皐月賞レコードと中2週。ダービーの壁となるのは?
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
第80回日本ダービーへ向けて、
役者が揃った。そう思わせるゴール前だった。
最後方を追走していた
キズナは、3コーナーではほぼ最後方。そこから徐々に仕掛けたものの、直線入口でもまだ後方。それでも、直線に向いてから鞍上の
武豊騎手がゴーサインを出すと一気に加速して、最後は余裕を持って交わし去った。
ゴール前では手綱を持ったままだったので、もしかして追わずに差し切ったのか?とも思ったが、映像を見返すと、直線半ばで何度かムチを入れられている。ただ、
正味3~4発で、まさにゴーサインといった感じ。1馬身半差だったが、その着差以上の
快勝だった。
キズナの強さを疑う人は、もはやいないだろう。
ラジオNIKKEI杯2歳Sと
弥生賞では
エピファネイアや
コディーノに先着を許しているが、それは
阪神&中山の内回りコースでのもの。
ラジオNIKKEI杯2歳Sは過去最多体重(492kg)だったし、
弥生賞では直線で前が詰まる面もあった。
直線距離の長いコースでは4戦4勝で、ここ2戦の内容を見ても、
広いコースでの切れ味勝負になった方が良いのは明らかだろう。
皐月賞馬ロゴタイプは重賞3連勝中だが、その3戦はすべて
中山。
皐月賞②着の
エピファネイアは、重賞勝利が
ラジオNIKKEI杯2歳S(阪神芝2000m)だけ。
皐月賞③着の
コディーノは東京芝1800mの
東スポ杯2歳Sを快勝しているが、
芝2000mとなった近2走で着順を落としている。
こうしてみると、今年の3歳牡馬で、
芝2000m以上で勝ち鞍があり、なおかつ
直線距離の長い芝重賞を制した馬というのはあまりいないことが分かる。該当馬は2頭だけ。
青葉賞勝ち馬の
ヒラボクディープと
キズナだ。
キズナはこれで
毎日杯→
京都新聞杯と重賞連勝になったが、90年以降の
ダービーで、前走が
皐月賞以外で重賞を連勝してきた馬は4頭だけだ。01年
クロフネ(毎日杯→NHKマイルC)、04年
キングカメハメハ(毎日杯→NHKマイルC)、06年
アドマイヤメイン(毎日杯→青葉賞)、08年
ディープスカイ(毎日杯→NHKマイルC)だ。
クロフネは⑤着に敗れたが、
アドマイヤメインは②着、
キングカメハメハと
ディープスカイは
ダービーも制覇している。
キズナへの期待が高まるのも当然だろう。
キズナが
弥生賞で差し届かなかった時は、
ツイていないと感じたものだ。その実力からして、
若葉Sや
毎日杯に出走すれば
皐月賞への出走が叶うだろう。ただ、そこで1戦することで、他馬より順調さで劣る。それが
皐月賞本番で響いてしまうだろうと感じたからだ。
ところが、どうだ。
毎日杯に出走し、そこを快勝した
キズナの陣営は、
皐月賞をきっぱりとパスして、
照準をダービーに定めた。これは英断だったと思う。それが実を結ぼうとしている。
確かに、
毎日杯から
ダービーに直行する手もあったのだろう。
京都新聞杯から
ダービーに向かうとなれば、
中2週での参戦になる(
毎日杯から
ダービーへは中8週)。疲労の回復という面で考えれば、この出走間隔は気になるのも事実だ。
しかし、今回の
京都新聞杯で賞金を加算しなくても
ダービー出走が叶う
キズナにとって、
疲労を最小限に抑えるレースをするのは明らかだった。
ダービーを見据えた上での仕上げだったのだろうし、
武豊騎手も、そんなことは百も承知の上での騎乗だったはずだ。
皐月賞から
ダービーへは中5週となり、
青葉賞組や
京都新聞杯組に比べれば疲労回復に取れる時間は多い。しかし、
今年の皐月賞が楽ではなかったのも、また事実だろう。
1000m通過が58秒0で、
皐月賞レコードの
1分58秒0というタイムが刻まれた。例年の
皐月賞組に比べて、疲れが残っている可能性も否定できないはずだ。
皐月賞が
1分58秒台で決着したことは、過去に3度あり(02年、04年、09年)、そこで掲示板に載った馬の
ダービーでの成績は
[1.0.0.11]だ。③着以内に入ったのは、
皐月賞③着→
NHKマイルC③着という過程で
ダービーに挑んだ
タニノギムレット(02年)しかいない。
タニノギムレットほどの
使われての良化を、今年の
皐月賞組は見せられるだろうか。
ダービーまで
残り3週間。ここから本番までに、
どれだけ状態を上げられるかが勝敗を分けるカギとなってきそうだ。