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完璧な勝ちっぷりをみせたパドトロワは、スプリンターズSに向けて視界良好!?
文/編集部(T)、写真/川井博

レース中継を見ていて、馬群が3コーナーに達したとき、「あれ? 大丈夫か?」と感じた。パドトロワが先頭に立っていたからだ。

今回、自分はこのレースの速報ニュースを作る当番だったので、テレビ観戦していた。

ご存知のように、レース中継では上画面で馬群全体、下は実況に合わせたアップでレースを追う。自分の場合は速報ニュースを作る際に、各馬の位置取りを馬番でメモしながらレースを見ている。そのために、今回はゼッケン番号が見られる下画面に集中していた。

スタート直後にとったメモを見ると、先頭に「14」「11」、少し下にパドトロワ「2」という番号が書いてある。好スタートを切ったビウイッチアス(馬番14)、押してハナを奪いにいったテイエムオオタカ(馬番11)が行き切っていると思ったのだ。

実際は、下画面でもパドトロワの馬体が見切れる寸前に先頭に立ちつつあったことが確認できたわけだが、あくまでそれはVTRを見ての話。生中継を見ているときは後続の馬番をチェックしていたので、そうは思っていなかった。

そこで冒頭の話に戻るが、「あれ?」と思ったのは理由がある。過去6回のキーンランドCで、3コーナーで先頭に立っていた馬のうち、馬券圏内に入ったのは08年②着のビービーガルダンのみ。逃げ切ることが非常に難しいレースだったからだ。

しかし、自分の余計な心配をよそに、パドトロワの勢いは直線に入っても衰えない。直線で並びかけてきたダッシャーゴーゴーの追撃をハナ差凌ぎ、前走のアイビスサマーダッシュに続く連勝となった。

前半33秒5は、キーンランドCとしては2位タイとなる速めのペース。これで上がりも34秒1でまとめて逃げ切ったのだから、まさに“テン良し、中良し、終い良し”だ。

勝ち時計の1分7秒6は、08年キーンランドCタニノマティーニが記録した1分7秒9を0秒3も更新する驚異的なタイムで、掛け値なしに強い勝ちっぷりだったといえる。

パドトロワは昨年の香港遠征で⑭着に敗れて以降、今年に入って3戦続けて馬券圏外に敗れており、やや調子を崩していた感もあった。しかしこれで重賞連勝を飾り、完全に本調子を取り戻した感もある。

夏に関する競馬の格言として、“夏は調子”というものがあるが、このレースでも前走で馬券圏内に入っていた7頭のうち5頭が掲示板を独占する結果となった。

ちなみに、この日札幌で開催された12レースで、新馬戦を除く11レースで馬券圏内に入った33頭のうち、26頭が前走で⑤着以内(新潟は33頭中23頭、小倉は33頭中21頭)に入っている。

穴党としては非常に厳しい傾向だが(笑)、北海道でも暑さはしばらく続きそうなので、最終週となる来週も、馬券を買う際は前走で好走している馬を重要視した方が良さそうだ。

また、パドトロワはこれでサマースプリントシリーズで2勝を挙げ、函館スプリントS④着で得た3ポイントを加算して、シリーズ優勝を決めた。牡馬の優勝は創設以来初となる。

個人的には、このレースで早々に優勝を決めたことは、目標となるスプリンターズSに向けて好材料なのではないかと思っている。

というのも、過去6回のキーンランドCで③着以内に入った馬のうち、同年のスプリンターズSで③着以内に入った馬は5頭いるが、そのすべてがこのレースからスプリンターズSへ直行している(直行で④着以下に敗れた馬は5頭で、複勝率は50%)。

逆に、シリーズ最終戦となるセントウルSを挟んでスプリンターズSに向かった馬は3頭いるが、すべて掲示板外に敗れている。

また、昨年までのサマースプリントシリーズは5レース、今年はCBC賞を加えて6レースになった違いはあるが、これまでのシリーズ優勝馬は、すべてシリーズで3戦以内の出走にとどまっている

このシリーズに出走する馬の多くはスプリンターズSを大目標としているが、夏場に4戦をこなして本番というのは、さすがに厳しいということなのだろう。パドトロワがもし直行となれば、スプリンターズSに向けて好材料といえそうだ。

ロードカナロアカレンチャンなど、このレースに出走していない強豪はまだまだいるが、いろいろな要素を踏まえ、スプリンターズSに向けてパドトロワに追い風が吹いている印象を受けるのだが……どうだろうか?