“荒れる”以外の傾向がガラリと変わった今年の七夕賞
文/編集部(T)
昨年までの
七夕賞は福島開催の最終週で行われていたが、
今年から2週目の開催に移った。
内を通って突き抜けた
ケイアイチョウサンが制した先週の
ラジオNIKKEI賞の結果で薄々感じてはいたが、今年の
七夕賞の結果を見ると、
開催時期移動によっていろいろな面が劇的に変化したことが分かる。
「開催時期や条件が少し変化するだけで、それまで傾向が全く通用しなくなる」というのは、個人的に何度も反省してきたことではある。そして、今回も同じ感想を抱く結果になった(苦笑)。
変化した部分として、まずは
タイムが挙がる。今年のレースを制した
マイネルラクリマが叩き出したタイムは
1分58秒9。これは90年以降、福島で開催された
七夕賞では最速。これまでの最速タイムが02年の
イーグルカフェ、98年の
オフサイドトラップが記録した1分59秒2だから、実に
0秒3も更新したことになる。
馬場状態が良好だと、当然ながらタイムは出る。マイル重賞で実績のある2頭(
マイネルラクリマは
京都金杯勝ち、②着
トレイルブレイザーは
アロヨセコマイル②着)、そしてメンバー中芝2000mの持ち時計が1位だった
タガノエルシコ(11年
大原Sで記録した1分57秒0)が③着に好走したのは、偶然ではなさそうだ。
また、90年以降に福島で開催された
七夕賞は、すべて
メンバー中上がり1~2位の馬が連対していた。要は馬場が荒れることで前に行った馬が潰れ、差し馬が台頭するケースが多かったのだ。
今年はどうだったか。レース結果と上がりタイムの相関を見ると、以下のようになる(カッコ内は順位)。
①着
マイネルラクリマ…35秒7(4位タイ)
②着
トレイルブレイザー…35秒9(8位)
③着
タガノエルシコ…35秒7(4位タイ)
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⑤着
ダコール…35秒5(2位)
⑥着
ファタモルガーナ…35秒3(1位)
⑫着
サトノパンサー…35秒6(3位)
一目瞭然で、
今年は速い上がりを要する流れにならなかった。むしろ、直線で最内を突いた
タガノエルシコが③着に好走したことからも分かるように、
外を通って差せる馬場ではなかったということなのだろう。
また、父スターリングローズの
アスカクリチャンが制した12年、父アフリートの
ドモナラズが制した10年の
七夕賞に関する
「レースインプレッション」を読み返すと、面白いことにいずれも
「ダート血統」に言及している。
それが今年は、勝ったのはJRA重賞14勝をすべて芝で挙げている父チーフベアハートの
マイネルラクリマをはじめ、②着
トレイルブレイザーの父はゼンノロブロイ、③着
タガノエルシコの父マヤノトップガンも、JRA重賞16勝のうち13勝を芝で挙げている。基本的には
芝向きの血統を持つ馬が好成績を残したことが分かる。
一方、今年の
七夕賞で、ただひとつ変わらなかった傾向といえば、
“荒れる”ということだけか。今回、
マイネルラクリマは1番人気だったが、
トレイルブレイザーは7番人気、
タガノエルシコは14番人気だった。3連単31万馬券は、3連単導入後の
七夕賞で3番目の高額配当となる。
開催時期の移動による馬場状態の違いがここまで変化をもたらすというのは少し驚くところもあるが、もし来年以降も
七夕賞の開催時期が変わらないとすれば、来年以降の指標にはなるだろう。
来年は12年以前の
七夕賞を頭から捨て去って、今年の結果をバイブルとして予想に挑むのがいいかもしれない?