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実力で牡馬をねじ伏せた、フミノイマージンの今後に注目したい
文/編集部(T)、写真/川井博

フミノイマージンが先頭でゴールを駆け抜けた瞬間、「ああ、牝馬か……」とまず思った。

“夏は牝馬”とは、夏競馬を語る上で欠かせないキーワード。しかし、なぜか札幌記念に関しては、この言葉を聞く機会があまりないような気がする。

その理由としては、近年は牡馬が4連勝中G2としては高めの賞金(今年は1着賞金6500万円)、そして秋G1を見すえるトップホースが使ってくることで、『強い馬が多数出てくるレースなので、穴馬が勝ち切れるレースではないのでは……?』というイメージがなんとなくあるからでは、と思う。

となると、裏を返せば、実力がなければこのレースを勝つことはできない、ということになるのではないだろうか。

しかし、今回レースを制したフミノイマージン単勝12.4倍の4番人気で、上位人気馬とは言いがたいオッズだった。

人気が低い、イコール実力が劣ると思われていたということ。なので、人気薄が好走したときは、その理由を探るために『なぜ上位人気馬が負けたのか』という分析がされがちになる。

しかし、1番人気②着のダークシャドウは、スムーズに好位につけて4コーナーで先頭に立ち、あとは押し切るだけ、というレースぶり。今回が4ヵ月半ぶりの出走ではあったが、馬体重は2走前の京都記念(②着)に比べて8kg減(508kg)で、仕上がりも悪くなさそうに見えた。

一方、フミノイマージンのレースぶりを見ると、道中は後方に控え、3コーナー手前では後ろから2頭目の位置取り。そこから外に持ち出すと、3~4コーナーで大外を回して一気に差を詰め、直線で前を行くダークシャドウをきっちり半馬身交わしてゴールした。

ラップを見ると、前半1000m通過が59秒5後半1000mは59秒2だった。ペースの有利不利はなく、イーブンだったと考えて良さそうだ。

ダークシャドウにとって不利らしい不利はなかったといえるし、フミノイマージンダークシャドウだけでなく、天皇賞・春勝ち馬で、今回は2番人気に推されたヒルノダムールも③着に下している。また、フミノイマージンにとって大きく有利に働いたと思われる条件もあまり見当たらない。

冒頭で「牝馬か……」と感じたと書いたが、こう考えていくと、夏に強い牝馬だから勝った、とは言いがたい気がしてきた。だとしたら、残る理由はひとつ。『実はフミノイマージンは強かった』のだ。

そういえる根拠は、走破タイムにもある。勝ち時計の1分58秒7は、札幌記念としては08年タスカータソルテの1分58秒6に次ぐタイム。また、フミノイマージンの上がりはメンバー最速の34秒4だった。時計的にも申し分ない結果といえる。

一方、フミノイマージン自身の成績を振り返ると、近2走はヴィクトリアマイルで⑮着、クイーンSで⑧着と、芝1600~1800mの重賞で崩れていたが、昨年は芝2000mの重賞で2勝を挙げており、距離延長は望むところだった。

フミノイマージンにとって、秋はエリザベス女王杯が最大目標となるだろうか。もしかしたら天皇賞・秋もあるかもしれないが、いずれにしても、芝2000m以上のレースとなる。となると、芝2000mのここで牡馬を撃破して実力を証明したことは、今後に大きな展望が開けてきたといえる。

ちなみに、G2となって以降の札幌記念を制した牝馬は、エアグルーヴ(2勝)、テイエムオーシャンファインモーションヘヴンリーロマンスフサイチパンドラ。いずれも過去にG1を勝っているか、その後にG1を勝っている。

また、近2年の勝ち馬(10年アーネストリー、11年トーセンジョーダン)は、いずれもこのレースを制した後にG1を制している。

その傾向に乗って、フミノイマージンが今後G1の頂に立つことができるか。フミノイマージンは今年で6歳なので、残されたチャンスは多くないかもしれないが、決して可能性は低くないような気がするが、どうだろうか?