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「嬉しい誤算」によって選択肢が増えたはず
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也


鳴尾記念の当日は阪神1Rから馬券を買い始めたが、PATで投票したら通信エラーと表示されたので、同じ買い目を再度投票してみた。で、投票履歴を調べたら、なんと同じ買い目が2回投票されたことになっているではありませんか。1回目は通信エラーが出たけど、投票自体は正常に行われていたというわけである。

「当たったら2倍だからいいか」と前向きさを保ちつつ、「外したらショックは2倍。いや、一発目だけに幸先が良くないし、懐事情と精神的ダメージを合算するとショックは4倍くらいか」というマイナス思考もどこかに抱きつつという心持ち。結果はというと、軸にしたマリナーズコンパスが⑨着に敗れて不的中。薄々感じていたが、こういう時は往々にして結果は良くない、というのは自分の話。

逆に、「嬉しい誤算」だったのは鳴尾記念トウケイヘイローだろう。

安田記念は除外となり、鳴尾記念に進路を切り替えた格好だが、1600mまでしか出走経験のなかったトウケイヘイローにとって、2000mはまさに未知の領域だった。しかも前走、芝1400mの京王杯SCで33秒9(3F通過)、45秒7(4F通過)、57秒1(5F通過)と速いペースで逃げた直後の3F延長。折り合いがポイントの馬でもある。

ゴールドヘイロー産駒には京成杯③着をはじめ、芝中距離で活躍したモエレビクトリーがいて、母系はミルジョージ×ノーザンテースト、近親にはローゼンカバリータヤスメドウといった長距離砲もいるから、血統的には2000mをこなせる下地はありそうだったが、正直、2000mに替わって強気になれる材料は乏しかったように思う。

2走前に重賞(ダービー卿CT)を勝っていて、鞍上はダービー5勝ジョッキーの武豊騎手となれば、人気になりそうなものだが、それでも6番人気に甘んじたのはやはり距離不安があったからではないだろうか。

そんなトウケイヘイローを2000mでも持たせたのは、武豊騎手の手腕が大きかったように思う。「まったく折り合える自信がなかったんですけど、折り合えましたね(笑)」(武豊騎手)というのはご愛嬌。

馬の気分を損ねないようにフワッと乗り、「向正面で抑え切れなかったので、ケンカしても良くないと思って行かせました」というレース後のインタビュー通り、位置取りに拘らず、馬の気持ちを優先させて向正面でハナに立った。

1000m通過は60秒4。トウケイヘイローのキャリアで、1000m通過が60秒以上だったのは2歳時の新潟2歳Sのみで、その時は⑦着に敗れている。だが、鳴尾記念トウケイヘイローは違った。

3コーナー過ぎでは後続を引きつけ、4コーナー手前から後続との差を広げにかかる。後続の騎手の手が激しく動く中、トウケイヘイロー武豊騎手の手は動かない。直線に入り、追い出されたトウケイヘイローの脚色は鈍るどころか軽快。混戦の②着争いを尻目に、セーフティリードを保ったまま、重賞2勝目のゴールに飛び込んだ。

もちろん、距離の壁は騎手の腕だけで乗り越えられるものではないし、今回の勝利にはトウケイヘイロー資質があってこそのものだと思うが、武豊騎手がインタビューで「新しい面が出たと思うので、これからが楽しみですね」とも話していた通り、これで選択肢が増えたことは間違いないだろう。

一方、重賞連勝の期待を集めた1番人気パッションダンスは、3戦3勝と得意にしていた阪神芝2000mだったが直線で弾け切れず⑥着に敗れた。重賞では、1000m通過が60秒以上だと⑥⑤④⑥着、58秒0だった新潟大賞典①着なので、厳しい流れで真価を発揮するタイプなのかもしれない。ただ、今回も0秒3差で着順ほどは負けていない。

エクスペディションは直線で馬群を捌くのに苦労していたが、7番人気で②着に激走。これで5~8月は[5.4.0.1]となった。6勝している平坦コースがベターなのだろうが、暖かい時期なら坂のあるコースでも走れるということだろう。小倉記念連覇に向けて好発進と言えそうだ。