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今回も“七難八苦”を乗り越えて、残すはG1の頂のみ!?
文/編集部(T)、写真/森鷹史

このレースをご覧になった方のうち、100人中95人くらいは「強い!」という感想が最初に浮かんだだろう。今回のレースを制したローマンレジェンドが披露したのは、それほどの勝ちっぷりだった。

1番人気は予想していたが、単勝1.4倍の圧倒的な1番人気に推されたのは、正直驚いた。ダートで5戦5勝、前走はJpn1ジャパンダートダービーを制しているハタノヴァンクールをはじめ、出走馬16頭中重賞(地方交流重賞を含む)勝ち馬が9頭出走していたにもかかわらず、だ。

それだけのメンバーが揃っていた、このレースを制したことの価値は高い。今後のG1戦線に向けて大きく展望が開けたといえそうだ。

いきなり結論が出てしまったが(笑)、そう考えるのには他にも理由がある。

レースを振り返ると、中団の内につけたローマンレジェンドは、4コーナーを回るまではそのまま内でスムーズに進めた。しかし、直線を向いたところで外にグレープブランデー、前にはニホンピロアワーズなどが壁を作っていて、なかなか進路が見つからなかった

それでも、岩田騎手は慌てずに進路を探し、残り200mを過ぎてからフサイチセブンが下がったことでできた馬群の隙間を見つけると、迷わずパートナーをそこに誘導。そこから一気に伸びて、前を行くニホンピロアワーズをクビ差交わしてゴールに飛び込んだ。

決してスムーズなレースではなかった。だからこそ、それでも勝ち切ったローマンレジェンド強さが際立つ内容だったといえるだろう。

“我に七難八苦を与えたまえ”と言ったのは、戦国時代の武将山中鹿之助。そう言った理由としては、“主君の家を再興するために、自分にどれだけ器量があるのか、苦難にあたらなければ分からないから”と伝えられている。

競馬に例えると、スムーズなレース、展開に恵まれたレースで勝った馬より、スムーズではなかったにもかかわらず結果を残した(あるいは結果を残せなくても、見どころのある内容だった)方が、評価が上がりやすい。“前崩れの展開にもかかわらず、逃げ切ったのは強さの証明”などは、よく使われるフレーズだ。

ローマンレジェンドはダートで[8.1.0.0]と、ほぼパーフェクトな成績を残しているが、これまでも順風満帆だったわけではなく、特に近2走は厳しい内容のレースが続いている。

今回のレース内容は前述した通りで、重賞初挑戦となった前走のエルムSは、いきなり古豪エスポワールシチーとの対決となった。例えるなら、まだ実力がどれほどのものか分からない高卒ルーキーが、いきなり相手球団のエースピッチャーと対決するようなものか。

このエルムSで、エスポワールシチーは斤量59kg、ローマンレジェンドは56kgと、3kgの差はあったが、直線の叩き合いを制して重賞初制覇を飾っている。

重賞初挑戦で壁にぶち当たる馬も多いが、前走と今回、これだけの壁がありながら、それでもローマンレジェンドは結果を残している。山中鹿之助の基準で考えると、かなりの器量の持ち主だ。

ただ、“七難八苦”はこれで終わりではない。次走に予想されるジャパンCダートでは、5日(月)に開催されるJBCクラシックに出走する予定のトランセンドテスタマッタなど、まだまだ未対決の強豪が残っている。

さらに、前走で南部杯を制して健在ぶりを見せつけたエスポワールシチーも、今度は同斤量で、フラットな条件での対決となる。

そんな中で結果を残されたら、もはや脱帽せざるを得ない

長らく現6~7歳勢がトップグループを形成してきたダート戦線に、4歳の新しい王者が誕生するか。日本では最後になるであろう、次の“七難八苦”の結果に注目したい。