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直線1000m重賞は「口げんか」と似ている!?
文/編集部(M)、写真/森鷹史


アイビスサマーダッシュは昨年までの過去11回で、牝馬が9勝牡馬が2勝男性女性が同じ条件で戦って、これほど女性が勝ちまくる競技もあまりないんじゃないかと思う。

他に何かあるか?と考えてみたが、自分ひとりでは思い浮かばなかったので、知人にメールして聞いてみた。すると、数分後に返信があった。「口げんか」。

いや、おたくの夫婦事情を聞いたわけじゃありません。そもそも口げんかは競技じゃないでしょう(笑)。

そのようにリメールを送ろうと思って、携帯を握ったのだが、そこでふと、ある番組のことを思い出した。3年前に『NHKスペシャル』で放映された「女と男~最新科学が読み解く性~」という番組だ。

その番組は、文字通り、最新科学を使って女性男性の違いをひも解く3回シリーズで、自分自身、その中で特に印象に残ったのが「口げんか」についてだった。

日常生活のなかで口論が絶えない夫婦が登場し、実際に口げんかが始まった。その時の男女の違いを研究する場面があったのだが、男女は同じように口論をしているように見えて、実は、男性が頭に血が上っているのに対して、女性は非常に冷静なのだった。口数が圧倒的に多いのは女性の方なのに、冷静なのも女性の方なのである。

口げんかの最後は、男性が言い返さなくなり、黙ってその場を立ち去るケースが多いようだが、それはヒートアップした男性がその場から逃げてクールダウンしないと体がもたないからのようだ。一種の逃避行為で、体を守っているのだろう。女性はそれをする必要がないほどに冷静なのである。

男性である私は女性、おそるべし」とその時に思ったのだが、もしかして直線1000mの重賞も、これと似た部分があるのかもしれない、と改めて思った。

一直線の1000m戦は、見るからに息つく暇もなく、慌ただしいことこの上ない。だが、実はそう見えても牝馬冷静で、落ち着いて走っているのではないか。口げんかをしている女性のように、口数は多くても(脚の回転は速くても)頭の中は冷静なのではないか、と思ったのだ。

自分も口げんか女性に勝つ自信はないから、今年のアイビスサマーダッシュを勝つのも牝馬なのだろう。そう結論付けてレースを見守ったわけだが、そんな時に限って牡馬が勝つという(笑)。競馬とは不思議なものだ。

ただ、牡馬で勝つチャンスがあるとすれば、それはパドトロワではないかとも思っていた。慌ただしいように見えて、実は冷静。そんなレースをできるとすれば、仙人のような騎乗を見せる安藤勝騎手パドトロワではないかと思っていたのだ。

果たして、安藤勝騎手は、まさにそのようなレースを見せた。好スタートを決めた後に3番手で脚を溜め、残り200mを切ってもまだ慌てた素振りがなかった。1馬身半差の快勝だったから、それだけ馬に余力があったのかもしれないが、それにしても落ち着き払った騎乗だった。

牡馬アイビスサマーダッシュを制したのはカルストンライトオに次いで2頭目で、同馬はスプリンターズSを制している。パドトロワも昨年に②着になっているから、スプリントG1で勝ち負けできる馬であれば男馬でも勝負になる、ということなのだろう。そして、冷静沈着にレースを運べれば、勝つチャンスが訪れる、と。

レース後、「口げんか」と返答してきた知人には、「男でも勝つチャンスはあるぞ。仙人のように冷静になれ」と返信しておいた。

すると、「たぶん仙人のようにして黙っていたら、『何か言いなさいよ!』と言われる。もしかしたら、モノが飛んでくるかもしれない」と返ってきた。モノが飛んできたら、それは「口げんか」ではなく、別の競技になるので、早く逃げてください(笑)。