皐月賞トライアルながらダービー候補誕生という印象も強い!?
文/浅田知広、写真/森鷹史
皐月賞といえばひと昔前、
弥生賞組と
若葉S組ばかりが連対している時期があった。しかし過去10年では、
スプリングS組が
[5.3.1.49]、
弥生賞組が
[3.3.5.34]。出走数も違うため勝率や連対率はほぼ互角とはいえ、以前はほとんど
「お客さん状態」だった
スプリングS組が大きく巻き返し、半数の勝ち馬を輩出している。
しかし、
さすがに今年は違うだろう、という
弥生賞への
エピファネイアと
コディーノの出走だった。2歳王者・
ロゴタイプには失礼な話になるが、
朝日杯が7番人気という人気薄だった上、中距離適性も未知数。
昨年末の段階で
「クラシックの有力候補」といえば
ロゴタイプよりも、無敗で
ラジオNIKKEI杯2歳Sを制した
エピファネイア、そして少々意外な
朝日杯・マイル戦出走も②着にまとめた
コディーノの名前を挙げた人が多かったに違いない。その2頭が、今季初戦にこの
弥生賞を選択。当然、今年はクラシック直結という発想にもなる。
そしてもうひとつの
「さすがに今年は違うだろう」。
弥生賞は92年に6番人気の
アサカリジェントが優勝した後、
19年連続で勝ち馬は4番人気以内。昨年の9番人気・
コスモオオゾラは久々に人気薄の優勝だった。しかし、今年は
エピファネイアが単勝2.3倍、そして
コディーノが2.6倍で一騎打ちムード。平穏な
弥生賞が戻ってくると考えた人が多かった。
しかし、そんな
ファンの思い通りにばかり事が進もうものなら、ギャンブルとして成立しなくなるのが競馬である。まずは3コーナー、内で包まれた
コディーノが好位からずるずると中団まで後退。コーナーワークでやや盛り返したものの、直線は苦しい態勢からの追撃を強いられた。
その一方で、
エピファネイアは押し出されるように直線入口で先頭へ。前半はなんとか折り合いをつけるような競馬だったとはいえ、前走もそんな競馬でしっかりと勝利をものにしており、こちらは想像された範囲内。
直線半ばで一気に抜け出し、勝つのはこの馬かと思われた。ところが、坂にかかると脚色が鈍って急激に
失速。そこに外から襲いかかったのが、6番人気の
カミノタサハラ、そして10番人気の
ミヤジタイガ。なんとまあ、
昨年を上回る大波乱という結末だった。
優勝した
カミノタサハラは
東京で2戦2勝。その間に挟んだ中山・
ホープフルSも豪快に追い込んで③着だったものの、4コーナーで外にふくれて大きなロスを喫しており、中山よりは東京向きとの評価だった。
しかし、適性の差をカバーせんと3コーナー手前から仕掛けて
エピファネイアの外まで進出。コーナー通過順は[7][7][4][4]で、内を進んだ③着
コディーノの[3][3][5][7]とは対照的である。その後、反応ひと息で直線入口では再び7番手あたりまで後退、いったんは
エピファネイアに突き放され、内の
コディーノよりも位置取り自体は後ろになった。
ただ、前々走の末脚を考えれば、前から3馬身程度の差で済めばなんとかなる、というのが今回の結果。
内田博幸騎手の叱咤激励に応えてしぶとく脚を伸ばすと、ゴール寸前で前の各馬をきっちりと捕らえてみせたのだ。
もっとも、今回は12頭立て。不向きと思われる中山を
鞍上の手腕で克服した部分も大きいレース内容で、多頭数になる
皐月賞でも同じ競馬ができるとは限らない。ただ、この馬にとっては、賞金的に
日本ダービー出走まで確実なものとしたこの勝利は大きかった。
弥生賞は
皐月賞よりも
ダービーに繋がりやすい印象もあり、過去20年の優勝馬は
日本ダービーで4勝と、このレース直後の
皐月賞・3勝を上回る。
加えて言えば、
ダービーで1番人気に推されれば
[3.2.1.0]。そんな
弥生賞を制した「東京向き」の
カミノタサハラ。
皐月賞トライアルでありながら、
ダービー候補誕生という印象も強い一戦になったが、さて、こちらは
ファンの思い通りに事が進むことになるのだろうか。