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小倉の鬼はきっといまエクスペディションに憑依している!?
文/編集部(W)、写真/森鷹史


小倉記念を振り返ると、ナイスネイチャ(91年)やイクノディクタス(92年)といった懐かしい個性派も勝ち馬に名を連ねている。この頃の小倉記念は2分より遅い決着が当たり前で、2分を切る決着は見られなかった。

だから、99年にアンブラスモアが稍重の馬場で1分58秒5で逃げ切った時はかなりビックリした記憶がある。ハナを切れないとふた桁着順に敗れることもあったアンブラスモアだが、ダンチヒ系らしく、ハイペースでも気分良く逃げられれば簡単には止まらないという、好きな1頭だった。懐かしい。

その後、00~03年は1分59秒7~2分0秒7で決着していたが、04年以降から高速決着が続出することに。

勝ち馬 タイム
04年 メイショウカイドウ 1分58秒5
05年 メイショウカイドウ 1分58秒0
06年 スウィフトカレント 1分57秒8
07年 サンレイジャスパー 1分58秒7
08年 ドリームジャーニー 1分57秒9
09年 ダンスアジョイ 1分58秒3
10年 ニホンピロレガーロ 1分57秒9
11年 イタリアンレッド 1分57秒3

この8年の中に99年のアンブラスモアの勝ち時計が入ると、04年と並んで遅いほうから2番目。それどころか、先週(7月29日)の500万(国東特別)1分57秒2のレコードが飛び出してしまうのだから、アンブラスモアがもたらしてくれた衝撃がどんどん薄れてしまう。まあ、10年も経過すれば、競馬の中身が変化するのもやむを得ないのでしょうね。

小倉記念に関する個人的な悲喜こもごもはほどほどにして、今年の小倉記念も例に漏れず、1分57秒3という高速決着で、昨年にイタリアンレッドが樹立したレコード(当時)と同タイムだった。

昨年は18頭立てのフルゲートで、1000m通過が57秒1と速かったが、今年は12頭立てで1000m通過が59秒0と、ミキノバンジョーが引っ張った前半は淡々としていた。そのぶん、今年は後半が速く流れて、ラップを見ると11.8-11.6-11.6-11.7-11.6と11秒台が刻まれている。

その流れの中、勝負所で手応え良く進出して、直線でも力強い伸び脚で抜け出したのは1&2番人気のディープインパクト産駒(トーセンラーダノンバラード)ではなく、3番人気のエクスペディションだった。

これまで夏の小倉では3戦3勝と負けなしだったが、OP入りしてから1~3番人気に推されながらも④⑤⑩⑧着と芳しくなかったエクスペディション。期待に応えられないレースが続きながらも、今回も3番人気と支持を集めたのはここで巻き返しを期待するファンが多かったということだろう。

エクスペディションに対しては、変わり身があってもおかしくないけど、確信はできないというのが自分の心境だったが、結果は鮮やかな一変。直線でエンジンを吹かして一気に抜け出し、最後は流し気味で2馬身半差だから、ここまでの完勝劇は、正直、イメージできなかった。

昨年の勝ち馬イタリアンレッド夏の小倉で5戦5勝と圧倒的な強さを誇っていたが、エクスペディション夏の小倉で4勝4勝となって。きっといるんですねえ、小倉の鬼というのは。そして夏が好きとみた。たぶん、人知れずメイショウカイドウイタリアンレッドエクスペディションという順で憑依してますよ(笑)。

それにしても、イタリアンレッドエクスペディションも管理しているのは石坂調教師で、イタリアンレッドの夏の小倉5勝、エクスペディションの夏の小倉4勝中3勝は浜中騎手なので、この二人のタッグもすごい。

今年の小倉記念は、重賞2勝目になかなか手が届かないトーセンラーダノンバラードのどちらかが、いよいよ待望の重賞2勝目を挙げる時が来たかと思ったが、トーセンラーきさらぎ賞を制して以降は重賞で⑦⑪②③④⑩⑪③②②着ダノンバラードラジオNIKKEI杯2歳Sを制して以降は重賞で⑨③③③②③④④④着となり、次走以降に持ち越しに。

現4歳世代のディープインパクト産駒は中央重賞で10勝しているが、中央重賞で2勝している馬はまだいないので、トーセンラーダノンバラードは早くその壁を打ち破ってほしいものである。

何はともあれ、時計面での衝撃はもはやないに等しいものだったが、エクスペディションの一変ぶりが非常に衝撃的な小倉記念だった。これはこれで思い出に残るレースとなりそうだ。