内枠も利したが、陣営も鞍上も見事な仕事ぶりだった
文/編集部(M)、写真/森鷹史
第60回日経新春杯は、
枠連が[1]-[1]で、
3連複が①-②-③で
1万円。縁起が良いんだか何だかよく分からないが、キリの良い数字での決着になった。
JRA重賞で、
馬番1~3番の馬が①~③着を独占したのは、昨年の
中山記念(①着3番フェデラリスト、②着1番シルポート、③着2番リアルインパクト)以来になる。ただ、その時は11頭立て。今回は多頭数(
16頭立て)だから、極めて珍しい。
90年以降のJRA重賞は、
日経新春杯で2866レース目になるが、このうち馬番1~3番の馬が①~③着を独占したのは
14レース。その出現確率は
0.5%ということだ。
しかも、その14レースのうち12レースは14頭立て以下で、15頭立て以上だったのは
94年愛知杯と今回の
日経新春杯だけ。
94年愛知杯(①着2番テンザンユタカ、②着1番ヤマニンフォックス、③着3番アラタマワンダー)は15頭立てで、道中で落馬競走中止した馬が3頭出たレースだったから、15頭立て以上で全馬が完走したのは今回の
日経新春杯だけになる。
これだけの多頭数でも、内枠の馬だけ買っていれば当たるんだから簡単だなあ、と感じるか、それとも、こんな不公平な馬場は改めるべきだ、と思うか、それは人それぞれ違うのだろう。ただ、レース後に
「いまの馬場でこの枠だと…」というコメントばかりが並ぶと、さすがに
後味の悪さを感じる。
京都開催は、秋の連続開催の後半をBコース→Cコースという順番に使い、年明けはAコースを使う。だから、内ラチ沿いに
グリーンベルトができて、そこを通る馬が上位入線を果たしやすくなる。
年明けの開催もBコースかCコースにすれば、内が断然有利という状況は改まるのだろう。ただ、そうすると、今度は、
いつAコースを使うのか?という問題が発生する。結局、いつかはAコースを使う、つまりは内有利な馬場を出現させなきゃいけないわけで、その見極めが難しいということか。
主催者としても頭の痛い点かもしれないが、
ファンが興ざめすれば売り上げも下がるのだろうから、そこは柔軟な対応・改善も必要だろう。京都競馬場は、東京競馬場と同じく、
A~Dの4コースで施行可能なのだから、不公平感が出すぎない運営を望みたい。
今回、1枠で連対圏に入った
カポーティスターと
ムスカテールは、内枠を利してロスなく立ち回ったが、驚いたのはそのレースぶりより、
休み明けで動いたことだ。
ムスカテールは11月4日の
AR共和国杯以来、
2ヶ月ぶりで、
カポーティスターは10月21日の
北野特別以来、
2ヶ月半ぶりだった。
ムスカテールも
カポーティスターも、過去に
休み明けで連対した経験があるから、その点では驚きに値しないのかもしれない。ただ、過去の
日経新春杯では
休み明け初戦や
2戦目の馬の成績が良くなく(00年以降は[1.1.1.34]だった)、気になる材料ではあった。
2頭とも、序盤に好位置を取るために鞍上がやや押す場面が見られたが、それでも道中は折り合い、最後にしっかりと脚を使ってきた。
冬場の休み明けでもきっちりと仕上がっていたようで、
陣営が良い仕事をしたということなのだろう。
カポーティスターの鞍上・
高倉騎手も、軽ハンデを活かした見事な騎乗を見せた。軽ハンデの馬が早めに仕掛けて実績上位馬を退けるケースはハンデ戦でよく見られるものだが、道中できっちり折り合うから最後まで伸びることができるわけで、2400mをトータルで見ても
パーフェクトな騎乗だったのではないか。
高倉騎手はデビュー4年目で、重賞初制覇を昨年に成し遂げている(
中京記念・
フラガラッハ)。ただ、勝利騎手インタビューで話していたように、同期の
川須騎手が昨年に重賞を3勝し(
小倉大賞典、
福島記念、
愛知杯)、JRAでの通算勝利数も
川須騎手が
高倉騎手を引き離す形になっていた(2012年末時点で、
川須騎手が178勝、
高倉騎手が106勝)。
高倉騎手が
「負けたくない」と話すのも当然だろう。
同期のライバルとして、今後、
川須騎手と
高倉騎手がどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみだ。
重賞初勝利は
川須騎手の方が先だったが、
G2勝ちは
高倉騎手の方が先になった。
G1タイトルを先に手にするのは、果たしてどちらだろうか。