ディープインパクト以来、7年半ぶりの驚きだった
文/編集部(M)、写真/森鷹史
武蔵野Sが
重賞となったのは96年で、昇格当初は春に
東京ダート2100mで施行されていた。
マイル戦となったのは00年で、距離を短縮されるとともに施行時期が秋に移行されたのだが、ここを境にして
高齢馬がまったく勝てなくなってしまった。
春に2100m戦として行われていた頃は、
5歳以下の馬が[0.2.3.19]と未勝利で、6歳以上の馬が[4.2.1.23]と勝利していた。ところが、00年以降は、中山ダート1800mで施行された02年も含めて、3~5歳馬が
12連勝を飾り、
6歳以上の馬は[0.3.4.60]という成績だった。
今年もそんなデータが参考にされたのか、1&2番人気は
3歳馬(
イジゲン、
ナムラビクター)となった。ただ、3番人気に、昨年の覇者で
6歳馬の
ナムラタイタンが推され、同馬以外にも今年は6歳以上の馬が6頭も出走していた。
データ通りに
若い馬が勝つのか、それとも、
ベテラン勢が地力の高さを見せるのか。今後のダート路線を占う上でも、今回の
武蔵野Sは、
世代間の強さの比較が注目された。
武蔵野Sは、実は、
ナムラタイタンを含む現6歳世代(2006年生まれ)が
3連勝中だった。09年は
ワンダーアキュート(当時3歳)が優勝し、10年は
グロリアスノア(当時4歳)が制覇。昨年は
ナムラタイタン(当時5歳)が接戦を制した。
この2006年生まれの現6歳世代はダート路線での層が厚く、前述した馬以外にも、
トランセンド、
テスタマッタ、
セイクリムズン、
シルクフォーチュン、
シルクメビウスなどがいる。
武蔵野Sでの3~5歳馬の連勝をストップさせるのはこの強い世代、というシナリオは、それはそれであり得るような気がした。ところが……。
6歳以上で掲示板に載ったのは
ダノンカモン(③着)だけで、
3歳馬が
ワンツーフィニッシュを飾った。しかも、勝った
イジゲンは出遅れて馬群の外を回る形ながら突き抜けるという、底知れない強さを見せた。まったくもって
「異次元」とは素晴らしいネーミングだと、誰もが思わせられたことだろう。
4コーナーで外を回って直線に向いた時は、
ディープインパクトの
皐月賞(05年)を思い出した。1番人気に推されたものの出遅れ、マクるように動いて4コーナーで先頭を射程圏に入れる。その姿がダブって見えたのだ。
ディープインパクトの時は、
「これで突き抜けたらバケモノだよなあ…」と思って見ていたのだが、そうしたら、突き抜けるどころか2馬身半もの差を付けて、
腰を抜かした思い出がある。
あれから
7年半が経ち、当時のことをすっかり忘れていたため、今回も4コーナーを迎えた時には、
「これで差し切ったら、まさに異次元ですな」などと悠長に構えていた。それが、本当に差し切ってしまうのだから驚いた。自分自身にとっては、
7年半ぶりの驚きだった。
②着にも同じ
3歳世代の
ガンジスが入った。
ガンジスはダートでの過去5戦がすべて1400m以下で、スタミナも求められる
東京ダート1600mではちょっと厳しいのでは……と思っていたが、直線で前のスペースが狭くなる場面がありながら、最後にしっかりと伸びてきた。③着以下には
1馬身以上の差を付けたのだから、同馬も強さを見せたと言えるだろう。
現3歳世代は、これで秋の中央ダートOP競走で[3.1.1.6]という成績になった。
ペルセウスS、
ブラジルC、
みやこS、
武蔵野Sの4レースでこの成績が残されていて、
3歳馬はいずれも馬券に絡んでいる。この勢いは、まさに現6歳世代が3歳時に席巻した09年の時のようだ。
09年の3歳世代(2006年生まれ)は、
シリウスS(
ワンダーアキュート)、
ブラジルC(
エーシンモアオバー)、
武蔵野S(
ワンダーアキュート)、
トパーズS(
シルクメビウス)と勝ち、
ジャパンCダートに5頭が出走した。
上位人気には、3番人気に
ワンダーアキュート、5番人気に
シルクメビウスが推され、馬券圏内に2頭が入る健闘を見せたものの(
②着シルクメビウス、
③着ゴールデンチケット)、優勝した
エスポワールシチー(当時4歳)には
3馬身半の差を付けられた。同年の
東京大賞典も、制したのは4歳の
サクセスブロッケンで、3歳馬は5頭が出走して
ゴールデンチケットの⑤着が最高着順だった。
重賞勝ち馬が続々と現れ、強さと層の厚さを見せつけている
現3歳世代だが、果たして
G1(Jpn1)の舞台でも頂点に立ち、2006年生まれの現6歳世代を上回ることができるだろうか。
中央の
ダートG1を
3歳馬が制すれば、
01年JCダートの
クロフネ、
05年JCダートの
カネヒキリ、
06年JCダートの
アロンダイトに次ぐ4頭目となるが……果たして?