過去の実績に萎縮していたのは人間だけだったのかも!?
文/編集部(T)、写真/川井博
この日の未明、
サッカー・コンフェデレーションズカップがブラジルで開幕。
日本代表は開催国のブラジル相手に
0対3で敗れた。
試合を見ていて、内容は確かに実力差を感じるものだった。実際に試合に臨んだ選手たちからも、
「レベルが違った」「大きな差があった」といったコメントが並んでいた。
正直なところ、見ているだけの自分でさえ
「さすがにブラジルはレベルが違うよなあ…」と感じて、どことなく萎縮してしまっていた。そのようなメンタル面のケアをするのも、サッカーの監督の仕事といわれるが、実際にプレーする選手たちが
“飲まれてしまった”としても仕方がないんじゃないか、とさえ感じる。
以前競馬中継を見ていて、パドック解説で
「馬でもレベル差や威圧感を感じて萎縮してしまう場合がある」というコメントを聞いたことがある。
人間ならメンタルトレーニングなどである程度克服することができるかもしれないが、馬の場合はそのようなケアはなかなか難しい。これも、強い馬が強い理由のひとつなのかもしれない。
前置きが長くなったが、今週から約3ヶ月にわたる、長い長い函館開催が開幕。そのオープニングに、今年は
開幕週での開催となった
函館スプリントSが行われた。
「今年は」ということは、昨年までは違ったということ。昨年は2週目、それ以前は3週目での開催だった。
その昨年の勝ち馬が
ドリームバレンチノ。今や
“世界の”、
“2階級王者”といったふたつ名がつくまでの存在になった
ロードカナロアを下して重賞初制覇を飾っていた。前走の
高松宮記念でも
ロードカナロアの②着に入り、
今回は実績的には抜けた存在と考えられていた。
単勝オッズの面でも、前日は1倍台で推移し、最終的には2.1倍となったものの、
抜けた1番人気となっていた。
ただ、昨年の
ドリームバレンチノは斤量56kg。そして
今年が59kg。今年、馬券を考える上で最大のポイントが、
「この斤量でどうなんだ?」ということだった。
結果、
ドリームバレンチノは中団から3~4コーナーで外を通って進出したが、直線での伸びを欠いて⑦着(同着)に敗れた。
前半600m通過タイムの34秒1は、
過去10回の函館スプリントSで2番目(タイ)に遅いタイムだった。
一般的には斤量が重いとトップスピードに乗るのが遅くなるため、ペースが遅く、瞬発力勝負となると不利になるとされる。昨年は前半600m通過が34秒3とさらに遅かったが、そこが
昨年との斤量差から生じた瞬発力の違い、とみることもできそうだ。
一方、レースを制したのは2番手からレースを進めた
パドトロワ。昨年の
スプリンターズS以降⑧⑮⑭着と崩れていたが、ここで
見事な復活。ここ2年は
函館スプリントSで敗れ、その次走で勝つ…というリズムだったが、今年はひと足早い復活となった。
もちろん、前述したように
開幕週なので、
ドリームバレンチノより前でレースを進められたことも勝因だろう。
ただ、考えてみれば、
パドトロワも11年
スプリンターズSで
カレンチャンの②着に好走した実績がある。このレース前までの
重賞2勝というのも
ドリームバレンチノと同じ。
正直なところ、自分は馬券を考える上でも
「さすがにドリームバレンチノは外せないよなあ」という印象だった。しかし、もしかしたらそう思っていたのは人間だけで、
パドトロワの方は
全く萎縮するところなくレースに臨めたのも勝因のひとつだったのかもしれない?
この
函館スプリントSは、今年の
サマースプリントシリーズの開幕戦となる。昨年チャンピオンに輝いた
パドトロワにとって、連覇に向けて最高のスタートとなった。
一方の
ドリームバレンチノも今回が
約3ヶ月の休み明けだったが、過去の
休み明け2戦目が芝1200mだと②①③②着と馬券圏外がなく、次走の巻き返しは必至だろう。
現在のスプリント路線は
ロードカナロアという
絶対王者がいるが、
“鬼の居ぬ間”のスプリントシリーズは、実力馬が集まって面白い展開になりそう。今後はどうなるか、楽しみになる結果だったといえそうだ。