皐月賞当日の天気が気になる
文/編集部(M)、写真/川井博
1番人気馬がついに勝利を収めた。この表現は、普通ならかなりおかしい。ただ、
今年の3歳戦線については、そう表現しても間違いではないだろう。
今年の3歳戦線は
波乱の連続で、芝のOP競走では1番人気があまり勝てていなかった。
先週までの17レースのうち、1番人気が勝ったのは
4レースだけで、1800m以上の距離に限れば[0.1.0.5]という有様。土曜日(16日)の
若葉Sでも1番人気に推された
メイケイペガスターが
⑧着に敗れ、「またか…」というため息をつかせていた。
今回の
スプリングSで1番人気に推されたのは
ロゴタイプ。正直なところ、また
波乱が起こるのではないかと身構えた。
スプリングSは、前走で重賞を勝っていた馬が不振のレースだった。03年の
ネオユニヴァースは、
きさらぎ賞①着からの臨戦で
スプリングSも勝ち、その後に
二冠を制したが、翌04年以降はそのような馬が現れず、前走で重賞①着だった馬は[0.0.3.8]という成績だった。
前走で重賞を勝っているような馬は、
皐月賞に出走できるだけの賞金をすでに持っているわけで、トライアルで目一杯に仕上げられるはずがない。そんな推論が流布されて、確かにそれには説得力もあった。
ロゴタイプは昨年の
朝日杯FS勝ち馬で、過去のその勝者が次走で不振だったことも、気になる材料だった。
次走でも勝ち鞍を挙げた
朝日杯FS勝ち馬は、
03年弥生賞の
エイシンチャンプまで遡り、同馬以前だと
96年スプリングSの
バブルガムフェローになる。
今回の
ロゴタイプは
好枠を引き当てたので、大凡走というのは考えづらかった。ただ、わざわざこの馬から入って馬券を買う必要はないと思い、もっと良さそうな馬を血眼になって探してしまった。いま思えば、なんと
無駄な労力だったか。
1分47秒8という勝ち時計は、
スプリングS史上で
4番目のタイムになる。ただ、2年前に
オルフェーヴルが記録した1分46秒4は阪神コースだったので、
中山コースに限れば3番目だ。
1位が02年の
タニノギムレット(1分46秒9)、2位が05年の
ダンスインザモア(1分47秒3)で、両馬は次走の
皐月賞で連対圏まで届いていない。だから、時計が速くても
皐月賞に直結するとまでは言い切れないだろう。
ただ、
ロゴタイプは最後まで余裕があったし、それこそ
休み明けでありながら、
皐月賞の出走権を獲りにきた馬たちを軽く一蹴したのだ(
タニノギムレットと
ダンスインザモアは休み明けではなかった)。相当に価値は高いし、なにより、
1番人気で制したことを素直に評価すべきなのだろう。
スプリングSを1番人気で制し、次走で
皐月賞に出走した馬は、90年以降だと[3.1.1.2]という成績だ。馬券圏外となったのは、
皐月賞で8番人気だった
フライングアップル(⑫着)と3番人気だった
シンホリスキー(⑮着)。今回の勝利で、
ロゴタイプが
「混戦に断」を付けたと見れば、
皐月賞は同馬を中心に考えるのが自然の流れだろう。
ロゴタイプにとって、
皐月賞での
キーポイントとは、果たして何なのだろうか? 実は
天候なのではないかと思っている。
近年の
皐月賞は、そのほとんどを
父サンデー系の馬が制している。08年以降は、
キャプテントゥーレ、
アンライバルド、
ヴィクトワールピサ、
オルフェーヴル、
ゴールドシップと5連勝中で、00~01年と03~05年には
サンデー直仔が優勝している(サンデー直仔は95~96年にも優勝)。
00年以降で、
父サンデー系の馬が勝たなかったのは3年(02年、06~07年)で、そのうち2年は
ブライアンズタイム産駒が優勝している。つまり、
父ヘイルトゥリーズン系の馬以外で
皐月賞を制したのは、00年以降だと1頭だけということで、それは06年の
メイショウサムソン(父オペラハウス)だ。
オペラハウス産駒は、99年にも
テイエムオペラオーが優勝していて、
皐月賞での相性は悪くない。
オペラハウスの父は
サドラーズウェルズで、
ロゴタイプの父
ローエングリンの曽祖父が
サドラーズウェルズなのだから、同馬も適性があって不思議ないはずだ。
それでもどうして
天候がキーポイントだと記したかと言うと、
オペラハウス産駒の2頭(
テイエムオペラオー、
メイショウサムソン)が
皐月賞を制した時は、どちらも良馬場発表ながら
水分を含んだ馬場だったからだ。
テイエムオペラオーが優勝した99年は、レースの2時間前くらいから
雨が降り始め、レースが行われた時の天候は
雨。
メイショウサムソンが勝った06年は、天候が
曇だったが、レースの2時間前くらいまでは
雨が降っていて、ダートは稍重のコンディションだった。
パンパンの良馬場だと切れ味に優る
父サンデー系が台頭しやすく、
父サドラーズウェルズ系の
ロゴタイプにとっては、少し水気を含んだ馬場の方が良さそうな印象を受けるのだ。
もちろん、
ロゴタイプは母父が
サンデーサイレンスで、ヘイローの4×3(ヘイルトゥリーズンの5×4)というクロスを持っていて、スピード面で
父サンデー系の馬に引けを取らないことも承知している。それでも、過去の優勝馬の血統を見ると、
切れ味勝負の馬場では
父サンデー系の馬に脅威を感じてしまうのだ。
果たして、
皐月賞当日の
4月14日は、
天候がどうなるか。大混戦の3歳戦線は、真打ち・
ロゴタイプの登場によって、一気に平穏に収まっていくのだろうか。