コース適性と池添騎手の好騎乗が相まって生まれた勝利
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
文字通り
目の覚めるような末脚、そして
強烈な勝負根性だった。
道中で13頭立ての12番手につけた
メイショウカンパクは、4コーナーを回るところでも
9番手。直線に入ったところで併せ馬の形になった1番人気
フミノイマージンを直線半ばで競り落とすと、
“次はおまえだ”とばかりに内を行く
オウケンブルースリに襲いかかった。
そのまま
メイショウカンパクと
オウケンブルースリの2頭が前で粘る
ギュスターヴクライを交わし、
メイショウカンパクが
オウケンブルースリをクビ差抑えてゴールした。
末脚と
勝負根性の両方を見せつけるレースぶりは、これが
重賞で9戦して勝利がなかった馬とは思えないほどの強さだった。
……と思っていたのだが、レース後の
池添騎手のインタビューを聞いて少し驚いた。
池添騎手のコメントを要約すると、
「集中力が続かないと聞いていたので、気をつけて乗った」とのことだった。
言われてみると、
池添騎手は勝負どころからゴールするまで、ずっと別の馬と
併せ馬の形になるように馬を誘導している。集中力が続かない馬に対して最大限の能力を発揮させるために、位置取りなどを含めてこういう作戦をとったということなのだろう。
ふと思ったのだが、最近は
大外一気というフレーズがこれほどまでに合うレース、特に長距離重賞は珍しくなってきた気がしないだろうか。
それもそのはず。調べてみると、02年以降に開催された芝2200m以上の重賞で、今回と同じ13頭立て以下のレースは75レースあるが、今回と同じ4角9番手以下の馬が勝ったレースは3つしかなく、いずれも04年以前のレースだった(直近は04年
京都新聞杯の
ハーツクライ)。
今回の
メイショウカンパクは、ある意味
8年ぶりの末脚を見せたといえる……かもしれない。しかも
開幕週ということを考えると、その価値はさらに高まるのではないだろうか。
それにしても、今回の
メイショウカンパクは単勝5番人気で、G1馬
オウケンブルースリ(7番人気)よりも人気上位だった。
近4戦が重賞で⑦⑭⑪⑥着なのになぜ?と思いながら戦績を見直してみると、これまで
500万以上で坂のあるコースが[0.0.2.7]。前走の
オールカマーは得意とはいえない
中山で勝ち馬から0秒8差の⑥着に健闘していた。
それがこのレースの前までで[1.1.2.3]の京都芝に戻ったのだから、条件は明らかに好転していた。巻き返すのもある意味必然だったのかもしれない。今回は
得意コースの京都に戻ったことと、
池添騎手の好騎乗が相まってこの結果を生んだということのようだ。
ところで、86年以降の
京都大賞典勝ち馬を見ると、このレースの前か後にG1を勝った馬は
スズカコバン、
トウカイローマン、
スーパークリーク(2勝)、
メジロマックイーン(2勝)、
マーベラスクラウン(94年、阪神芝2500mで開催)、
ヒシアマゾン、
マーベラスサンデー、
シルクジャスティス、
セイウンスカイ、
テイエムオペラオー(2勝)、
ナリタトップロード、
タップダンスシチー、
スイープトウショウ、
オウケンブルースリ、
ローズキングダムがいる。
錚々たるメンバーであるだけでなく、その数は実に
26頭中延べ18頭。さらに、
G1で②着ならある馬が延べ4頭いる。要するに、このレースは
G1で好走できるだけの実力がなければ勝ち切れないレースといえる。
前述したように、
メイショウカンパクはこのレースが
重賞初勝利。そして
G1での連対もまだない。
何が言いたいかはもうお分かりでしょう。展開に左右される面はあるかもしれないが、このメンバーで勝ち切った
メイショウカンパクは、今後のG1戦線で注目しても面白いのではないだろうか。
天皇賞・秋戦線は確たる本命馬不在で、混戦模様となっている。
凱旋門賞で②着に入った
オルフェーヴルが参戦できれば別だが、今の
メイショウカンパクなら狙ってみる価値あり、かもしれない?