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「ちょっと前の京都金杯」を彷彿とさせる強い競馬だった
文/浅田知広、写真/森鷹史


京都金杯の回顧を書こうと思っていたはずが、いつの間にか京都牝馬Sの過去10年の傾向を調べていた……。いや、その理由ははっきりしており、今年から京都牝馬Sが1回京都最終週(といっても3週目)に繰り上がったから。牝馬3頭、この京都金杯に出走してしまって良かったのかなあ、という話である。

ちなみに、過去10年の京都牝馬Sでの京都金杯組の成績は[2.3.2.7]、連対率35.7%、複勝率50.0%。今年はもしかしたら、前走以外のデータも含め、近年とは違った結果が出るかもしれない、ということは再来週に向けて頭に入れておいた方がいいだろう。

ともあれ。今年は平安Sの移動もあって、1回京都の4重賞中3重賞がマイル戦。その第一弾が、今年の中央競馬開幕を飾る京都金杯である。

このレースがマイル戦に変更された00年に圧勝したのは桜花賞馬・キョウエイマーチ。翌01年、02年は皐月賞マイルCSで②着の実績を持つダイタクリーヴァが連覇。さらには03年のサイドワインダーは前年秋の1000万から3連勝を飾り、秋にはマイルCSで1番人気。

1年置いて(マイソールサウンドよ、済まない)05年のハットトリックは、秋にマイルCS香港マイルを連勝している。競馬にかぎった話ではないが、「初期に見たもの」の印象は強く残るもので、このあたりを見た方には「今年の運試し」とか「単なるG3のハンデ戦」という以上の重みが感じられるレースだったに違いない。

ところが。06年以降の優勝馬を見ると、この京都金杯より前のG1で合計[0.0.0.11]、後のG1で[1.0.0.17]。08年のエイシンデピュティこそ宝塚記念まで制したものの、それ以外の優勝馬は、このレースに至るまでG1で馬券圏内の実績がなく、後のG1でも馬券に絡めていない、という結果に終わっていたのだ。

一昨年の優勝馬・シルポートは昨年のマイルCSで見せ場たっぷりの④着だったが、結果としては「③着から1馬身以上の差がある」④着だった。

いくら初期の印象が強いとはいえ、さすがにここ7年のうち6回もそんな結果が出ていると、そろそろ「G3のハンデ戦」っぽい見方になろうかというもの。

そんな視点で見てみると、今年1番人気に推されたダノンシャーク「さて、どっちのグループなのだろう」と、ちょっと判断が難しい存在だった。G1の出走は過去1度きりで、前走のマイルCS⑥着敗退。一方で、そのマイルCSでは不利もあり、また、過去18戦で掲示板を外したのは2回だけという成績からは、まだまだ先があり、G1で好勝負を演じる可能性も大いにありそうでもある。

と、ここまではレース前のお話し。終わってみれば、ダノンシャーク「ちょっと前の京都金杯が戻ってきた!」という走りを見せてくれた。自身より後ろの馬をあっさりと置き去りにし、前の馬は楽々とのみ込むその末脚。レース前にあれこれ疑っていたことが馬鹿らしくなるような、なんとも強い競馬だった。

もちろん、内枠から前に馬を置いて折り合いがつけられたこと、距離損なく3~4コーナーをさばけたこと、そして直線でうまく前が開いたこと、この馬にとっていくつもの幸運があったのも確かではある。

ただ昨年の京都金杯は、3コーナー手前から折り合いを欠いた上、1番人気・サダムパテックの後ろで仕掛けのタイミングをはかっていたら、本当の敵はもっと前にいた、という競馬で届かず②着。今年は一転、幸先良いスタートを切れたのだから、これ以上のことはない。

もっとも「ちょっと前の京都金杯」は、G1実績馬や、これからG1で好走できそうな馬が勝つレースではあっても、必ずしも「後のG1馬」が勝つレースではなかったのも事実。さて、ダノンシャークハットトリックエイシンデピュティの域まで達することができるのか。

今後のダノンシャークの活躍によっては、5~6年後くらいに「最近の京都金杯は……」と、今年とはまったく逆のことを書くようになっているのかもしれない。また、そんなことを真剣に考えさせられる、新たなマイル王候補の誕生だったと言えるだろう。