フェノーメノは底なし血統
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
上位入線を果たした馬の
4角での位置取りを記すと、優勝した
フェノーメノが4角
1番手で、②着の
スカイディグニティは
7番手、③着の
ダノンジェラートは
5番手、④着の
エタンダールは
7番手、⑤着の
ラニカイツヨシは
12番手。以下、⑥~⑧着の3頭も
5~16番手で、
フェノーメノ以外に4角で4番手以内にいた馬は⑨着以下に敗れてしまった。
差し馬が台頭しやすい流れになったわけだが、それを4角先頭から早めにスパートして押し切ったのだから、
フェノーメノはこれぞまさしく
“横綱相撲”という感じだった。最後は1馬身の差を付けて、
危なげない寄り切りといったところ。
過去2度の中山戦では
掲示板外に敗れていただけに、
フェノーメノ&
蛯名騎手がどんなレースを見せるのか、注目していた。6枠12番という枠順だったので、中団に付けて外から脚を伸ばす作戦に出ると思っていたが、中盤でポジションを押し上げ3角では早くも
先頭を射程圏に入れるレースぶりだった。
特にペースが遅かったわけでもないし(前半の1000m通過は60秒2)、前述したように上位に差し馬が多く入ったのだから、
フェノーメノの動き出しは
早かったと言えるだろう。それでも勝負所から動いていったのは、ここでは
実力差があることを感じ取っていたからではないか。G2戦を力でねじ伏せられるくらいじゃないと、G1では勝ち負けできない。そんな思いが感じられた。
フェノーメノは
ステイゴールド産駒で、その点は
オルフェーヴルと同じ。ただ、血統構成は
オルフェーヴルや
ドリームジャーニーではなく、
ナカヤマフェスタの方に似ている。
ナカヤマフェスタは母ディアウィンクが
タイトスポット(リボー系)×
デインヒル(ダンチヒ系)という配合で、同馬は
ヒズマジェスティ(リボー直仔)の4×4というクロスを持っている。
一方、
フェノーメノは母ディラローシェが
デインヒルの娘で、同馬は
リボーの4×4というクロスを持っている。どちらも
リボー系のクロスと
デインヒルの血を持つ
ステイゴールド産駒というわけだ。
リボー系や
ダンチヒ系を母系に持つ馬が
G1で大活躍していることは、いまさら言うまでもないだろうが、その両方を持ち、さらには
リボー系のクロスまで持っている馬は、なかなか珍しいはずだ。
かなりパンチの強い血脈を重ね合わされてる印象で、
凱旋門賞で大接戦を演じた
ナカヤマフェスタの例を挙げるまでもなく、
より過酷な条件で真価を発揮する配合馬とも言えるだろう。
フェノーメノはまだG1馬ではないけれど、血統面から考えれば、奥は相当に深いはずだ。
底なし血統であることは、ぜひとも覚えておきたい。
蛯名騎手は今回の勝利で区切りの
JRA重賞100勝となった。これまでに小倉以外のJRA9場で重賞勝利を挙げていて、中でも
中山での重賞勝利が一番多い(34勝)。
馬番12番では重賞9勝目で、これも馬番2番、4番、11番に並んで1位タイだ。
中山の重賞で馬番12番というのは、
蛯名騎手にとってこれ以上ない条件だったのかも?
面白いことに、JRA重賞での
蛯名騎手は、
馬番12番での成績がとても良い。騎乗機会が30回以上ある馬番1~16番に限ると、勝率が一番高いのが
馬番12番で(勝率15.5%)で、複勝率でも
馬番12番がトップ(複勝率39.7%)。なにより、
馬番12番での回収率は、単複ともに100%を超えている(単勝回収率197%、複勝回収率134%)。
今回の
フェノーメノが
馬番12番ではなく、
13番だったら、どうなっていたのだろう?とも思う。というのも、
馬番13番での重賞では、
蛯名騎手は[1.6.3.45]という成績で、馬番1~16番では
最少の勝利数だったから。まあ、今回の勝ちっぷりを見ると、そんなことは関係なく終わってた可能性も高そうですけどね(笑)。
蛯名騎手はこれで今年のJRA重賞が7勝目で、年間でのJRA重賞7勝というのは04年(7勝)以来の多さとなる。過去に8勝以上をマークしたのは、98年(14勝)、01年(9勝)、03年(9勝)、99年(8勝)。今年はまだ3ヶ月以上が残されているから、
98年に迫る勝利数も期待される。
JRA・G1での蛯名騎手は、
上期(1~7月・7勝、勝率5.2%)よりも
下期(9~12月・11勝、勝率9.2%)の方が成績が良いので、今年の秋の
G1シリーズでも目の離せない活躍が見られるのではないだろうか。