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3コーナーで流れに乗れたかどうかの差が勝負を分けた
文/石田敏徳、写真/川井博


“今回まで”はコディーノに逆らってみる──。

競馬友達にそう宣言して馬券を買ったのは東京スポーツ杯2歳Sのときだった。

確かに札幌2歳Sの勝ちっぷりは強かった。強かったけれど、負かした相手の力量はちょっと微妙な感じがしたし、好位の内々で温存した末脚をスパッと繰り出すという理想的な走りができた札幌2歳Sと、同様のレース運びができるとは限らない。そう考えた場合、1倍台という単勝オッズ(最終オッズは1.9倍)は“ちょっと被りすぎ”で、逆らってみる価値はあるんじゃないのと思ったわけである。

したらばレースでは「瞬間移動」(横山典弘騎手)の末脚を喰らい、私の馬券は見事に完敗。いやいや、参りました。今後、しばらくはコディーノには逆らいません。と、誓いを立てた舌の根も乾かないうちに、朝日杯FSの前日発売の単勝オッズ(コディーノは1.4倍)を聞いてまたしても、“逆らってみたい虫”が騒ぎ始めたのだった。

だって今回は「ザ・トリッキー」ともいわれる中山の1マイル戦が舞台。加えて母ハッピーパスの産駒はどうもスタートが不安定で、兄のラヴェルソナタはちょくちょく出遅れている馬(去勢されてこの日の千葉テレビ杯に出走。ちなみにまた出遅れていた)、姉のパストフォリアも2番人気の支持を集めた今年1月のフェアリーSでやらかした大出遅れが記憶に新しい。

コディーノ自身、デビュー戦では出遅れているし、断然の1番人気に支持されたG1の大舞台で兄姉譲りのDNAが顔を覗かせないとも限らない。

それにそもそもは、一見は「スローの前残り、内残り」と映った京王杯2歳S組の力量を高く評価していたのだ。その京王杯2歳Sも含め、コディーノと同じく3戦3勝という戦績を誇るエーシントップの単勝が7倍余りもつくのなら、そりゃ逆らってみたくなるじゃないか。

というわけでエーシントップの単勝をドカ買いして臨んだ2歳王者決定戦。確かにというべきか、コディーノは勝たなかった。しかしその“負け方”は私の想像とはまるで異なっていた。

レースのポイントとなったのは超のつくハイペースだった。まず飛び出したクラウンレガーロに隣の枠のエーシントップが釣られるように並びかけ、これに外から抑えきれない勢いで飛び出してきたロゴタイプマイネルエテルネルが加わる。

2コーナーでいったんは、エーシントップが腹を据えたように先手を奪うも、スピードを制御しきれなかったマイネルエテルネルが外に張り付く形となり、さらにはやはり制御不能の状態に陥ったように見えたネオウィズダムまでが先行争いに名乗りをあげてきたため、エーシントップは再び好位に下げざるを得なかった。

このように先頭が目まぐるしく入れ替わる中で刻まれたのが33秒9-45秒4-57秒3というスプリント戦並みのラップ。スタートを上手に決め、初手は中団のインで流れに乗ったコディーノにとってはまさに絶好の展開と映った。

ところが内で包まれるのを嫌って横山典弘騎手が外へ持ち出した3コーナー。コディーノは鋭すぎるほどの反応をみせて、先頭集団にまで並びかけてしまう。

「あそこで少し行きたがってしまったぶんだな。内でジッとしているわけにはいかないから仕方ないんだけど」と明暗の分かれ目となった場面を振り返ったのは藤沢和雄調教師。一方このとき、コディーノのすぐ内で流れに乗っていたのがロゴタイプだった。

「スタート直後、向正面、そして3コーナーと、3回ぐらい(他の馬に釣られて)折り合いを欠きそうになった場面があったのに、デムーロさんがうまくコントロールしてくれた」とは田中剛調教師。結果的にはここで流れに乗れたかどうかの差が勝負を分けた

4コーナーでひとつポジションを下げてから持ち前の鋭い末脚を繰り出しにかかったコディーノだが、終始、スムーズに流れに乗ることができたロゴタイプは実にしぶとい末脚を繰り出して応戦。断然の本命馬の追撃をクビ差で振り切ってゴールを駆け抜ける。

「ストレンジ(変則的)なレースになったけれど、この馬はスムーズなレースができた。今日は前走(レコード勝ちを収めたベゴニア賞)より、さらに状態も上向いていた」とはデムーロ騎手の弁である。

この2頭に続く③着にはゴットフリートが食い込んで、なんとローエングリン産駒が①&③着を占めることに。「ローエングリンはスピードをコントロールするのに苦労した馬だけど、“丈夫”という長所は産駒に受け継がれている気がするね。それにしてもローエングリンを信じて、付け続けてきてよかったよ」とは社台ファームの吉田照哉代表

ハイペース、あるいは乱ペースともいえた展開が追い風にもなって、スピードの持続力に長けた父の持ち味が活きた。今回の一戦はそうジャッジできるかもしれない。ちなみにデムーロ騎手によれば、距離は「サツキショウまではダイジョウブ」ということだ。

一方のコディーノも評価を下げるような内容ではなかったけれど、私のへっぽこ相馬眼には“馬体の完成度が高すぎる”ようにも映った。なんとなく、フィフスペトル(同じキンカメ産駒)に重なるような印象を受けたんだけど…。嗚呼、来春の始動戦あたりでは「今回もコディーノには逆らってみる!」とか宣言していそうな気がするぞ。