体内でもデイリー杯2歳Sでもイナズマが駆け巡った!?
文/編集部(W)、写真/森鷹史
昨年の
2歳新馬戦を観ていて、
「ビビビ!」っと来たのは何を隠そう、のちのダービー馬ディープブリランテ。阪神芝外1800mで掛かり気味になりながらも直線で後続を5馬身ちぎり捨てた爆発力には目を見張った。そのことはディープブリランテが勝利した昨年の
東京スポーツ杯2歳Sの
『速攻レースインプレッション』で書いた通り。
「ビビビ!」というのは、その馬が持っている
「スケールの大きさ」に対する反応という感じ。長年に渡って毎週、競馬を観てきたことで養われた感覚的なレーダーである。
今年の
2歳新馬戦を観ていて、
「ビビビ!」っと来たのはコディーノ、マンボネフュー、そして
メイケイペガスター。いずれも血統馬であり、デビュー戦の内容が素晴らしかったので、
「この馬は走りそうだな」と感じた
競馬ファンも多かったのではないだろうか。
コディーノが
札幌2歳Sを制したこともあり、今年もレーダーの探知力にはそれなりに自信を深めていた矢先の
デイリー杯2歳S。開幕週のスローペースで前有利の展開、出遅れて後方追走から大外を回る競馬、道中で折り合いを欠いたこと……キャリア1戦の2歳馬にこれだけの
マイナス要素が重なれば敗戦を喫しても不思議ではない。
直線で伸びを欠いて⑪着に敗れた
メイケイペガスター。この一戦だけで評価を落とすつもりはないが、ここは1番人気という評価に応えるような快走を見せてほしかったというのが正直な気持ち。それが可能な
逸材だと思うからこそ、でもある。そうは言ってもまだキャリア2戦目の若駒でもあるから、次走での巻き返しに期待したい。
一方、勝った
テイエムイナズマについては、
新馬戦が掛かり気味に先行して伸び切れず⑤着という内容で、
「ビビビ!」の
「ビ」すらも来なかったが、2戦目での一変ぶりとレース内容には驚かされた。
大外枠で出遅れてしまい、道中では馬群の外から好位まで一気にポジションを押し上げていき、4コーナーでは押っつけ押っつけ。
「道中で動いた時にけっこう脚を使ったはずで、これは直線で伸びあぐねそう」と思ったが、直線の坂も何のそので、計時した上がりはメンバー中最速の33秒7。どれだけいい脚を長く使っているんだと。
そのレースぶりに対して
「ビビビ!」とまでは行かないまでも、
「ビビ!」と体内に衝撃という名の稲妻が走ったのは確かだった。だが、稲妻が駆け巡ったのは体内だけではなく、のちの活躍馬が目白押しの
デイリー杯2歳Sでも。
テイエムイナズマはその
未勝利戦の時と同じように、出遅れて後方からとなり、道中で抑え切れない感じで前へと進出。好位にとどまった
未勝利戦に対し、今回は一気に先頭まで踊り出る。
後続を従えて4コーナーを通過して直線に向いた
テイエムイナズマは、外にフクれてしまったが、やはり
未勝利戦と同じように直線で二段ロケットを発動してもうひと伸び。内から伸びてきた
小倉2歳Sの②①着馬
クラウンレガーロ、
マイネルエテルネルの追撃を凌ぎ切ってみせた。放馬して、ゴールした後も
イナズマは駆け巡ってしまったようだが(笑)、鞍上の
池添騎手ともども無事だったようで何より。
いずれにしても、レーダーの探知力に自信を持つのは、
テイエムイナズマのような馬を
新馬戦の時点で見出せてから。まだまだ修行が足りません。
テイエムイナズマの血統を見ていて、
ブラックタイド(サンデー系)×Danzig×Majestic Lightという配合なので、漠然とニシノマナムスメのようなイメージを持っていた。ニシノマナムスメは
アグネスタキオン(サンデー系)×Majestic Light×Danzigという配合で、これの母父と母母父をひっくり返すと
テイエムイナズマに近づくというわけだ。
ニシノマナムスメの母はG1・3勝の快速牝馬ニシノフラワーで、ニシノマナムスメもマイル前後で活躍した馬だったから、マイルに替わって2連勝した
テイエムイナズマも現状だとマイルあたりが力を発揮しやすいのだろう。成長して気性面で落ち着きが出れば、距離はこなせても良さそうだが。
ちなみに、
テイエムイナズマという名の馬は2頭いて、ブラックタイド産駒ではないキンググローリアス産駒のほうは、91年生まれで三冠馬ナリタブライアンの同期。
旧・テイエムイナズマは計4勝を挙げる活躍を見せたが、
京都3歳Sでナリタブライアンの②着に好走したものの、OP勝ちは果たせなかった。
新・テイエムイナズマはまだまだ荒削りな感じだが、その中でも重賞制覇を成し遂げた。気性が成長し、折り合いをつけて脚を溜めて運んだら、いったいどんな末脚を繰り出すのか。
イナズマの走りには今後も目が離せそうもない。