この一変を契機に一族を盛り上げるような活躍を期待したい
文/編集部(W)、写真/川井博
史上初めて函館で行われることとなった今年の
クイーンSは、8頭立てという少頭数で争われた。昔、
大学の語学クラス(40人以上)で久々に会おうと飲み会を催したら
4人しか来なくて、とても寂しかった思い出があるが(笑)、
クイーンSも同じで
「お~い、みんなどこに行っちゃったんだ~!?」と叫びたくなる状況だった。
札幌芝1800mで行われるようになった00年以降の
クイーンSを振り返ってみると、古馬の勝ち馬には
トゥザヴィクトリー(00年)、
ヤマカツスズラン(01年)といったG1馬がいて、3歳馬が強さを見せている最近では、
アヴェンチュラ(11年)が
秋華賞制覇を果たしている。
その他にも、
アサヒライジング(07年)、
オースミハルカ(03&04年)、
デアリングハート(06年)、
アイムユアーズ(12年)はG1で連対実績があり、こういった顔ぶれを眺めていると、
牝馬限定重賞の中でも格は高め。
なので、
レディアルバローザを姉に持つ
キャトルフィーユが10倍を切るオッズ(7.8倍)の4番人気に支持されたものの、
アイムユアーズ、
マルセリーナ、
オールザットジャズが1~3番人気に推されたことは、実績を考えれば
妥当な評価と思えた。
G1で③着以内があるのは
マルセリーナと
アイムユアーズで、
オールザットジャズは⑤着ならある。また、出走メンバーのうち、
重賞で2勝以上挙げているのもこの3頭だったから。
一時は
アイムユアーズ、
オールザットジャズ、
マルセリーナが
3.2~3.3倍の間に収まる場面もあり、3頭のうちどれが勝つのか、多くの人が頭を悩ましているのだろうと想像したが、昨年の勝ち馬という点が評価されたのか、最終的には
アイムユアーズが1番人気の座に就いた。
結果は舞台が札幌だろうが函館だろうが関係なしといった感じで、
アイムユアーズが早め先頭から押し切って見事に連覇を成し遂げた。前週に行われた
中京記念では
フラガラッハが連覇を果たし、その間の成績は
⑭⑰⑪⑧⑩⑮着で馬券圏内はおろか掲示板にすら載れてもいなかったが、
アイムユアーズも同じで、
クイーンSの間は
⑥⑩⑩⑧着だった。
アイムユアーズはこれで
函館・札幌芝で[3.1.1.0]と馬券圏外がなく、
重賞4勝はすべて休み明けということで、終わってみれば
得意条件で変わり身を見せた形だ。夏場の重賞は比較的リピート好走が目立つとはいえ、2週連続でここまで
鮮やかな一変を見せられると、来週以降の重賞でも意識せざるを得なくなってくる。
一変と言えば、シンガリ人気(8番人気)で②着に食い込んだ
スピードリッパーも
⑧⑭⑩⑪⑫⑧⑬着とこれまた近走で掲示板外続きで、しかも準OPの身だったが、
函館・札幌芝はこれで[1.3.0.0]で連外なし。
「北海道開催では洋芝実績のある馬が侮れない」というのは周知のセオリーだと思うが、この一変ぶりには驚くしかない。1分49秒4と時計を要した決着も幸いしたのだろうか。
逆に、2番人気
マルセリーナは北海道の洋芝が合わなかったのか、直線でインを突くも伸び切れず④着。
オールザットジャズは3番手で流れに乗っていたが、16kg増で480kg(過去最多体重)ということで重め残りだったのか、こちらも直線でもうひとつ弾け切れなかった。
というわけで、デビューした函館の地で復活の狼煙をあげた
アイムユアーズだが、2歳時から活躍しているせいか、どことなくベテランの風格を感じさせるが、まだまだ若い
ダイナカール一族の4歳馬だ。
エアグルーヴは4歳時に
天皇賞・秋(97年)を制し、
アドマイヤグルーヴは4歳時に
エリザベス女王杯(04年)で連覇達成。
エガオヲミセテは4歳時にG1初好走(
99年エリザベス女王杯③着)を果たした。
ルーラーシップは5歳時に
クイーンエリザベス2世CでのG1初制覇を含めて
[2.1.4.0]という、素晴らしい成績を残して引退した。
オレハマッテルゼは6歳時にG1初制覇(
06年高松宮記念)を飾っている。古馬になって本格化するタイプが目立つ
ダイナカール一族だけに、
アイムユアーズは今回の勝利をきっかけに再び浮上する可能性はあるだろう。
エアグルーヴが今年4月にこの世を去るという悲しいニュースが飛び込んできたが、種牡馬入りした
ルーラーシップともども、
アイムユアーズには
一族を盛り上げるような活躍を期待したい。