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去勢の効果がここまで顕著に表れた馬も珍しい!?
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


それまで凡走を続けていた馬が、突然覚醒したかのように好成績を続けることはしばしばある。しかし、その転機が何なのか分かりづらい、また分からないこともまた多い。

しかし、今回の小倉記念を制したメイショウナルトについては、推測することは容易だろう。“去勢”だ。

メイショウナルト“牡馬時代”の成績を振り返ると、2歳時に野路菊Sウインバリアシオンの②着、デイリー杯2歳Sレーヴディソールの③着に好走した実績があった。しかし、11年夏に1000万に昇級してからは頭打ちの成績となっていた。

それが、12年4月以降休養に入り、セン馬となってから大変身。1年1ヶ月の休み明けで、初の直線競馬となった飛竜特別は⑮着に敗れたが、一気に距離延長された次走の500万(京都芝2200m)以降①①②①着で、一気に重賞の勲章までゲットしてしまった。

これは想像でしかないが、去勢というのは種牡馬となることができなくなる分、関係者にとってはそれなりに決断の必要なことではあるだろう。それにしても、ここまで去勢の効果が出るとは、関係者ですら驚いているかもしれない。

今回の勝ちタイムの1分57秒1は、従来のレコードタイムを0秒1更新。一昨年と昨年の小倉記念で記録された1分57秒3を0秒2上回った。

しかも忘れてはいけないのが、これが稍重の馬場で記録されたタイムということ。調べてみると、8月4日終了時に各競馬場で記録されている芝のレコードタイム(2歳戦を除く)のうち、道悪で記録されたのは中山芝1400mの1分23秒2(稍重)のみだった。

「中山芝1400m?」と思った方、その疑問は正しいです。最後にこのコースでレースが開催されたのは92年12月5日。実に20年以上開催されておらず、このレコードタイムが記録されたのは87年4月11日だった。実質、現在道悪で記録された唯一のレコードタイムと言っても差し支えないだろう。

今年の小倉は全体的に時計が速いので、今後良馬場で開催されたときにこのタイムが更新される可能性はある。しかし、このタイムは今後も記憶に残しておきたい、と個人的には思う。

また、メイショウナルトを導いた武豊騎手の手綱捌きも、言うまでもなく見事なものだった。道中は好位の内をロスなく追走し、3角から内を通って一気に進出。ペースを作っていた同じ“メイショウ”のメイショウサミットを交わして4角で先頭に立ち、そのまま押し切った。

伏線はあった。小倉の芝が稍重に変わって最初のレースとなった9Rの足立山特別(芝2000m)で、勝った川田騎手騎乗のサンライズピークは2番手追走から4角で早めに先頭に立って押し切っている。このレースで、1番人気のアウォーディーに騎乗していた武豊騎手は、中団から進めたが直線で伸び切れなかった。

武豊騎手はレース後に「少し早いかと思いましたが」とコメントしている。しかし、これは想像だが、この足立山特別の結果を踏まえ、直線で前に行けばなかなか止まらないことを計算に入れたのではないだろうか(ちなみに、この日午後の小倉は6、9、11、12Rが芝で開催されているが、すべて4角先頭の馬が押し切っている)。

もちろん、ハンデ53kgも奏功したはず。勝つときはいろいろな要素が絡むもの、ということを再認識させられるレースとなったような気がする。

また、メイショウナルトはこの勝利でサマー2000シリーズのチャンピオン候補に一躍名乗りを上げる形となった。昨年は同じセン馬のトランスワープが同シリーズのチャンピオンに輝いているが、2年連続のセン馬によるチャンピオンとなるだろうか。“夏は牝馬”とはよく聞くが、今後は“夏はセン馬”となっていくかも?