“イレギュラーだらけ”でも発揮されたトウケイヘイローの強さ
文/編集部(T)、写真/川井博
出走16頭を見ると、今年の
皐月賞馬
ロゴタイプをはじめ、昨年の
エリザベス女王杯勝ち馬
レインボーダリア、
桜花賞馬
マルセリーナ、
天皇賞・秋勝ち馬
トーセンジョーダン、
ヴィクトリアマイル勝ち馬
ホエールキャプチャと、G1馬が5頭。それ以外でも重賞勝ち馬は計13頭を数え、
豪華メンバーと言うにふさわしい好メンバーが集結した。
それだけにレースも混戦模様かと思いきや、人気は
ロゴタイプと、重賞2連勝中だった
トウケイヘイローの2頭に集中する形。これだけのメンバーで抜けた人気を集めるのだから、いかに
この2頭が高い評価を受けていたかがわかる。
しかし、今回の
札幌記念は
“初めてづくし”だった。
函館で開催されることだけでなく、
札幌記念が芝に替わった90年以降、
重馬場で開催されるのも初めて(稍重も96年の1回のみ)。さらに、函館が
Cコースで開催されるのも96年以来17年ぶりだった。
それだけに、
思いもよらない結果になっても……とも思っていたが、結果的にレースは
“一強”だった。
レースが始まって5秒ほどして、競りかけられるところもなくスッと
トウケイヘイローがハナに立ったとき、
「あ、これは決まったか」と思えたほど。その予感通り、
トウケイヘイローは勝負どころから徐々に後続との差を拡げ、最後は②着
アスカクリチャンに
6馬身の大差をつける圧勝劇となった。
アスカクリチャンと③着
アンコイルドの差は4馬身開いており、さらにその後ろ、人気の一角を占めながら⑤着に敗れた
ロゴタイプと
トウケイヘイローとは
2秒1差という大差がついていた。
結果的に、
函館記念①着の
トウケイヘイローがそのまま①着、
函館記念②着の
アンコイルドと、③着の
アスカクリチャンが入れ替わる形。
勝ち時計は8秒9もの差があり、レース内容は全く違っていたが、
函館記念の上位馬がそのままこのレースでも上位を占める結果となった。ある意味、これも
“思いもよらない結果”かもしれないが……。
それにしても、ハナに立った時点で
トウケイヘイローの好レースは予想ができたが、この結果には少し驚いた。というのも、
トウケイヘイローにとって芝の道悪はこれまで⑩③⑪⑧着で、
道悪はマイナス材料ではないか?と考えていたからだ。
しかし、今年の
小倉記念の
レースインプレッションでも書いたことだが、この日も
武豊騎手は馬場の傾向を事前に掴んでいた(と思われる)。この日の
武豊騎手は芝の特別競走で3連勝したが、2レース前、
札幌記念と同じ芝2000mの
定山渓特別で、
ネコタイショウに騎乗した
武豊騎手は同じようにハナに立ち、大差をつけて逃げ切っている。
札幌記念のラップを見ても、
前半1000m通過が61秒7、
後半1000mは64秒8。レースの最後2ハロンのラップは
13秒0、14秒0と、上がりはかなりかかっている。
それでも後続は為す術がなかったのだから、いかに道中の消耗が大きかったかがわかる。要は適性もさることながら、
“前に行った者勝ち”だ。
武豊騎手がこの馬場傾向を正確に掴んでいたこと、これこそが最大の勝因なのではないだろうか。
函館開催はあと2週残っていて、芝重賞も2レース開催される。今週重馬場でレースが行われたことで馬場状態がどう変化するか、注目しておくべきだろう。
一方、⑤着に敗れた
ロゴタイプにとって道悪、古馬相手のレースは初だった。これだけイレギュラーがあったのだから、この結果をもって、
今年の3歳馬のレベルに疑問を投げかけるのは早計だろう。条件が変われば、改めて見直す価値はあるはずだ。
今回の結果を受けて、
トウケイヘイローは
サマー2000シリーズで22ポイントを獲得し、トップに躍り出た。優勝者に年末の
ワールドスーパージョッキーズシリーズへの出場権が与えられる
サマージョッキーズシリーズも、
武豊騎手が43ポイントを獲得してトップに立っている。
かつてはこのシリーズの常連だった
武豊騎手も、10年以降3年連続で出場を逃している。4年ぶりの出場に向け、残り8レースでトップを守れるか、注目したい。