期待された中で結果を残したのだから、どちらも素晴らしい
文/編集部(W)、写真/川井博
今シーズンからイングランドプレミアリーグの
マンチェスター・ユナイテッドに移籍した
香川真司選手が、ホーム開幕戦に先発で出場し、なおかつ
公式戦初ゴールを決めて勝利に貢献する活躍を見せた。
注目と期待を集める中でしっかりと結果を残したこともすごいが、各国を代表する選手が集まるこの
世界有数のビッグクラブで、しかもそのホーム開幕戦で中心選手の
ルーニーを控えに回す形でスタメンに名を連ねたことがすごい。
なぜ
香川真司選手の話を持ち出したかというと、ダート戦線というのはピラミッド構造だと思っていて、そこの上位クラスに一気に食い込んだ
ローマンレジェンドと状況がよく似ているなと思ったから。
ダート戦線の上位クラスは、新星の台頭を易々と許すほど層は薄くもなく、弱くもなく甘くもない。それは
マンチェスター・ユナイテッドというチームも同じだ。
ダート戦線で言えば、その上位クラスの中でも、さらに頂に近い位置に陣取っているのが
スマートファルコン、
トランセンド、
フリオーソ、
ゴルトブリッツなどで、今回出走していた
エスポワールシチーである。個人的には
“横綱クラス”と認識している。
そのうち、今年の
帝王賞で
エスポワールシチーを下して圧勝した
ゴルトブリッツが、24日(金)、腸捻転のため放牧先のノーザンファームしがらきで
急死したという悲しいニュースが飛び込んできた。
帝王賞でG1初制覇を飾り、今後にさらなる活躍が期待されていた矢先の出来事で本当に残念でならないが、
ゴルトブリッツと
ローマンレジェンドは同じスペシャルウィーク産駒ということで、
ローマンレジェンドには
ゴルトブリッツのぶんまで頑張ってほしいと思う。
話を戻すと、今回、
ローマンレジェンドは単勝1.5倍という断然1番人気で、
エスポワールシチーは3.8倍の2番人気と、単勝オッズでは大きく水をあける形となった。これは
エスポワールシチーが
斤量59kgを背負っていたことも少なからず関係していたと思うが、
ローマンレジェンドに対する競馬ファンの期待度の高さの表れでもあるだろう。
レースは
エスポワールシチーが好位で流れに乗り、
ローマンレジェンドがそれをマークするように中団より少し前目につけ、形としては人気と逆、
“横綱クラス”の
エスポワールシチーが
ローマンレジェンドの挑戦を受けて立つように見えた。3コーナー過ぎで
ローマンレジェンドが仕掛けて
エスポワールシチーに並びかけ、直線では火花を散らして2頭が激しく競り合う。
結果は外の
ローマンレジェンドがクビ差先着して5連勝&重賞初制覇を飾ったが、
ローマンレジェンドより3kg重い
59kgを背負って抜かせまいとした
エスポワールシチーも見事。走破時計
1分42秒2は
エルムSが重賞に昇格して以降の
最速タイムでもあったから、
“横綱クラス”の意地は見せた格好だろう。
ローマンレジェンドは圧倒的支持を集めていたものの、少頭数に加え、
「エスポワールシチーを負かせば……」といった形で競馬がしやすかったように見えたが、それでも、
エスポワールシチーを下して初挑戦で重賞制覇を成し遂げ、ダート界の新星誕生を期待された中でしっかりと結果を残したのだから、
香川真司選手と同様に素晴らしい。
半姉
ミラクルレジェンドはダート重賞で2勝していて、今年の
帝王賞でも上位クラスの牡馬を相手に⑤着と健闘していたが、馬体は430kg前後でどちらかと言えば小柄の部類。対して、
ローマンレジェンドは500kg前後で馬格のあるタイプだ。
サンデー系×デピュティミニスター系という配合で、500kgを超える大型馬と言えば
カネヒキリ。ダートG1で7勝を挙げた、言わずと知れた
ダート界の名横綱。父はミスプロ系だが、母父デピュティミニスター系の馬には2年連続で
北米年度代表馬に輝いた
カーリンもいる。
このタイプは強くなるととことん強いこと。ダート界の新星となった
ローマンレジェンドはその血統背景からも前途有望と思えるが、この後、
どのクラスの領域にまで到達するのか、そこまで目線を向けたくなる。
マンチェスター・ユナイテッドで新しいキャリアをスタートさせた
香川真司選手も、
エルムSで重賞初制覇を果たした
ローマンレジェンドも、伝説の本編はまだ先にあるはず。その経過を眺めることができるのは、後に振り返った時、実はものすごく貴重な経験だったと思える日が来るかもしれない。