強力布陣を撃破したことは地力と前走の経験があってこそ!?
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
サマースプリントシリーズの最終戦となる
セントウルSだが、今年は
アイビスSDと
キーンランドCで勝利したパドトロワが早々と優勝を決めてしまった。
北九州記念勝ちの
スギノエンデバー、
CBC賞勝ちの
マジンプロスパーは
セントウルS優勝で12ポイントを加算しても22ポイント止まりで、23ポイントのパドトロワには届かない計算だった(結果的には
スギノエンデバーは⑧着、
マジンプロスパーは⑪着)。
例年であれば、
サマースプリントシリーズの優勝争いの行方も気になる
セントウルSなのだが、今年はれっきとした(?)、
スプリンターズSの前哨戦として行われることに。
出走馬の顔ぶれを見てもその様相が色濃く、今春の
高松宮記念で①&②&③&⑤着だった
カレンチャン、
サンカルロ、
ロードカナロア、
マジンプロスパーが集結。
サンカルロは7番人気にとどまったものの、
ロードカナロア、
マジンプロスパー、
カレンチャンは1、2、3番人気に推され、単勝オッズで10倍を切って
三つ巴の格好となっていた。
高松宮記念の結果から言えば、上記した面々は芝短距離路線のトップホースたちで、かなりの
強力布陣と言える。
対して、
セントウルSは
『メインレースの考え方』でも指摘されていたように、
「休み明け」が良くない。
『メインレースの考え方』では、阪神芝1200mで行われた過去10年(01~05・07~11年)をデータ対象としていたが、単純に中京芝1200mで行われた06年を含めた02~11年の過去10年で見ると、
休み明けの馬は[0.5.5.27]で未勝利だった。
強力布陣と称した
高松宮記念の上位馬たちはいずれも
休み明け。なので今年は、
「休み明けで出走してきた実績上位馬よりも夏に稼動していた馬のほうが強い」という
セントウルSのセオリーが、果たしてこの
強力布陣にも通用するのかどうかに注目していた。
結果はというと、
北九州記念③着から中2週で臨んだ休み明けではない
エピセアロームが優勝。好位から抜け出した
ロードカナロアをゴール寸前で捕えて差し切り、
高松宮記念上位馬を下して重賞2勝目を挙げた。
「この強力布陣だと、さすがにセオリーも通用しないか」と思う自分もいたが、22kg増の影響か最後のひと押しが利かず④着だったスプリント女王
カレンチャン、8kg増のせいか逃げ失速で⑪着に沈んだ
マジンプロスパーを見ていると、
“使われている強味”というのはセントウルSでは大きいのだなと実感させられた。
ちなみに、
マジンプロスパーは芝で重賞2勝を含めて計5勝を挙げているが、5戦中4戦が馬体減で、残り1戦が増減なし。芝で馬体増で出走した時は今回を含めて
④⑧⑪着なので、次走は
スプリンターズSでしょうから、絞れてくるかがポイントになるのではないでしょうか。
話を戻すと、
エピセアロームは前走の
北九州記念で前半3F32秒2というハイペースの中、スタートで少し外に寄れたこともあって後方からの競馬となったが、大外を回って③着まで鋭伸していた。軽量52kgだったとはいえ、
小倉2歳S(①着)以来、約1年ぶりの芝1200m戦だったとすれば上々の内容だろう。
その猛ペースの芝1200mに対応したあたりが、
エピセアロームの
スプリント資質の高さの証明とも言えそうだが、いずれにしても、過去10年の
セントウルSの中でも02年(33秒1)の次に速い前半3F33秒2というペースも、激流を経験済みの
エピセアロームにとってはちょうど良いペースだったのかもしれない。スッとゲートを出て、好位の内目で行きっぷり良く追走している
エピセアロームを見て、そう感じた。
結果的には、
マジンプロスパー、
カレンチャン、
ロードカナロアと上位人気馬が前でやりあう形が向いた部分もあるだろうし、人気や実績からマークされにくいはずの立場が優位に働いた部分もあるだろうが、
強力布陣と称した
高松宮記念の上位馬を軒並み下すことは
地力がなければできない芸当だと思うし、今回の勝利は
前走の北九州記念の経験があってこその勝利だとも思う。
エピセアロームはG1だと
⑧⑮⑯着と掲示板外に敗れているが、いずれも芝1600m以上で走ったもの。
[2.0.1.0]と底を見せていない芝1200mなら違った結果も望めそうだが、そうはいってもまだ3歳だし、本番の
スプリンターズSでは、ひと叩きされた
ロードカナロア、
カレンチャンなども当然黙ってはいないだろう。
ここはひとまず、スプリント戦線に楽しみな
ヤングなでしこが出てきたことを喜ぶとしたい。
それにしても、牝馬は過去10年で7勝だったが、今年も牝馬が勝ち、③着にも
アンシェルブルー(12番人気)という人気薄の牝馬が突っ込んできた。②着は1番人気の
ロードカナロア。
「牝馬は高評価すべし」というのも、
「1~3番人気のどれかは馬券に絡む」というのも
セントウルSのセオリーであり、その通りの結果だったのだが、的中には結びつかず。愚直に信じる心も馬券には重要なファクターなのでしょう。まずは己のメンタルを鍛え直さなければと、痛感させられた次第です(笑)。