驚異の大レコードを生んだ、横山典騎手渾身のイン突き
文/編集部(T)、写真/米山邦雄
1分30秒7。
これまでの芝1600mにおける
日本レコードは、今年の
安田記念で
ストロングリターンが記録した1分31秒3。今回の
京成杯オータムHを制した
レオアクティブは、これまで日本のサラブレッドが記録したことのなかった、
1分30秒台の領域についに到達した。
個人的な話をさせていただくと、自分が競馬を始めた頃に見たのが、
サクラチトセオーが
1分32秒1で勝った94年のこのレース(当時は
京王杯オータムH)だった。
このタイムは当時の
日本レコード。その人が競馬を始めた頃に強かった馬に対して、今でも強烈なイメージが残る方は多いだろう(ですので、自分の心の最強馬は今でも
ナリタブライアンです)。同じように、自分の中で
サクラチトセオーが叩き出したタイムのイメージは今でも残っていて、芝のマイルで1分32秒台が出ると、今でも
「速いな」と思ってしまう(実際今でも速いのだが)。
そんな理由もあって、1分30秒台なんて、
ゲームの中だけの話だと思っていた。
大レコードの予感はあった。このレースのひとつ前に行われた
セプテンバーS(芝1200m)の勝ちタイムは、
トロットスターが01年
スプリンターズSで記録した1分7秒0を0秒1更新し、中山芝1200mのレコードとなる
1分6秒9だった。
セプテンバーSが終わった後に、
「準OPでG1のレコードを更新するのだから、重賞ならどれほどのレコードとなるのか」と思った方も多いのではないだろうか。そういった単純な図式に当てはまらない場合も多いが、今回はその予感が的中したようだ。
今回のタイムを生んだ要因として、時計の出やすい馬場状態、ハナに立った
ゼロスが生んだハイペースもあるだろう。さらに、
横山典騎手の好騎乗も見逃せない。いつものように
レオアクティブを中団やや後方に導くと、道中はずっと内でジッとして、直線に入って
最内を突いて抜け出してきた。
馬番3番、
開幕週ということを考慮し、さらに
内が詰まるリスクをものともしない思い切りは、さすがといったところか。最短距離となる内の経済コースを通ったことも、好タイムを出す一助になっただろう。
このレースを好タイムで勝った馬といえば、前述の
サクラチトセオーは後に
天皇賞・秋を、01年に1分31秒5で勝った
ゼンノエルシドは後に
マイルチャンピオンシップを制している。
横山典騎手自身は、レース後に
「気性の成長を感じた」といった趣旨のコメントをしている。これは想像だが、経済コースを通った理由には、もしかしたら距離に対する懸念もあったかもしれない。春までは芝1400mまでの馬というイメージもあったが、今回は
距離をこなせたことも大きいだろう。
レオアクティブはまだ3歳。今後は短距離~マイル路線で、長い活躍が期待できるはずだ。
ところで、このレースは今年から創設された
サマーマイルシリーズの最終戦に位置づけられている。ところが、勝てばチャンピオンという可能性を残していた
スピリタスが③着、
エーシンリターンズが⑦着に敗れたので、残念ながらシリーズチャンピオンは
該当馬なしとなってしまった。
このシリーズは
中京記念、
関屋記念とこのレースが対象となっているが、3レースだけが対象というのはいかにも寂しい。そういうこともあってか、チャンピオンとなる可能性があった対象レースの勝ち馬(
レオアクティブ以外では、
中京記念の
フラガラッハ、
関屋記念の
ドナウブルー)は、すべて対象レースに1回しか出走しないという結果になってしまった。
シリーズチャンピオンとなるためには、
最低でも対象レースに2回以上出走しなければならないルールとなっている。芝のマイル戦が組める競馬場がローカル競馬場に少ない(新潟、中京のみ)ので、難しい面もあるとは思うが、あと1レースくらい対象レースが増えると、シリーズに盛り上がりも出るのではないだろうか。
もしマイルが難しいなら、たとえば、
札幌芝1500mあたりで重賞を組んでも面白いのではないかと思うが、どうだろうか?