ハイペースを前で押し切ったトウケイヘイローの勝利の価値は高い
文/編集部(T)、写真/森鷹史
過去の傾向から、
ダービー卿CTは
「荒れやすく、馬券を考える上でも難易度の非常に高いレース」というイメージがある。
その証拠に、阪神開催だった11年を含めた過去10年で、
7番人気以下の馬が馬券に絡まなかった年はない。
実際、自分も荒れることを見越して、人気薄の馬を相手にした3連単を買っていた。しかしそれは、今年の
ダービー卿CTに隠された
錯覚で、自分は見事にそれに引っかかってしまった。
今年馬券に絡んだ3頭のうち、勝った
トウケイヘイローがもっとも人気がなかったが、それでも
5番人気。②着の
ダイワマッジョーレ、③着の
ダイワファルコンが同じ単勝4.4倍で
1、2番人気を分け合っていた(1番人気は
ダイワマッジョーレ)。近年の傾向に反し、
人気サイドの決着となったわけだ。
冒頭の
「荒れそう」というイメージは、このレースがハンデ戦だということも理由のひとつだろう。
今回のメンバーのハンデを見ると、もっともハンデが軽かったのが
55kgの3頭(トウケイヘイロー、ホーカーテンペスト、ダンツホウテイ)、
トップハンデの2頭(
ガルボ、
リアルインパクト)との差は、
3kgしかなかった。
では、03年以降の過去10年で、もっともハンデが軽い馬とトップハンデ馬との差はどうだったか。牝馬に2kgプラスで換算すると、もっとも小さかったのが
07年の4kgで、4.5kg(10、12年)、5kg(08、09年)、5.5kg(03、06年)、6kg(04、11年)、
6.5kg(05年)の年まであった。
今年はハンデ戦といっても、
近年に比べるとそこまでハンデ差がなかったことになる。この時点で、
「今年は少し様相が違う…」と気づくべきだった。『馬迷男の挑戦』の“教訓”的に言うと
、「荒れる重賞でもメンバーは毎年違うので、メンバーをしっかり吟味すべき」といった感じだろうか(苦笑)。
とはいえ、前述したように
トウケイヘイローはもっともハンデが軽かった。②着
ダイワマッジョーレも56kgで、ハンデが軽めの4歳馬がワンツーしたことになる。
では、上位馬、特に
トウケイヘイローはハンデ差を利しての重賞初勝利だったのかというと、そうとは言い切れないのではないだろうか。
レースの
前半800m通過は45秒5。これは過去10年で2番目に
速いペースとなる。もっとも速かった04年(前半800mが45秒2)は差し決着となっていたが、今年の
トウケイヘイローは1~2番手でレースを進めて押し切っている。未明に雨が降ってやや重めの馬場(良発表)だったことも踏まえると、この内容はかなり
評価を上げるべきだろう。
しかも、レース後の
松岡騎手のコメントは
「前に壁を作りたかったが、引っかかってしまい、最後は一杯だった」というものだった。
一方、②着
ダイワマッジョーレの鞍上を務めた蛯名騎手は
「あのペースで前に行って止まらないのは凄い」、③着
ダイワファルコンの北村宏騎手も
「ペースが速かった」という趣旨のコメントを残している。
今回は
外枠(7枠13番)だったために仕方ない面もあったが、これで内枠に入って抑えが利くようになればどうなるだろうか。
トウケイヘイローの近3戦はふた桁馬番で②①①着なので、外枠の方が良いと
錯覚しがちだが、実は
ひと桁馬番だと①③①⑩③①着と好成績を残している(⑩着は休み明け)。
今回重賞初制覇を飾った
トウケイヘイローにとって、春の大目標は
安田記念と伝えられている。その前にぜひ、重賞で内枠に入ったとき、そしてハンデ差がないときにどんなレースをするか見てみたいと思うのだが…それは
錯覚に騙されがちな自分の贅沢だろうか(笑)。