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そこには大人の風格があった
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也


オルフェーヴル以外で上位人気に推されたのは、ショウナンマイティダークシャドウヴィルシーナエイシンフラッシュの4頭。ただ、このうち、ダークシャドウエイシンフラッシュ有馬記念以来3ヵ月ぶりで、ヴィルシーナエリザベス女王杯以来4ヶ月半ぶりだった(オルフェーヴルJC以来4ヶ月ぶり)。

実績面でオルフェーヴルに劣る立場ながら同じ休み明けでは劣勢の感は否めず、今回は実質、オルフェーヴルショウナンマイティの一騎打ちになると思っていた。

結局、その2頭でワンツーとなったわけだが、レースは「一騎打ち」というより、「一強」と表現すべき結果になった。半馬身という着差ではあったが、オルフェーヴルの強さだけが際立っていた。

休み明けのオルフェーヴルと言えば、昨年の阪神大賞典が思い出され、スローペースが予想された今回も折り合いがポイントになると思われたが、特に問題は見られず、そこには大人の風格があった。

むしろ、休み明けだった前走の京都記念で掛かってしまい、今回はメンコを装着してレースに臨んだショウナンマイティの方に工夫の跡が感じられた。

ショウナンマイティは叩き2戦目で、メンコの効果もあったのか、折り合いを欠かずにレースを進めていたが、勝負所でオルフェーヴルに後れを取り、結局、その差を最後まで逆転できなかった。

32秒9という強烈な上がりを使っているのだから、ショウナンマイティも強さを見せたと言える。しかし、オルフェーヴルはその上を行く加速力を見せて、寄せ付けなかった。

オルフェーヴル自身、これだけ頭数が揃って内目の枠に入れたのは、ダービー以来だった。3歳秋以降は、国内での7戦がすべて6~8枠で、フランスでの2戦はともに大外枠。折り合い面を考えれば、1年以上に渡って試練を与えられ続けたとも言える。

もちろん枠順がすべてではないだろうが、前に馬を置きやすい内目の枠の方がレースをしやすいのは明らかだ。仕切り直しとなった今年の初戦は、枠も折り合いもすべてがピタリと合致して、この上ないスタートになった。

半年以上も先のレース最大目標となって語られる馬も、なかなかいるものじゃない。でも、オルフェーヴルはそれだけの存在だし、実際に昨年は、凱旋門賞制覇という偉業をほとんど手中に収めたところでこぼれ落ちるというレースだった。その忘れ物を取りに行くのも、当然のことだろう。

昨年の忘れ物が、今年も同じところに落ちているとは限らない。馬場も異なる可能性があるし、何より出走メンバーが変わる。強い3歳馬が登場するのが常だし、夏から秋にかけて急激に力を付けた馬が現れるのもよくあることだ。簡単ではないことは間違いない。

それでも、オルフェーヴル自身も経験を積み、成長をしている。今年の鞍上はまだ分からないが、池添騎手は来週からフランスに渡り、現地で腕を磨くことになる。すべてが噛み合った時、日本馬初の、いや、欧州馬以外では初となる快挙を成し遂げることになるだろう。

我々にできることは……何かあるのだろうか?

いや、もちろん、当事者ではない限り、応援することしかできないのだが、私は昨年、オルフェーヴルが直線で抜け出した時、「楽勝じゃん」と思ってしまった。そこにが生まれたと思っているので、今年こそは最後まで気を抜かずに応援したい。凱旋門賞は、先頭でゴールを駆け抜けるまでが凱旋門賞だ!