勝ったことがあったものの4歳以降は[0.1.1.10]で、
芝2000mの重賞で
7歳馬に
59.5kgというハンデを課したことを見て、
「無茶苦茶だろ!」と思ったことを覚えている。同様に思った人も多かったようで、
ダイナレターは12頭立ての9番人気だった。
ダイナレターはダート実績馬だったが馬格があるほうではなく、
440kg台での出走が多かった。
91年の金杯・東でも446kgで、だからこそハンデ59.5kgを「酷い」とも思ったのだが、なんと先行策を取って、
②着にクビ+ハナ差の④着に食い込んだ。そのレースぶりにびっくりし、
「ダイナレターはなんちゅう馬だ」と感心したものだ。
ついでに記しておくと、そのレースを制したのは、
ダイナレターに次ぐ重ハンデを課せられた
カリブソング(
59kg)で、同馬も当時はダート実績馬だった(芝は新馬戦の1勝のみ)。それでいて重ハンデを克服して
芝重賞を制したものだから、
「ダート馬、すげえ」と唸らされたのである。
アスカクリチャンは重ハンデではなかったし、もともと芝馬でもあるのだから、その点では合点がいく。しかし、前述したように今回は
まったく好走歴のない条件だったから、驚き度合いとしては、
91年の金杯・東に匹敵する。20年以上の時を経て、再び
「ダート血統、すげえ」と思わずにはいられなかった。
アスカクリチャンは前記した通り、
父スターリングローズ×
母父ダイナレターという配合で、セリ市で市場取引されている。1歳時の北海道オータムセール(2008年)で取引が成立し、その時の売買価格が
210万円だった。
3歳5月に初勝利を挙げた
アスカクリチャンは、4歳時の昨年に4勝を挙げ、今回が
通算6勝目となる。レース前に8600万円を超えていた通算の獲得賞金は、今回の
七夕賞の①着賞金(4000万円)を加えて、ついに
1億円を突破した。このような馬を見つけられる人もまた、本当に「すげえ」と思いますね。