クロフネサプライズの存在によって締まったG1となりそうだ
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
チューリップ賞で
逃げ切りが決まったのは、08年の
エアパスカル以来になる。それでいて、勝ち時計は
歴代4位となる
1分34秒9が記録された。果たしてこの関係をどう見たらいいのだろうか?
今年は、「ペースは速かったか?」と聞かれれば、答えは「No」だろう。通過タイムは、600mが
35秒9、800mが
48秒0、1000mが
60秒2で、決して速いとは言えない。
チューリップ賞としては、平均的な流れだった。
しかし、平均的な流れになっても差し馬が台頭しやすいのがこれまでの
チューリップ賞で、例えば昨年は35秒7-48秒0-60秒2という流れで、4角8番手にいた
ハナズゴールが差し切っている。
レーヴディソールが差し切った2011年も35秒5-47秒7-60秒1というラップだったし、
ブエナビスタが快勝した09年は36秒0-48秒6-61秒3だったから、今年よりも遅かった。
今年は平均的なラップだったにもかかわらず、差し馬が届かなかったわけで、
差し馬は例年ほどの強さではないということだろうか? 裏を返せば、それだけ
クロフネサプライズが強いということか?
前述したように、今回の1分34秒9という勝ち時計は、
チューリップ賞での歴代4位になる。1位は
ウオッカ(07年・1分33秒7)、2位は
エアグルーヴ(96年・1分34秒2)、3位は
レーヴディソール(11年・1分34秒5)で、いずれも
G1馬だ。
クロフネサプライズはG1・②着の実力をいかんなく発揮したと言えそうだ。
歴代1~3位の時計で優勝した馬は、いずれも
好位~中団からの差しだった。これに対して
クロフネサプライズは
逃げ切り。先手を奪ってこれだけの時計でまとめられたら、他の馬はどうすることもできない。今回の
チューリップ賞は、そういうことだったのではないか。
他馬がどうすることもできないようなレースを見せたのだから、
クロフネサプライズは同じようなレースができれば、
桜花賞でも当然、有力だろう。だが、果たして、
G1の本番でも同じ展開を築けるだろうか。他の有力馬がそれを許すだろうか。
施行時期を比べれば、
チューリップ賞と
桜花賞では1ヶ月の開きがある。
チューリップ賞は
開催2週目の施行だが、
桜花賞は
連続開催7週目(4月7日)になる。馬場は荒れ気味となるだろう。
1分34秒9というタイムは、
チューリップ賞の勝ち時計としては速いが、
桜花賞でこれより遅い時計で決着したケースは99年(
プリモディーネ・1分35秒5)まで遡る。近5年は
1分33秒3~1分34秒6だから、優勝するには、開催が進んだ馬場でさらに時計を縮める必要がありそうだ。
クロフネサプライズは、今回は
休み明け(約3ヵ月ぶり)だったから、状態自体は
桜花賞の時に上昇している可能性がありそうだ。斤量が1kg増えるが、それは他の馬も同じで、馬格もそれなりにある馬だから克服は可能だろう。
クロフネ×トニービン×ニホンピロウイナー×ノーザンテーストという配合だから、血統的には道悪もこなせそうで、
荒れ馬場を苦にする感じはしない。となると、
桜花賞での最大のポイントは、やはり、
他馬の出方、なのではないだろうか。
桜花賞を逃げ切った馬は、近年はほとんど存在せず、4角先頭だった馬は91年
シスタートウショウまで遡る。外回りコースとなった07年以降は特に差し馬が優勢で、それだけに他馬は
末脚を温存してきそうだ。
しかし、末脚を溜めようとする馬が多く出現すれば、それだけ
クロフネサプライズの逃げは楽になる。当然、勝機も高まっていくはずで、他馬の鞍上は
乗り難しさを感じるのではないだろうか。
末脚を温存したい馬のジョッキーは、
「誰か鈴を付けに行ってくれ」と願いそうだが、今年の
桜花賞では、そんな
他力本願の馬では優勝できないだろう。
クロフネサプライズが存在することで、今年は
締まった地力勝負の桜花賞となりそうだ。
最後に、1~2番人気で掲示板外に敗れた
レッドオーヴァルと
ローブティサージュについても触れておこう。両馬とも道中で行きたがる感じだったから、
G1となってペースが上がるのは歓迎となるかもしれない。
ただ、90年以降の
桜花賞で、
前走⑤着以下から巻き返して優勝したのは2頭だけ(00年
チアズグレイス、02年
アローキャリー)。今回の敗戦はかなり痛い印象がある。
ローブティサージュは今回が休み明け(約3ヵ月ぶり)で馬体重が
6kg増(448kg)だったが、
レッドオーヴァルは2戦目以降がずっと体重を減らしていて、今回は
10kg減(426kg)だった。1ヶ月の間に体を戻せるかもポイントになってきそうだ。