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2年前の課題をことごとく克服し、久々の美酒
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


いきなり私事で恐縮だが、土曜の競馬が終わった後、携帯の機種変更をしてきた。

パソコン、家電製品などは、「このメーカーに決めている」という方はけっこう多いと聞く。自分は以前から海外メーカー製のスマートフォンを使っていたが、今回は久々に国内メーカー製のスマートフォンにすることにした。

とはいえ、だいぶ前に使っていたメーカーではあったので、実際使ってみると「ああ、こういう良いところがあったね」という感じで、以前使っていた頃に気に入った点が思い出される。また、前の海外メーカー製の気に入らなかった点も見えてくる(もちろんその逆もある)。

以前使っていたものを久々に使ったときの感慨のようなものは、誰しも感じたことがあるのではないだろうか。

なぜそんなことを思い出したのかというと、今回の京都記念を制したトーセンラー&武豊騎手が、実に2年ぶりのコンビだったからだ。

トーセンラー武豊騎手は、デビュー3戦でコンビを組んで①③③着。もちろん悪い成績ではないが、2戦目のエリカ賞は前残りの展開を内で包まれ脚を残し、3戦目の福寿草特別では自ら動いていったが、最後に伸び切れなかった。

500万特別で勝ち切れなかったトーセンラーは、その次走でM.デムーロ騎手に乗り替わって(武豊騎手は騎乗停止中だった)きさらぎ賞を制し、クラシック戦線に参戦している。

今回、武豊騎手トーセンラー福寿草特別以来のコンビとなったが、そのレースぶりはデビュー3戦で見えてきた良さと、課題を集大成させたレースに見えた。

レースを振り返ると、トーセンラーはスタートから馬なりで中団につけた。大外枠もあって馬群の外につけ、他馬に邪魔されにくい位置を進む。このあたりで2戦目に見えた課題をクリアした。

武豊騎手は向正面で外から一気に上がっていったショウナンマイティを横目に、ガッチリと手綱を抑えたまま。自分から動いていって勝ち切れない傾向はその後もみられたが、このあたりは3戦目ですでに見えていた課題だったかもしれない。

そんな武豊騎手の手綱に応え、直線に入ってから仕掛けられたトーセンラーは、外から一気に伸びて前を捉え、きさらぎ賞以来2年ぶりの勝利の美酒となった。

レース後、武豊騎手「2年ぶりの騎乗だったので、手探りだった」という趣旨のコメントを残した。それであってもなお、これまでの課題をことごとく克服させたことはさすがといったところか。

冒頭で触れた携帯や、家電製品でも何でもそうだが、慣れてくることでさらに使いやすくなる。“手探りだった”という今回でさえこのレースぶりなら、今後はさらに息があってくるのではないだろうか。

今年初重賞勝ちとなった武豊騎手は、これで昨年に続いて京都記念を連覇し、同時に27年連続の重賞制覇を達成。もはや説明不要、さすがの大記録だが、今後もまだまだ様々な記録を塗り替えていくのだろう。

トーセンラーの父ディープインパクトの現役時代、全レースの手綱をとってG1を数多く勝った武豊騎手は、まだディープインパクト産駒でG1を勝ったことがないトーセンラーとのコンビで、それが成し遂げられるだろうか。

今年に入って、ディープインパクト産駒の現5歳世代は京都金杯ダノンシャークAJCCダノンバラードに続いて重賞3勝目となった。

ジェンティルドンナディープブリランテなどのG1馬を出した現4歳世代に比べて、現5歳世代は3歳時にマルセリーナ桜花賞リアルインパクト安田記念を勝ったが、古馬になってからはG1を勝てていない

今年に入って重賞で[0.1.0.4](②着はこのレースのベールドインパクト)の現4歳世代もこのままで終わるはずはないが、ディープ産駒一期生として、現5歳世代のG1戦線には特に注目が必要になりそうだ。