「今年の勝ち馬は一味違う」と言われることになるか?
文/編集部(M)、写真/森鷹史
速くなるのか、ならないのか。今年の
北九州記念は、
ペースの予想が例年以上に難しかった。
1200m重賞になってからの
北九州記念は
ハイペースの連続で、過去7回の前半3Fは32秒1~33秒0。7回中4回では32秒5を切るペースで進み、
差し決着が誘発されてきた。
だから、過去傾向を参考にする人からすれば、
「北九州記念でペースが緩むことなど考えられない」のだろうが、今年は、これに
異論を挟む人がいた。曰く、
「今年は例年よりも馬場が使われていないために差しが利きづらく、出走馬を見ても先行激化にはなりづらそう」と。
果たして、どんなペースになるのか? 戦前はいろいろな展開を想像させられたが、なんのことはない、フタを開けてみれば、
いつも通りのハイペースだった。最内枠から
アイラブリリが逃げて、前半3Fは32秒2。直線半ばで前と後ろがガラリと入れ替わる、例年と同じ
北九州記念だった。
ただ、例年と同じ展開でも、去年と同じ馬が上位に来るとは限らないのが
ハンデ戦の難しさでもある。昨年の覇者
スギノエンデバーは昨年(8枠16番)とほとんど同じ枠(8枠15番)で、同じようなペースだったが、
⑤着止まりに終わった。
昨年優勝時の走破タイムが1分6秒9で、今年は1分7秒0で走っているから、それなりの力は出したと言えるのだろう。しかし、昨年に比べて斤量が2kg増え(55kg→57kg)、
斤量差を突かれるようにして4頭に先着された。
②~③着に入った
ニンジャと
バーバラは、小倉芝1200mでの前走を1分6秒9で勝ち、
軽ハンデであることも手伝って予想以上の人気を集めていた。レース当日の午後には1&2番人気になる時もあったほどで、新聞で印を打つ人たちよりも、実際に馬券を買うファンの方が
見る目があったと言えそうだ。
この2頭を退けて優勝したのが
ツルマルレオンだったが、上位人気馬の中では、同馬がいちばん
推しづらかったのではないかとも思う。というのも、昨年の
北九州記念で
⑩着に敗れていて、ハンデも昨年と同じ55kgだったからだ。
確かに昨年は最内枠で、捌くのに苦労する面も見られたが、その次走で
北九州短距離S(1600万)を制した時が1分7秒3というタイムで、
北九州記念の時(1分7秒4)と0秒1差だった。1年の時を経て、同じ
ハンデ55kgでどこまで時計を短縮できるのか。その根拠を探しづらく感じた人も多かったことだろう。
しかし、競馬は時に
理屈通りには運ばないもので、馬群の外で流れに乗った今年の
ツルマルレオンは、芝1200mの持ち時計を
0秒6も更新して優勝した。馬体重が512kg以上だった時は5戦して最高④着だったが、今回は
6kg増の516kgでも突き抜けた。理屈で考えてはいけなかったんですね…。
芝1200m重賞になってからの
北九州記念勝ち馬は、現役の
スギノエンデバーを含めて、このレース以後に再び
重賞を勝った馬が
1頭しかいない。その1頭は、このレースを
ハンデ56kgで制した
スリープレスナイトで、他の6頭は
北九州記念を優勝した時が
ハンデ55kg以下だった。
今回、55kgで制した
ツルマルレオンはこのジンクスに挑むことになるわけだが、かつての
北九州記念勝ち馬とはちょっとタイプが違うのでは?という気もしている。というのも、
ツルマルレオンは
芝1400mでも2勝を挙げているからだ。
過去の
北九州記念勝ち馬で、芝1400m以上でも勝ち鞍を挙げていたのは
キョウワロアリングだけ。同馬はハンデ52kgで格上挑戦での勝利だったが、
ツルマルレオンは今回がOPでの2勝目になる。
芝1400mでも2勝を挙げているというのは、それだけ
“極軽な馬”ではないことの証左だろう。超高速決着の
北九州記念は、ツルツルの馬場でのスピード比べで、その適性に秀でた馬が優勝してきた印象があるが、
ツルマルレオンにはもう少し
重みも感じる。ハーツクライ×キングマンボ×シルヴァーホークという
本格派の配合でもあるからだろう。
今年の北九州記念勝ち馬は一味違う。そんな印象を秋の重賞戦線でも見せられるか。
ツルマルレオンは阪神でも3勝を挙げていて
坂をこなす力もあるだけに、存在感を示す場面が訪れても不思議ではないと思う。