“中京記念の鬼”は夏のマイル王になれるか
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
ゴールした瞬間、実況を担当していたラジオNIKKEIのアナウンサーが
「中京記念史上初めての連覇達成です!」と伝えていた。マイル重賞として生まれ変わった
中京記念は、まさに
フラガラッハのためにあると言えるようだ。
今年で61回の歴史を誇る
中京記念で、優勝を2度したことがある馬は、
フラガラッハで2頭目になる。今から40年近く前、芝2000m重賞の時代に
ナオキが2度制している。1973年と1975年に勝っていて、1974年は出走しなかった。そのため、今回の
フラガラッハが
「中京記念史上初の連覇」となったわけだ。
ナオキが“中京記念の鬼”のような活躍を見せていた頃、馬場がどうだったのかはよく分からないが、現在の
中京記念は、確かに
フラガラッハにお誂え向きのコンディションになっていた。
今夏の中京芝は、ペースがかなり遅くても
外差しが利き、開催が進んで馬場の内側が荒れてくると、さらに
外差し天国になっていった。確たる先行馬が見つからず、昨年以上のスローペースになった今年でさえも、終始外を回った
フラガラッハが差し切るのだから、ちょっとやるせないジョッキーもいたのではないかと想像する。
フラガラッハの連覇は、どちらも鞍上が
高倉騎手で、ハンデも
57kgで同じ。
単勝5番人気というのも一緒だった。しかし、この
5番人気というのは、今年に限っては少々不思議だった。
昨年は
米子S(OP)を制していて、5番人気という評価も納得できた。だが、それ以後は6戦して掲示板内がなく、というか、ひと桁着順も3走前の
阪急杯(⑧着)だけで、速い上がりを使うものの差し届かないレースが続いていた。
前走(
京王杯SC)が14番人気で⑮着、2走前のOP特別(
六甲S)でも5番人気で⑩着に敗れている。そんな馬が重賞で
5番人気に推されるのだから、いかに今夏の
中京芝の特殊性を見抜いていた人が多かったか、ということだろう。
果たして、この傾向は来年も続くのだろうか。今夏の結果を受けて、年末に予定されている
第4回中京開催では、馬場が少しいじられるのではないか?という気もしているが……その動向はチェックしておきたい。
フラガラッハは、来年に
「史上初の中京記念3勝」が期待されるわけだが、今年はその前に
やるべきことがある。
サマーマイルシリーズの初代王者への挑戦だ。
昨年に創設された
サマーマイルシリーズは、
中京記念、
関屋記念、
京成杯AHの3レースでポイントを競い、優勝馬を決定するもの。初年度の昨年は、3レースの優勝馬が他の2レースに出走せず、
『優勝該当馬なし』という寂しい結果に終わった。
とりわけ、シリーズ第1戦の
中京記念を制した
フラガラッハが、早くからその後の2レースをパスすることを表明したため、少なからずブーイングを浴びることになったわけだが、今年は
「関屋記念を考えています」(松永幹調教師)とのコメントが発表された。これは非常に嬉しいことだ。
サマーマイルシリーズを連戦すれば、少なからず
秋のG1に影響が出るのだろう。その一方で、前走の重賞で好走していない馬ばかりの重賞となれば、興味が殺がれるのは間違いない。
レースを見る側としては、いくら
夏の重賞とはいえ、メンバーが揃うに越したことはなく、
重賞ウイナーが参戦してくれた方が確実に盛り上がる。もし
フラガラッハが
関屋記念に参戦となれば、やはりレースの面白味も増すだろう。
同じ左回りで、直線距離が長いマイル重賞とはいえ、
中京記念と
関屋記念では適性が異なる印象がある。
中京記念は坂があって
パワーも求められるが、平坦コースでの
関屋記念は極限の
スピード勝負になりやすく、高速決着が多い。
フラガラッハは芝で③着以内に入ったのがすべて直線に
坂のあるコースで、平坦コースは京都で2戦して
ふた桁着順に敗れている(
スワンS⑩着、
マイルCS⑰着)。その殻を打ち破り、
“中京記念の鬼”は夏のマイル王になれるか。今年の
関屋記念は、例年以上に熱い闘いになりそうである。