ゴールドシップが芝3000mをこなせる可能性は高い
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
「強い!」以外の感想が思いつかないほど、鮮烈な
ゴールドシップの末脚だった。
正直に言うと、
ゴールドシップの
距離適性に対しては、
懐疑的な目で見ていた。このレースまでは
皐月賞を除くと、3勝はいずれも芝1800m。芝2000mの
ラジオNIKKEI杯2歳Sでは、
アダムスピークに差し届かず②着に敗れている。
ご存じの通り、
ゴールドシップは
ダービーでも差し届かず⑤着に敗れている。内を鮮やかに抜けた
皐月賞が
内田騎手の素晴らしい騎乗ぶりによるものだとしたら、
距離に対する不安は拭えないのではないかと、そう思っていたのだ。
しかしこのレースでは、ハナに立った
フミノポールスターが作り出した前半1000m通過が
60秒7のペースを中団やや後方で折り合い、3角過ぎから大外を通って進出。残り250mあたりで先頭に立つと、連れて進出した②着
ロードアクレイムに2馬身半差をつけた。
「メインレースの考え方」でも書いたが、今回を含めて芝2400mとなった07年以降の
神戸新聞杯は、
ダービー最先着馬が6年すべてで馬券圏内に入ったことになる。③着までを占めたのはいずれも前走が重賞の馬で、
春の実績馬>夏の上がり馬というこのレースの傾向は、今年も継続した。
このレースだけでなく、今年の秋のトライアルの結果を見ると、
紫苑Sの勝ち馬
パララサルー、
ローズSの
ジェンティルドンナ、
セントライト記念の
フェノーメノと、ここまではすべて
春の実績馬が制している。
今年の3歳の上がり馬は、レベルが低いのか。いやいやそんなことはない。今年1月1日~9月17日までに、3歳以上の芝の1000万以上における年齢別成績を見ると、以下のようになる(カッコ内は勝率)。
3歳[31.15.18.117](17.1%)4歳[50.46.38.243](13.3%)5歳~[43.63.68.917](3.9%)3歳馬が古馬勢を圧倒していることが分かる。これが昨年の同時期(11年1月1日~9月30日)だと、以下のようになる。
3歳[21.16.11.107](13.5%)4歳[58.47.52.214](15.6%)5歳~[46.62.62.897](4.3%)昨年は4歳馬の勝率がもっとも高かった。要するに、現4歳勢だけでなく、昨年好成績を収めていた現5歳勢を抑えて、
今年の3歳勢が古馬混合戦で勝ちまくっていることになる。
しかし、このレースでも前走が古馬混合の中央のレースで連対している馬が6頭出走していたが、最高着順は
ユウキソルジャーの④着だった。
今年の3歳勢は総じてレベルが高い。そんな中で
ゴールドシップにこれほどの強さを見せつけられると、もはや
脱帽するしかないだろう。
「距離がどうか?」なんて考えていた自分が恥ずかしくなるほどだ(笑)。
改めて言うまでもないが、
ゴールドシップの血統は
父がステイゴールド、母父がメジロマックイーン。昨年の三冠馬
オルフェーヴル、その全兄で、07年のこのレースを制した
ドリームジャーニーと同じ血統を持つ。芝2400mが苦手なはずはなく、むしろ
得意としている可能性もある。
次走が
菊花賞となると、今度は3000mとなる。では、3000mはこなせるのか。
今回の
ゴールドシップは、
メンバー1位の上がり34秒5を使って差し切っている。ひとつの参考記録として、過去5年の
神戸新聞杯組で、メンバー最速の脚を使った馬の
菊花賞における成績を見ると、以下のようになる。
11年
オルフェーヴル①着
10年
ローズキングダム②着
09年
イコピコ④着
08年
オウケンブルースリ①着
07年
ドリームジャーニー⑤着
いずれも
掲示板を外していない。芝2400mできっちり末脚を発揮するというのは、しっかり折り合いがつかなければできない芸当ということだろう。この点で考えると、
ゴールドシップが
菊花賞で実力を発揮できる可能性は高いといえそうだ。
一方、過去5年の
菊花賞馬のうち、4頭が
神戸新聞杯で③着以内に入った馬だった。その点で、今回②着の
ロードアクレイム、③着の
マウントシャスタも注目しておかなければならない。
特に
宝塚記念⑤着の実績がある
マウントシャスタは、今回の馬体重が
プラス18kgだった。3番人気⑦着に敗れた
ヒストリカルも
プラス22kg。
ゴールドシップがマイナス2kgだったことを考えると、今回上位人気に推された馬の中で、より上積みが見込めるのはこちらかもしれない。
本番の
菊花賞はどんなメンバーが揃うかまだ不透明だが、レベルの高い今年の3歳馬なら、きっといいレースを見せてくれるはず。最後の一冠はどの馬の頭上に輝くのか、ますます楽しみになった。