今後は「シルクフォーチュンのがんばれ馬券」を買いそうだ
文/編集部(M)、写真/米山邦雄
2012年の中央競馬も残すところあと2週。新年を迎えたら、またすぐに年明けの開催がやってきて、競走馬は
年齢をひとつ加えるわけだが、年が変わると同時に年齢が増えることについて、以前から疑問というか
違和感を覚えてきた。
人間の場合、普通は、
誕生日を経て年齢をひとつ加えるわけですよ。ところが競走馬の場合は、
年が改まると同時に一斉に年齢がひとつ増える。しかも、競走馬の過半数が3~5月に生まれているのに、だ。
確かに、競走馬も誕生日に合わせて年齢を変えていたら、大混乱となるのだろう。ある週末に出走する馬が、
土曜日のレースだと
4歳だけど
日曜日のレースだと
5歳、なんてことも起こるかもしれない。
年が改まると同時に年齢をひとつ加えることは整理しやすいメリットがあるのだろうけれど、個人的には、
これとは違う扱いをしている。
競走馬は夏を越して年齢をひとつ加える、という考え方をしているのだ。
3歳馬の場合、
「ひと夏を越しての成長力」ということをよく言われるが、ベテラン馬の場合、
「ひと夏を越えて勝てなくなる」というケースがよく見られる。
春と
秋では、
同じ馬でも同等の力を発揮できるとは限らない、と思っている。
ひとつ、データをご覧いただこう。先週まで(12月2日まで)に行われた2012年のJRA平地重賞における、
6歳以上の馬の月別勝利数だ。
●2012年のJRA平地重賞で、6歳以上の馬が勝利した数(12月2日終了現在)
| 月 |
勝利数 |
| 1月 |
1勝 |
| 2月 |
3勝 |
| 3月 |
3勝 |
| 4月 |
1勝 |
| 5月 |
0勝 |
| 6月 |
1勝 |
| 7月 |
2勝 |
| 8月 |
1勝 |
| 9月 |
1勝 |
| 10月 |
0勝 |
| 11月 |
0勝 |
| 12月 |
1勝 |
1~9月までで、勝ち鞍のなかったのは4月だけだったが、
10月以降は1勝だけ(
ステイヤーズSの
トウカイトリック・10歳)。秋は古馬戦線に3歳勢も加わり、ベテラン勢は勝利するチャンスを奪われている。
③着以内に入った確率(
複勝率)で見比べても、その差は歴然で、次のようになっている。
●2012年のJRA平地重賞における6歳以上の馬の複勝率(12月2日終了現在)
| 月 |
複勝率 |
| 1~3月 |
13.8% |
| 4~6月 |
9.7% |
| 7~9月 |
11.5% |
| 10~12月 |
6.0% |
今年の10~12月のJRA平地重賞で、
6歳以上の馬は[1.2.2.78]という成績だった(12月2日まで)。中には上位人気に推される馬もいたが、1~5番人気でも[0.1.0.13]で、信頼度が高いとは言えなかった。
6歳以上の馬については、
「秋は、春と同じように扱うな」ということを教訓にしていた。
今回の
カペラSは、4歳馬の出走がない珍しい古馬重賞となったが、中心に取るべきは
6歳馬よりも
5歳馬(もしくは3歳馬)と考えていた。過去4回の優勝馬がすべて
4~5歳であったことも、その理由のひとつだった。
単勝オッズが10倍を切った馬は5頭いて、そのうち
6歳馬は3頭。
5歳馬の方が少なかったから(
スリーボストンと
エーシンウェズンの2頭だけ)、まさに「しめしめ」と思っていたわけだが……ゴール前で
それをあざ笑うかのような差し脚を見せる馬が現れた。
②着、③着、④着に
5歳馬が入り、本命視した
エーシンウェズンが内から鋭く伸びて3/4馬身差と接戦を演じてくれたが、勝ち馬は外を回って
着差以上の強さを見せつけた。
シルクフォーチュン様、恐れ入りました……。
シルクフォーチュンは今年の
フェブラリーSで②着となった馬で、中央のダート重賞を2勝(今回が3勝目)。実績面では明らかに上位の存在だったが、今年5月以降は、
かしわ記念⑥着、
プロキオンS⑤着、
武蔵野S⑪着で、まさに
私の教訓に当てはまる馬だと思っていた。
テン乗りの鞍上・
横山典騎手は、確かに恐い。脚質的にもぴったりハマりそうだ。いや、しかし、5歳馬か3歳馬に勝ってもらわなければ、
理屈に合わない。……そんな、いま思えば身勝手な理由で
「シルクフォーチュンは②着&③着まで」としてしまった。いやはや、まったくもって、鮮やかすぎる末脚だった。
上位人気に推された他の
6歳馬(
ティアップワイルド、
セイクリムズン)が、それぞれ過去2年よりも着順を落としていたから(
ティアップワイルドは②②着→⑤着、
セイクリムズンは①⑤着→⑨着)、
私の教訓が全否定されたわけではないだろう(となぐさめてみる)。
シルクフォーチュンは
ヌレイエフの3×3という濃いクロスも持つ馬で、そういえば
ブラックホーク(ヌレイエフ産駒)は
7歳で
安田記念を勝ったなあ(しかも
横山典騎手で!)とも思ったが、ここは下手に血統で理由付けするのはやめておこう。
シルクフォーチュンや
トウカイトリックのような
データを超越する存在もいる。いや、むしろ、そういう存在がいてくれた方が、
中年になった自分にとって励みにもなるじゃないか、と考えることにした(笑)。
ダート路線は、
芝に比べて、強い馬が高齢になっても強さを見せるケースが多い。ただ、
JRAのダートG1に限れば、6歳秋以降に勝った馬は2頭だけしかいない(04年
JCダートの
タイムパラドックス・6歳、08年
JCダートの
カネヒキリ・6歳)。
G1の
フェブラリーSを
7歳以上で制した馬はまだいない。ということで、来年に
7歳となる
シルクフォーチュンは、新たなデータ破りに挑むことになりそうだ。
フェブラリーSの馬券の軸は、
若い馬にするかもしれない。それでも、心の中では
「シルクフォーチュンのがんばれ馬券」を買っていそうだ。
そして、
フェブラリーSに限らず、今後は
シルクフォーチュンがレースで鋭い差し脚を見せるたびに、なんか頑張れそうな気もしている。もう若くないんだから、
そんな応援をする馬がいても悪くないだろう(笑)。