ブロードアピールやシルクフォーチュンのような凄さだった
文/編集部(M)
根岸Sと言えば、
ブロードアピールの強烈な追い込み(00年)が記憶に残っている人が多いと思うが、
今年はそれに匹敵するような凄さだった、と書いたら、それは言い過ぎだろうと言われそうだ。でも、案外
そんなこともないので、今回はそれについて書いてみたい。
ブロードアピールが優勝した時は東京競馬場の旧コースで、
1200mで秋に行われた。3番人気の
エイシンサンルイスが逃げ粘り、
ブロードアピールは大外から矢のように飛んできて、最後は1馬身以上の差を付けた。上がり3Fは
34秒3という、芝のような速さだった。
根岸Sは翌年から冬開催の
1400mで行われるようになり、
ブロードアピールに似た末の切れるタイプが優勝することが多くなった。中山開催だった03年を除くと、01年以降は昨年までに東京ダート1400mで11回行われ、そのうち
メンバー中3位以内の上がりを使った馬が10勝している。昨年の優勝馬も、メンバー中最速の上がり(
34秒9)を使った
シルクフォーチュンだった。
今回優勝した
メイショウマシュウも、上がり3Fのタイムは出走メンバー中で
最速だった。そのタイムはどれほどだと思うだろうか?
いくら速かったとはいえ、
ブロードアピールほどではないだろう。
シルクフォーチュンより速いということもないので? 多くの人がそう思うのではないか。
今年の上がり3Fの上位3頭を3位から順に発表すると、
3位は⑥着だった
テスタマッタで
35秒2。2位は④着だった
スティールパスで
35秒0。
メイショウマシュウはこの2頭よりも速いので、34秒台であることがわかるだろう。その上がり3Fは、昨年の
シルクフォーチュンより0秒3も速い、
34秒6だった。
東京ダート1400mの
根岸Sで、34秒台の上がりを使って優勝したのは、
シルクフォーチュンと
メイショウマシュウの2頭だけ。
根岸Sを34秒6よりも速い上がりで制したのは
ブロードアピールだけで、だからこそ、同馬に匹敵するような凄さだった、と書いてみたのだ。
実際のところ、
メイショウマシュウが凄い脚で追い込んできたのに気付いたのは、多くの人が
残り100mを切ってからだろう。
ブロードアピールや
シルクフォーチュンのように馬群の大外を回ったわけではなかったから、
インパクトこそ残せなかったかもしれない。
ただ、直線に入って馬の間をすり抜け、エンジンがかかってからのスピードは凄まじいものがあった。仮に大外を回されていたら、届かなかったかもしれないが、
上がり3Fタイムはもっと速かったかもしれない。レース映像を見返すたびに、そんなことを感じさせられた。
メイショウマシュウはこれで12戦6勝。敗れたことが6度あるが、馬券圏外となったのは
休み明けの1戦だけで、上がり3Fがメンバー中最速ではなかったのも
休み明けの2回だけだ。中7週以内だと、9回走って
上がり3Fがすべてメンバー中最速なのだから、見た目以上に
「キレキレ」のタイプと言えるだろう。
この末脚が
フェブラリーSでも通用するかどうかだが、
フェブラリーSもメンバー中最速の上がりを使った馬は上位入線することが多いので、今回のように末が切れれば再び台頭があって良さそうだ。問題は、
根岸Sの勝ち馬で
フェブラリーSも勝利した馬が05年の
メイショウボーラーが最後となっている点だろう。
マイル戦の
フェブラリーSには中距離型のダート実績馬も参戦し、厳しい流れになって、最後に
スタミナを要する展開になることも珍しくない。
メイショウマシュウは、近走はずっと1400mを使われているので、マイル戦の厳しい流れになっても
末脚を温存できるか、そこを問われてきそうだ。
ハナ差での惜敗となった
ガンジスは、敗れはしたものの強さを見せたと言えるだろう。内から抜けようとした
セイクリムズンがいたので、あれより追い出しを遅くするわけにもいかなかっただろうし、
メイショウマシュウにあれだけ切れる脚を使われては、併せることもできなかった。
ガンジスの上がり3Fは35秒4で、これは
メンバー中4位だった。4位以下でこのレースを制すれば
サウスヴィグラス以来だったので、逆に考えれば、
ガンジスはかなりのダート巧者であることを証明したとも言えそうだ。ひとつでもタイトルを獲得すれば、
ダートの短距離戦線で長期にわたって活躍するのではないだろうか。