ハイレベルの混戦で重賞制覇、いよいよG1も視野に
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
「七夕賞」と聞くと、もう反射的に
「難しい」とか
「荒れる」とか思ってしまうもの。しかし
「プロキオンS」と聞くと……、
「これといった印象はないよ」という方もいるかもしれないが、
七夕賞に比べれば難易度は低そうなイメージだ。
もっとも、昨年は単勝万馬券の
トシキャンディの逃げ切り勝ち。そして一昨年はまだ重賞実績のなかった
シルクフォーチュンが9番人気で優勝と、レースそのものはここ2年荒れてはいる。ただ、過去10年で1番人気の単勝オッズが4.0倍を超えたのは1回だけ、そしてその
1番人気の複勝率は100%。少なくとも、予想の段階でお手上げというようなレースではなかった。
しかし、今年はなんとまあ難しかったことか。
七夕賞も1~3番人気が4.0~4.9倍と割れてはいたが、
プロキオンSはそれどころではなく、
単勝5.9~8.9倍に7頭が収まる大混戦である。
これだけ僅差になると、似たような単勝オッズでも、人気順ではちょっと下になる馬が馬券に絡んできそうなもの。しかし、終わってみれば上位3頭は5番人気以内。そして1番人気も
「複勝率100%」のデータ通りに③着は確保しているのだから、
皆さんよくわかってらっしゃる、というほかはない。
そんな大混戦を制したのは、2番人気の
アドマイヤロイヤルだった。オッズの上では5.9倍で1番人気
ダノンカモンと横並び。4番人気で②着だった昨年に比べれば、かなりメンバーは揃ったが、前走の
欅Sでオープン・重賞
12連敗に終止符を打ち、今度は重賞初制覇のかかる一戦となっていた。
昨年のこのレースは
トシキャンディの逃げで、前半3ハロンは34秒0。中団を追走した
アドマイヤロイヤルも、直線馬場の中央からじわじわと脚を伸ばしたものの、4分の3馬身及ばない②着だった。
そして今年、同じく
トシキャンディが刻んだ流れは前半3ハロン34秒1で、昨年とほとんど変わらぬペース。そして
アドマイヤロイヤルの中団追走も、枠順とコース取りの違いこそあれど、ほぼ同じような展開だった。
しかし、大きく違ったのが直線の伸び脚だ。さきほどは
「じわじわと」と書いた昨年だったが、悪く言えば
「じりじりと」。先頭との差こそ詰めたものの、
もう50mあれば前を交わすと同時に後ろにも差されていたかもしれない脚色だった。
しかし今年は、内の
セイクリムズン、外の
ダノンカモンと一緒に鋭く伸び、2頭をきっちり押さえて
レコードタイムで重賞初制覇。単純に上がり3ハロンのタイムだけ見ても、昨年は
36秒0、今年は
35秒2。そして、
もう50m100mとあっても後ろには交わさせない、そんな力強さも同時に感じさせる成長した姿を見せてくれた。
これで
アドマイヤロイヤルは、前々走まで[5.11.4.7]という惜敗の目立つ成績からの2連勝。血統的には、皆さんご存じ
ラインクラフトの半弟だが、牡馬の活躍馬ではおじに
アドマイヤマックスの名前も見られる。
全成績[4.2.5.12]に④着も5回あり「4勝・②~④着12回」。そんな
アドマイヤマックスは
「もうG1は勝てないのかなあ」という雰囲気も漂いはじめた6歳になって、
高松宮記念でG1初制覇を飾った馬だった。
どうやらそのおい・
アドマイヤロイヤルも、同じ6歳を迎えて本格化気配。単なる混戦ではなく、
ハイレベルの混戦で重賞を制し、いよいよG1も視野に入ってきた印象だ。
昨秋、G1初挑戦の
南部杯では勝ち切れない流れのままに1秒6差の③着敗退。しかし今度は、
勝ちグセをつけて秋をにらむ形になる。昨年の雪辱を期す1600mの
南部杯、そして今年は金沢競馬場で行われる
JBCスプリントが今回と同じ1400mの距離。勢いづいた
アドマイヤロイヤルが、さらなる飛躍を遂げる舞台は整っている。