少々のハンデ差で、G1馬を軽視するべからず!?
文/編集部(T)、写真/森鷹史
かつて、別定戦だった頃の
マーメイドSは、
エアグルーヴ、アドマイヤグルーヴ、ダイワエルシエーロ、エリモエクセルなど、
G1勝ち馬がその強さを発揮して勝ち切るレースだった。
それが、ハンデ重賞に生まれ変わった06年(06年は京都開催)以降、一気に
“荒れる重賞”へと早変わり。昨年1番人気の
グルヴェイグが勝つまで、
1番人気馬は6連敗、7年すべてで6番人気以下の馬が馬券に絡んでいた。
そして今年。マイペースで逃げた
アグネスワルツが粘る中、ゴール前でグイッと前に出たのが11年の
桜花賞馬マルセリーナ。後方から差し込んだ1番人気
アロマティコ(③着)の追撃も寄せ付けず、
桜花賞以来の重賞2勝目を飾った。
マルセリーナは今回のメンバーで唯一のG1馬だったが、近走が不振だったために
7番人気にとどまっていた。
“人気薄のG1馬”という、新旧の
マーメイドSの傾向をミックスしたような感じの馬だ。今回の勝利は必然だったのかもしれない(笑)。
自分はレース後の感想が
「詰めが甘いなあ…」だったが、それは自分のことで、1番人気③着だった
アロマティコのことではない。むしろ
前半1000m通過が60秒6というペースで、逃げた
アグネスワルツが②着に粘る中良く差し込んだほうだろう。
『メインレースの考え方』では、軸候補に
ピュアブリーゼ(⑩着)、
アロマティコ(③着)、
アグネスワルツ(②着)の3頭を挙げていた。
「10番人気のアグネスワルツ(穴ぐさでもありました)を挙げていながら、なんで実績十分のマルセリーナを外しちゃったかなあ…」が、
「詰めが甘い」という感想につながったわけだ。
阪神開催に戻った07年以降の
マーメイドSは、父ヘイロー系、特に
サンデー系の強いレース。今年も父サンデー系がワンツーを果たしたし、07年以降で馬券に絡んだ21頭のうち、
父ヘイロー系の馬は16頭(うちサンデー系が15頭)、
7年すべてで2頭が馬券に絡んでいる。
特に08~12年で馬券に絡んだ父サンデー系の馬の父を見ると、
アグネスタキオンと
マンハッタンカフェが3頭ずつ、
ディープインパクト1頭、
スペシャルウィーク1頭と、
牡馬クラシックを勝った馬の産駒が好成績を残していた。
そこで、今回のメンバー。父がサンデー系の牡馬クラシック勝ち馬だったのは、
ディープインパクト産駒のピクシープリンセス(④着)、マルセリーナのみだった。
『メインレースの考え方』で書いたように、この2頭の中ではハンデ54kgの
ピクシープリンセスを上位に見て、
マルセリーナはトップハンデの56kgということで軽視してしまった。
実際、過去6年の
マーメイドSで、
ハンデ55.5kg以上だった馬は[0.1.1.12]と決して成績は良くなかった。
ところが、だ。この馬券圏内に入った2頭は、11年②着の
ブロードストリート(過去に
ローズS①着、
秋華賞②着)、09年③着の
リトルアマポーラ(過去に
エリザベス女王杯①着)だった。
要は、
「G1での連対実績があれば、ハンデを跳ね返せるかも…」と考えるべきだったのだろう。
マルセリーナが人間の言葉を解したら、
『G1馬のアタシを少々のハンデ差で評価を下げるなんて、バカにするんじゃないわよ』と思われていたかもしれない?
今後も
ヴィクトリアマイルをはじめ、
マーメイドSに牝馬G1で好走実績がある馬が出走してくるケースがあるはずなので、
「ハンデだけに惑わされない」ことを心がけたいものだ。
しかし、一昨年の
マーメイドSの
『レースインプレッション』を見ると、
「近年の先行有利の傾向からガラリ一変で差し決着」、昨年は
「1番人気にとって鬼門の歴史に終止符」とある。コロコロ傾向を変えるレースだけに、
「来年はG1実績馬が総崩れ」となりそうで怖くもある(笑)。