“賞金を加算したかった”マイネイサベルが完勝
文/編集部(T)、写真/森鷹史
エリザベス女王杯が古馬に開放されて以降、
府中牝馬Sは
エリザベス女王杯の前哨戦として位置づけられていたが、昨年G2に格上げされたことで、その意図がより明確になった。
トライアルやそれに類する位置づけのレースは、
そこで好走しないと次のG1に出走できない馬の好走が目立つ傾向がある。
今年秋に開催された3歳のトライアルを振り返ると、
ローズSでは③着の
ラスヴェンチュラス、
セントライト記念は②着
スカイディグニティ、③着
ダノンジェラート、
神戸新聞杯②着の
ロードアクレイムはレース前の時点で賞金が少なく、G1出走が危ぶまれる存在だった。
古馬のレースでも、
京都大賞典を制した
メイショウカンパクは、これが重賞初制覇だった。
なぜこんな話をしたかというと、今年の
府中牝馬Sも
「ここで好走する必要があるかどうか?」ということが、結果を大きく左右したと思うからだ。
今回の出走馬の中で、このレース前の時点でもっとも収得賞金が多かったのは2番人気
ホエールキャプチャの6625万円。以下
アプリコットフィズ、
アニメイトバイオと続き、1番人気の
ドナウブルーは4425万円で4位、
桜花賞馬
マルセリーナは3400万円で6位だった。
一方、今回の
府中牝馬Sを制した
マイネイサベルは、
レース前の時点で1900万円しか持っていなかった。これは出走馬
17頭中14位となる。
マイネイサベルが今後
エリザベス女王杯を目指すかはまだ分からないし、G1での出走順は単純に通算の収得賞金では決まらない。また、昨年の
エリザベス女王杯ではその時点で収得賞金が900万円だった
オールザットジャズの出走が叶っている。
しかし、
エリザベス女王杯は別にしても、この賞金のままでは今後狙ったレースに出走できないケースが出てきてもおかしくなかった。
今年の
ヴィクトリアマイルで前が詰まる不利がありながら⑥着に健闘した馬が、
賞金が足りなくて出走できないのではもったいない。そんな状況で迎えたのが、今回の
府中牝馬Sだったのだ。
マイネイサベルは
新潟2歳Sを勝っており、これまで
5回の馬券圏内のうち、4回が左回り。東京はおあつらえ向きの舞台だ。
ここは賞金を加算しておきたい……と、部外者の自分でさえそう思うのだから、陣営はもっとそう思っていたのではないか。そういう意欲が表れた、今回の
馬体重マイナス10kgだったように思う。
もちろん、それに応えた馬や、
松岡騎手の手綱も見事だった。ここで賞金を加算したことで、今後、特に来年の
ヴィクトリアマイルでは楽しみな存在になったといえるのではないだろうか。
ここで冒頭の話に戻るが、収得賞金や戦績を見れば、意欲のありそうな馬は想像がつく。しかし分かっていても、トライアルとなるとG1馬やG1好走歴のある馬が多数出てきて、なかなか
そこまで手が回らず、非常にもどかしい思いをする。だからこそ、穴馬券が生まれるのだろう
実際、前述した重賞での好走馬は、すべて3番人気以下だった。中には14番人気の
スカイディグニティ、8番人気の
ロードアクレイムなどもいる。
今回の
マイネイサベルは単勝10番人気だった。しかし、自分は馬券を外したが、
「こんなの買えないよ」ではなく、
「これは十分に買える馬だったな……」という感想を持った。
しかし、感想を持つのは簡単だが、
実際に買えるかというと話は別。これが非常に難しいと言うことは、皆さんよく分かっているのではないだろうか。
今後もG1の前哨戦が数々開催されるが、
実力があると思われるのに賞金が足りない馬をチェックしましょう。
「そんなの分かってるよ」という方がほとんどなのは分かっていますが、自分への戒めとして改めて書いておきます。
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」とは、プロイセン・ドイツの宰相
ビスマルクの言葉。自分は経験でも歴史でも、どこから学んでもいいので、どうにかしてこういう失敗を繰り返さないようにできないものでしょうか……。