大器コディーノによってクラシックへと意識を向けさせられた
文/編集部(W)、写真/川井博
札幌2歳Sの
『メインレースの考え方』では、過去10年を振り返り、
[1]芝OPで①着あり、もしくは芝1800mで1分51秒7以内で①着あり(該当馬は10年すべてで馬券圏内、03年以外で連対)、
[2]芝で複勝率100%(該当馬は10年すべてで連対、07年以外で2頭以上セットで馬券圏内)、
[3]関西馬(該当馬は08年以外の9年で連対&2頭以上セットで馬券圏内)という3つの傾向を挙げた。
その上で、
「芝OPか、今回と同距離の芝1800mでそれなりに速い時計で勝利実績があり、底を見せていない(馬券圏外に崩れたことのない)関西馬が軸馬として注目」としたが、上記の傾向にすべて該当していたのが
ラウンドワールドだった。
結果は後方追走からメンバー中最速の上がり34秒3で鋭伸し、08年
ロジユニヴァースの
レースレコード(1分49秒1)より0秒3速い
1分48秒8で走破したのだから、②着とはいえ、レース内容としては文句のつけようがない。
ナムラマースの
コースレコード(1分48秒4)に0秒1差まで迫る
1分48秒5で駆け抜けた
コディーノが今回は強かった、ということ。勝ち馬を褒めるべきなのだろう。
コディーノは札幌芝1800mで新馬勝ちしていたが、スローペースで勝ち時計が1分52秒9と遅く、関東馬ということもあって、前記した傾向には
ひとつのみの該当だった。
キャリアの浅い馬が揃う2歳重賞の難しいところは、過去データのフィルターを通すと、
軸として信頼性の高い馬はそれなりに抽出することができても、
器の大きさまでは量り切れないことだろう。今回の
コディーノには
痛いところを突かれた思いである。
コディーノは
新馬戦で出遅れながらも上がり33秒7を計時し、ノーステッキのまま2馬身半突き抜けた。札幌芝1800mの2歳戦でその上がりは
過去最速。昨年の
札幌2歳Sを制し、その後に
スプリングSも勝ってクラシックに有力馬として駒を進めた
グランデッツァでも、昨夏のデビュー戦(札幌芝1800m、②着)での上がりは34秒0だったから、その瞬発力がいかに非凡かが分かる。
その上がりに関するデータは
新馬戦のレース後に調べて分かったことだが、その勝ちっぷりにはレースを観ていた時にも
「おお、すげえ」と思わず感嘆の声が漏れたほど。
コスモス賞勝ち馬の
ラウンドワールド(1番人気)、その
ラウンドワールドを
新馬戦で下している
ロジユニヴァースの全弟
トーセンパワフル(2番人気)。この人気2頭に続く3番人気に推され、なおかつ、三つ巴の様相となるまでの支持を集めたのは、
コディーノの
新馬戦で同じように
衝撃を受けた人も多かったということでしょうね。
出遅れた
新馬戦とは打って変わり、五分にスタートを切って好位のインにつけた
コディーノ。4コーナーで外目に持ち出し、直線で
横山典弘騎手のムチが入るとサッと加速して
ラウンドワールドを寄せつけず。2頭の着差(1馬身3/4)は位置取りの差と言えなくもないが、直線での脚色から、その差はどこまでいっても縮まらないようにも見えた。
ゴール通過後、
横山典弘騎手が左手を突き上げたパフォーマンスからも、
今回の勝利に対する高い評価、
今後(クラシック)への手応えなどが読み取れた気がした。
過去10年の
札幌2歳Sでメンバー中2位以内の上がりを計時して連対した馬では、
ロジユニヴァース(
09年ダービー)、
ゴールドシップ(
12年皐月賞)、
アドマイヤムーン(
07年ドバイデューティーフリー、
07年宝塚記念、
07年ジャパンC)、
アヴェンチュラ(
11年秋華賞)がG1馬となっている。
過去データのフィルターでは、器の大きさまでは量り切れないとは言いつつも、ダービー馬
ロジユニヴァースの
レースレコードを上回る時計で走破した点でもそうだろうが、上記の条件も満たす
コディーノとラウンドワールドは、前途有望であることは確かではないだろうか。
コディーノの馬名の由来は
「イタリア語で弁髪。元イタリア代表のサッカー選手・ロベルト・バッジョの愛称」のようだが、同じ
藤沢和雄厩舎には
ペルーサがいて、こちらは
「ディエゴ・マラドーナの愛称」。ちなみに、
フェノーメノは
「ポルトガル語で怪物。元ブラジル代表のサッカー選手・ロナウドの愛称」らしい。余談です(笑)。
厩舎の先輩
ペルーサはデビューから無傷の4連勝を飾ったが
ダービーで⑥着に敗退(
皐月賞、
菊花賞には出走せず)。国内G1・21勝を誇る名門厩舎だが、
藤沢和雄厩舎は
ダービーで②着が2回(02年
シンボリクリスエス、03年
ゼンノロブロイ)あるものの、
牡馬クラシックでは[0.2.1.23]と未勝利となっている。
藤沢和雄厩舎所属馬として初の札幌重賞制覇を果たした
コディーノが、今度は牡馬クラシックでも新たな歴史を刻むのか。本番はまだまだ先と悠長に構えていたが、
コディーノによってクラシックへと意識を向けさせられた、そんな夏競馬の最終週だった。