レース内容も勝ちっぷりも素晴らしいダイヤモンドSだった
文/編集部(W)、写真/川井博
出走馬を見渡すと半数以上の馬が前走で4角4番手以内につけていて、
エーシンジーライン、
ネコパンチ、
イケドラゴン、
メイショウカドマツは逃げを打っている。最内枠には昨年の
ダイヤモンドSで逃げ切り勝ちした
ケイアイドウソジンもいて、
「どの馬がハナを切るのか分からないけどペースは速くなりそうで、雨の影響も残ればスタミナ勝負は必至だろう」というのが第一感だった。
結局、雨は思ったほど降らなかったようで、土曜日の東京は芝もダートも良馬場で行われることになったが、
ダイヤモンドSは予想通りのスタミナ勝負に。
ダイヤモンドSが東京芝3400mで行われるようになった04年以降、1000m通過が60秒を切ったのは今年(
59秒9)が初めて。というか、62秒を切ったのも06年(
61秒6)、07年(
61秒3)、09年(
60秒5)と少なく、今年の序盤がいかに速かったかが分かる。
ネコパンチがハナを切り、
ケイアイドウソジン、
ラッキーバニラ、
エーシンジーライン、
イケドラゴン、
メイショウカドマツの順で間隔を空けて追走していたが、結果的には
メイショウカドマツのポジションが好勝負できるかどうかのボーダーラインだったということだろう。
ちなみに、1000m通過が60秒5だった09年(①着
モンテクリスエス、
3分29秒4でレコード)は4角8番手以下から差した馬が掲示板を独占していたが、今年も前崩れの差し決着となり、前記した
メイショウカドマツより前で運んでいた
ネコパンチ(⑯着)、
ケイアイドウソジン(⑩着)、
ラッキーバニラ(⑮着)、
エーシンジーライン(⑭着)、
イケドラゴン(⑬着)はふた桁着順に失速してしまった。
だが、3コーナー付近でペースアップし、前を走る馬が次々に勝負圏内から脱落していく感じは
サバイバル戦の様相で、レースとしては非常に見応えのある内容だったと思う。
1年に1回しか使用しない東京芝3400mでステイヤー同士が争うなら、昨年のようなスローペースの逃げ切りよりも、
そのレースの存在価値を示してくれるようなレース内容であってほしい。その観点から言えば、今年の
ダイヤモンドSは素晴らしく、大満足だった。
素晴らしかったと言えば、
アドマイヤラクティの勝ちっぷりもそう。道中は
メイショウカドマツが牽引した後方馬群の先団で脚を溜め、3~4コーナーでジワジワとポジションを上げて直線に入り、最後の1Fで迫り来る後続集団を引き離して2馬身半差勝ち。来るなら来いという横綱相撲で完勝したのだから、
この条件に適性が高かったということだろう。
昨年、同じハーツクライ産駒の
ギュスターヴクライは1番人気ながらスローペースで差し切れず②着だったが、スタミナ勝負となった今年は
アドマイヤラクティがその
鬱憤も晴らすかのような重賞初制覇。
ステイヤーの資質が開花した瞬間を目の当たりにした思いである。
この後は4月28日の
天皇賞・春(G1、京都芝3200m)を目指すことになるだろうが、②着となった斤量58.5kgの9歳馬
ジャガーメイルを物差しにして考えると、現段階では
ゴールドシップへの挑戦権を獲得した感じか。
04年以降の勝ち馬は
ダイヤモンドS勝ちして以降の同年で
[0.7.6.30]と未勝利で、
天皇賞・春に限ると07年に
トウカイトリックの③着があるのみで
[0.0.1.7]と苦戦傾向にある。
アドマイヤラクティは初タイトルを手にしたのと同時に、これから乗り越えなければならない
課題を与えられた感じだが、父が
05年有馬記念で
ディープインパクトに土をつけた
ハーツクライであることや、今回の厳しい展開で完勝した底力などを考慮すると、G1であっと驚くような仕事をしても不思議ない印象もあるが、どうなるだろうか。
いずれにしても、②着
ジャガーメイルを除くと、
アドマイヤラクティ(5歳、1番人気①着)、
メイショウカドマツ(4歳、6番人気③着)、
ノーステア(5歳、3番人気④着)、
サクセスパシュート(5歳、5番人気⑤着)、
ファタモルガーナ(5歳、2番人気⑥着)と、若手の新興勢力が上位人気に推されて上位進出を果たしていて、
世代交代が進みつつあることを感じさせた。
アドマイヤラクティにはぜひともその牽引役を担ってもらい、
古馬の芝中長距離路線を賑わせてほしいと思う。