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その類稀な根性で新たな歴史を切り開いていってほしい
文/編集部(W)、写真/米山邦雄


フェアリーSが中山芝1600mで行われるようになった09年以降、勝ち馬の4頭中3頭は阪神JF組の2勝馬(09年ジェルミナル、11年ダンスファンタジア、12年トーセンベニザクラ)。今回、この条件に該当しているのはサンブルエミューズだけで、しかも2勝のうち1勝を中山芝1600mのOP特別・芙蓉Sで挙げている。

前記した過去3頭の勝ち馬はそれまでの2勝の中にOP勝ちが含まれていなかったから、「サンブルエミューズは優勝候補として有力そうで、1番人気は必至」というのがレース前の印象だった。

ところが蓋を開けてみると、外枠が嫌われたのか1番人気は1戦1勝のイリュミナンスで、自身は2番人気。確かにイリュミナンス新馬戦で5馬身差の圧勝を演じていて、フラガラッハの半妹という血統背景から期待を集めるのも納得できたが、この人気順には正直驚いた。

さらに驚いたのがレース結果。2番手で流れに乗ったサンブルエミューズは、直線で逃げていたクラウンロゼを交わして一旦は完全に先頭へ。1000m通過59秒7でペース自体はそれほど速くなく、このまま押し切れるだろうと思っていたら、内からクラウンロゼが盛り返し、外からウキヨノカゼも接近してきてゴール前では横並び。

結局、内のクラウンロゼに差し返され、ウキヨノカゼにも交わされてサンブルエミューズは③着に敗れた。同じキャリア1戦でも、先着したのはイリュミナンス(④着)ではなく、10番人気クラウンロゼ、5番人気ウキヨノカゼのほうだった。

なお、サンブルエミューズが連を外したことはレース結果の驚きとしては半分。もう半分はクラウンロゼの直線での粘り腰である。

今回は直線に急坂が待ち構える中山で(クラウンロゼが新馬勝ちしたのは東京芝1600m)、キャリア1戦で初めて逃げた馬が直線で一旦交わされてしまったら、肉体的にも精神的にも厳しい状況と言えそうだが、そこでへこたれない根性は見事としか言いようがない。

ヒシアスカはその父ヒシアケボノ譲りの馬格を誇り、最多馬体重は534kgだったのに対し、父ロサードはデビュー時が406kgで、最多馬体重でも448kgと牡馬にしては小柄な馬だった。クラウンロゼは450kg台なので、馬体はどちらかと言えばロサードに近いタイプと言えそうだが、メンタル面はどちらに似ているのだろうか。

過去4年の勝ち馬を見ると、ジェルミナル桜花賞オークスで③着に好走し、コスモネモシンがOPで②着5回を記録するなど健闘を見せているが、フェアリーS以降で勝利を挙げた馬はおらず、勝ち馬4頭のフェアリーS以降の成績を合計すると[0.5.6.38]となる(13年1月14日終了時点)。

クラウンロゼにとってはありがたくないデータだろうが、その類稀な根性で新たな歴史を切り開いていってほしいものである。

一方、過去4年で②着以下に負けた馬からはアプリコットフィズ(10年クイーンC10年クイーンS)、オメガハートランド(12年フラワーC)が重賞ウイナーとなっていて、G1ではアプリコットフィズ10年秋華賞③着、ピュアブリーゼアイスフォーリスがそれぞれ一昨年と昨年のオークスで②、③着と好走している。

イリュミナンスは④着に敗れたとはいえ、上位3頭とは同タイムだったから悲観する内容ではなく、初黒星を喫したスズノネイロも今回は初の中山芝1600mで外枠に入り、前残り決着で展開も不向きだったから、直線が長くて広いコースに替われば見直せるだろう。

イリュミナンススズノネイロに限らず、今回の敗戦を糧に重賞戦線で巻き返してくる馬はいるはずで、特に中山芝1600mに対する適性面で疑問符が付くようなタイプは要注意と言えそうだ。

ちなみに、10年はジャングルポケット産駒のアプリコットフィズテイラーバートンが②&③着、11年はファルブラヴ産駒のダンスファンタジアスピードリッパーが①&②着、12年はダイワメジャー産駒のトーセンベニザクラダイワミストレスが①&③着と、同一種牡馬が2頭いっしょに馬券圏内に入るケースが続いていた。

今年の上位3頭の種牡馬はロサードオンファイアダイワメジャーで、残念ながら記録は途切れてしまったが、ロサードオンファイアはいずれもサンデーサイレンス×リファール系で、同配合の種牡馬のワンツーではあった。どうもフェアリーSは同一種牡馬、もしくは同配合種牡馬がセットで好走しやすい傾向があるようなので、来年も少し意識してみる価値はあるのではないでしょうか。