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楽しみな新星が誕生、今後の活躍に注目していきたい
文/石田敏徳、写真/米山邦雄


暮れの2歳王者決定戦、朝日杯FSでソコソコ好走した馬の中には「出世する馬」「そうでない馬」が潜んでいる。たとえば、グランプリボスが優勝した2010年のレースで③着、⑤着に食い込んだリベルタスリフトザウイングス。あの2頭がその後、1000万クラスあたりに腰を落ち着ける馬になってしまうなんて、あの時点でいったい誰に予想できただろうか。

しかし、一方ではローズキングダムが優勝した2009年のレースで、低評価(12番人気、単勝オッズ61.8倍)を覆して④着に食い込んだガルボのように、「あの好走は伊達じゃなかったのか」と周囲を納得させる馬に育つ例もあるから、朝日杯FSの“ソコソコ好走馬”は判断が難しい。

というわけで、昨年の朝日杯FSの④着馬フラムドグロワールが断然の1番人気に支持された京成杯コディーノレッドレイヴンと、現3歳世代には久しぶりに牡馬のクラシック戦線を賑わせそうな手駒が揃っている藤沢和雄厩舎が送り込んできた今年の主役はさてどちら──?

雪による順延によって再輸送を嫌った2頭の関西馬(ラウンドワールドリグヴェーダ)が出走を見合わせたため、確かに相手関係は手薄になった。しかし少なくとも今回のレースにおいては、フラムドグロワールのことを「信頼の置けない人気馬」と睨んでいた。

朝日杯FS④着といっても、同じく京成杯に駒を進めてきたノウレッジ(⑥着)とのタイム差はわずか0秒1差。当時はノウレッジが大外枠を引いて、終始、馬群の外々を回らされた(フラムドグロワールは内目に潜り込んでソツなく捌いていた)ことを思えば、朝日杯FSに関しては「ほぼ互角」との評価が成り立つ。

血統からも馬体の見た目からもマイラー臭がぷんぷんと漂うノウレッジに対し、フラムドグロワールの母はオークス馬シルクプリマドンナ。ならば2000mへの距離の延長は大歓迎と多くの人が考えたのだろうが、これについても「怪しい」と睨んでいた。

フラムドグロワールの重厚な体つきは父のダイワメジャーによく似ていて、同産駒には1800mまではこなしても、2000m以上になると成績が落ち込む傾向が見受けられるからだ。しかし、レースが終わってみれば、正しかったのはフラムドグロワールに対する見立てだけ。そもそも展開を丸っきり読み間違えた。

超スローの流れに落としてエリカ賞を逃げ切ったマイネルマエストロが再び先手を奪いそうなメンバー構成から、スローの前残り→ならばホープフルSで平均ペースの2番手追走から②着に粘りこんだマイネルストラーノが狙い目と考えたのだが、逃げたマイネルマエストロが刻んだのはエリカ賞より3秒余りも速い(前半1000mの通過は61秒0)ラップ。

昨年の暮れ以降、例年以上に時計がかかっている印象があったところへ先週の雪が拍車をかけて、ますますパワー色を増していた中山の芝の状態を思えば、先行馬にとってこの流れはいささか厳しすぎた。

かくして、マイネルマエストロの逃げを2番手でマークする策に出たフラムドグロワール、3番手につけたマイネルストラーノは直線に向くと早々に失速。4コーナーで仕掛けて前を呑み込んだケイアイチョウサンがいったんは先頭に立つも、そこへ襲い掛かってきたのが後方で末脚を温存していたフェイムゲームアクションスターである。

ちなみに、④着に追い込んだクロスボウも含め、向正面では9~12番手(12頭立て)を進んでいた4頭が上位を独占。まさに典型的な「前潰れ」の決着となった。

そんな追い込みの競馬でアクションスターに競り勝ち、重賞ウイナーの仲間入りを果たしたフェイムゲームはご存知、バランスオブゲームの半弟(父ハーツクライ)にあたる馬。

9月の中山で迎えた初陣では⑧着、続く未勝利戦でも⑤着に敗れたが、宗像調教師によれば「実戦を経験しながら幼かった気性が成長してきた」そうで、デビュー3戦目の前走(中山芝2000m)では目を引く末脚を繰り出して待望の初白星をゲット、この勝ちっぷりのよさに背中を押され、「胸を借りるつもり」京成杯への挑戦が決まった経緯がある。

「(先行馬だった)バランスオブゲームとはタイプが違いますが、なかなかいい末脚を持っている。中山が得意だった兄と同様、コースも合っているのかもしれませんね」宗像調教師。この後はいったんひと息入れてから、ステップレースを叩いて皐月賞へ向かうローテーションが組まれることになる。

雪の後遺症でタフさを増していた馬場と、前潰れの展開が追い風になったこと、さらにクビ差②着のアクションスター(ラジオNIKKEI杯2歳Sでは“完敗”と映る内容の④着)を物差しに考えれば、「クラシックの主役級」との評価までは与えられないフェイムゲームだが、楽しみな新星が誕生したこともまた確か

近年の優勝馬で真の一線級に出世した馬といえばエイシンフラッシュぐらいしか見当たらない京成杯だけど、フェイムゲームは今後「出世しそうな馬」として注目していきたい。