「5歳馬の成り上がり」に注目していくのも悪くなさそう!?
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
好きか嫌いかと聞かれれば、以前の
中京記念なら何の迷いもなく
「好き」と即答できたと思う。成長期にある4歳馬がここで重賞を勝ち、その後に大舞台へ上り詰めていく過程を見ているのが楽しかった。
90年以降、4歳時に
中京記念を勝ってその後にG1馬となったのは
オサイチジョージ、
レッツゴーターキン、
メイショウドトウ、
ツルマルボーイ。
メイショウドトウは
中京記念で重賞初制覇を飾り、その後にG1で
テイエムオペラオーの
②着になること5回。なかなか勝ち切れないレースが続いたが、
01年宝塚記念で待望のG1初勝利を挙げた。個人的には、3馬身差の圧勝だった
中京記念が上昇の契機であり、
メイショウドトウのキャリアでひとつの
ターニングポイントだったと思っている。
ツルマルボーイも同じ。まだ準OPの身ながら格上挑戦した
中京記念で5馬身差の圧勝。53kgの軽量だからと看過できないパフォーマンスで、今後に期待が膨らんだことを憶えている。その後、G1では
②⑪④②②⑮④着と突き抜けられずにいたが、8度目の挑戦となった
04年安田記念で初G1制覇を成し遂げた時は感無量だった。
また、のちのG1馬ではなく、G1馬の参戦もかつては見られ、
オークス馬の
チョウカイキャロル(95年)や
エリモエクセル(99年)が1番人気に応えて牡馬相手に勝利していたことも懐かしい。
90~11年の
中京記念では、4歳馬の出走頭数が97頭でもっとも多く、平均すると1年あたりで4~5頭だった。ところが今回、登録馬は28頭にも上ったが、4歳馬は
レッドデイヴィスのみ。4歳馬の登録が少ないのは、開催時期が3月から7月に移行したことにより、6月のクラス編成で4歳馬の収得賞金が半減されてしまい、
賞金的に4歳馬が出走しづらいことも一因と思われる。
「4歳馬の成り上がり」が以前よりも見られにくくなりそうな
中京記念の現状を考えると、懐旧の情にかられるのだが、愚痴っぽくなるのは年を取ったせいなのでしょうか(笑)。
そんな愚痴はさておき、
新装・中京記念は上位人気5頭が単勝5.3~7.0倍にひしめく大混戦となったが、勝利したのは4歳馬の
レッドデイヴィスではなく、5歳馬の
フラガラッハ。前記したオッズの中に収まった5番人気馬である。
前走の
米子Sは出遅れながらも
自己ベストの上がり32秒6で大外一気。圧巻のレースぶりで勝利していたが、今回、5番人気にとどまったのは、前走の勝利が
11番人気だったことや、4歳以降は
⑪③⑯⑮①⑩③⑩①着で馬券圏内かふた桁着順かという
浮沈の激しい成績、
追い込み一手の脚質なども関係した結果だろう。
個人的な印象も
「一発の魅力は秘めているけどアテにしづらい」というもので、今回は
“来ない順番”と思って消してしまったが、前走のパフォーマンスをもっと高く評価しておくべきだったと、レース後に思わされた。
というのも、
フラガラッハは10年10月~
米子S以前で、芝1400~1600mで③着以内が5回あるが、その5戦の1000m通過は
56秒5~59秒0で、
米子Sは
60秒5だったから。
フラガラッハは500万の芝1600mで勝った時が1000m通過
60秒7だったが、レース上がりは35秒5。対して、
米子Sのレース上がりは33秒6で、同じスローペースでも下級条件とOPでは意味合いが違ってくる。そのOPのレースで、
フラガラッハは前記した通り、
自己ベストの上がり32秒6で突き抜けたのだから、
ハイペース向きの差し馬という殻を破り捨てたとも言える。
ちなみに、
中京記念の1000m通過は
59秒1。
レッツゴーキリシマと
タマモナイスプレイが飛ばした展開で、3番手以下は離れて追走していたが、良馬場とはいえ直前まで稍重だった馬場状態を加味すれば、平均よりやや速いくらいか。どちらかと言えば、
フラガラッハが得意としているペースだから、ひと皮剥けた感のあるいまならあの直線一気も納得の結果である。
米子Sも
中京記念も開催後半の外差し馬場だったので、開催前半で内を通った馬が有利な馬場だとどうか、といった感じで、
フラガラッハに対してまだ全幅の信頼を置けない自分がいるが、父母父ノーザンテーストから成長力を注入されたのか、
米子S→
中京記念の連勝は、
本格化のスイッチが入った合図のような気がしなくもない。
歯切れが悪いんですけど(笑)。
いずれにしても、父
デュランダルのように、
フラガラッハはG1の舞台でも直線一気で好走できる馬にまで成長するのかどうか。
「5歳馬の成り上がり」に注目していくのも悪くなさそう……というか楽しそう(笑)。
新装・中京記念の最初の勝ち馬が
フラガラッハで良かったと思える日が訪れることを期待してみたい。
あと、
米子Sと
中京記念で
フラガラッハの手綱を取った
高倉騎手。先週に
JRA通算100勝を達成し、今週は
重賞初制覇と記録尽くめだが、この人馬は相性が良さそうなので、大舞台でもこのコンビの勇姿を見たいですね。