スリープレスナイト以来の好走を期待したくなる復活劇だった
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
11~12月に別定G2戦として行われていた
CBC賞の勝ち馬には、のちにスプリントG1を制した
マサラッキ(98年)、
トロットスター(00年)、
サニングデール(02年)がいて、その他にも海外の短距離G1で2勝を挙げた
アグネスワールド(99年)、
96年スプリンターズSで
フラワーパークとハナ差の大接戦を演じた
エイシンワシントン(96年)など、スプリント戦線で名を馳せた馬がゴロゴロいる。
一方、ハンデG3戦となった06年以降だと、
CBC賞を制した後にG1で連対したのは
スリープレスナイト(08年)しかいない。
サマースプリントシリーズが創設されたのは06年からだが、その中に組み込まれたのは同シリーズがスタートしてから7年経った昨年からで、条件変更後はレースとしても
いまひとつ存在感を示せていないのが現状である。
そんな
CBC賞。同年の
高松宮記念に出走していた馬が3連勝中ということで、その傾向通りなら、今年の
高松宮記念に出走していた
ハクサンムーン(③着)、
マジンプロスパー(⑥着)、
アイラブリリ(⑪着)が優勝候補と言えたが、レースはというと、
マジンプロスパーが
ハクサンムーンをゴール寸前で交わし、
レコード(1分8秒0)のおまけつきで連覇を果たした。
前日最終オッズでは、準OP馬の
バーバラが1番人気に推されていたが、最終的には
マジンプロスパーが1番人気、
ハクサンムーンが2番人気。芝G1で掲示板に載ったことがあり、なおかつ、新装・中京芝1200m重賞で③着以内のある2頭が、58kg、57.5kgという重いハンデを克服して優勝争いする形となった。
③着にはメンバー中最速の上がり32秒9を使って大外から鋭伸した3番人気
サドンストームが入ったが、②着ハクサンムーンとは2馬身半もの差があり、開幕週で先行有利なペース(前半3F34秒2)だったことを加味しても、
ここではマジンプロスパーとハクサンムーンの力が一枚上だったということだろう。
ハクサンムーンは
マジンプロスパーに最後の最後で交わされたものの、前後半3Fは
34秒2-33秒8(1分8秒0)で、
34秒3-34秒0(1分8秒3)だった
高松宮記念(③着)と比べると、前半3Fは
0秒1速く逃げながら、後半3Fは
0秒2速い上がりでまとめているのだから内容は良い。
さらに言えば、
『メインレースの考え方』で指摘されていた通り、
ハクサンムーンは
中4週以上が[0.0.0.6]、
馬券圏内の次走が[0.0.0.5]だったので、これらのデータを覆して3ヵ月ぶりで連続好走したあたり、
ひと皮剥けた可能性もありそう。今回は馬体重が16kg増(480kg)だったので、ひと叩きされた上積みも見込めそうで、
サマースプリントシリーズ制覇に向けて視界良好ではないだろうか。
マジンプロスパーは昨年の
CBC賞以来の勝利で、2年連続で
レコード勝ちでもあったが、
3年連続で5~7月に勝ち星を挙げていて、
中央での7勝中5勝は同期間でもある。大幅増だった
ハクサンムーンとは対照的に、今回は8kg減(504kg)だったが、
いまの時期は馬体が絞りやすく、体調が上向くタイプなのだろう。
マジンプロスパーはこれまでG1で3戦して馬券圏外で(
高松宮記念で12年
⑤着、13年
⑥着。
12年スプリンターズSで
⑫着)、5~7月に行われるスプリントG1がJRAにあれば……と言いたくなるところだが、それは現実的にムリな話。ただ、父はあの
アドマイヤコジーンである。
アドマイヤコジーンは
朝日杯3歳Sを制したが、その後、骨折などで二度の長期休養を余儀なくされた。だが、6歳1月に復帰して
東京新聞杯で
朝日杯3歳S以来、約3年ぶりの勝利を挙げると、
阪急杯で連勝を飾り、次走の
高松宮記念で②着。続く
安田記念でG1・2勝目を挙げ、同年秋の
スプリンターズSでも②着に好走した。
あの大復活劇は、母父ノーザンテーストの成長力が後押しした印象もあったが、その血が流れている
マジンプロスパーも例外ではないはず。6歳を迎えてますます盛ん、この秋、
スリープレスナイト以来のG1連対圏内突入を期待したくなる復活劇だった。
なお、
マジンプロスパーに騎乗していた
福永騎手はこの
CBC賞で、今年のJRA重賞初勝利となった(昨年12月の
ラジオNIKKEI杯2歳S以来)。これでJRAで
17年連続で重賞勝利、JRA通算の重賞勝利数も
「98」となり、大台が目前に迫ってきた。この勝利をきっかけに勢いづきそうだし、人馬ともに2013年後半戦で目が離せない存在となりそうだ。