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これだけの変わり身を推理する方法はあったのか?
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也


エクスペディションが逃げを打つという、かなりの驚きの展開となり、そのエクスペディション②着に粘ったので、ペースが遅かったように思った人も多いかもしれないが、それほどでもなかった。1000m通過は59秒9で、稍重の馬場を考えれば平均的と言えるだろう。

新潟芝外回りコースで、通常の稍重馬場なら、差し馬の台頭があって当然の流れだと思う。しかし、結局、差して上位入線を果たしたのはコスモネモシンだけだった。③着のファタモルガーナも早めにポジションを押し上げていて、直線入口で3番手以内にいた2頭(エクスペディションファタモルガーナ)が馬券に絡んだ。

差しが利きづらいペースだとは言えなかったわけだから、これは差しが利きづらい馬場だったと言うべきだろう。発表は稍重だったが、それ以上に悪かった印象で、道悪の巧拙が如実に結果に表れたと思う。

③着になったファタモルガーナはこれまでの道悪芝が[1.0.1.0]で、戦前から馬場が悪くなってもこなせそうな雰囲気はあった。ただ、②着のエクスペディションと優勝したコスモネモシンは、道悪適性を判断するのがなかなか難しかった。

エクスペディションコスモネモシンも、重~不良という極悪馬場での勝ち鞍があった。しかし、いずれも下級条件でのもので、エクスペディションは道悪芝がOPに限ると④⑧⑥着、コスモネモシンも道悪の芝OPでは⑮⑥着で、果たして得意なのかどうか、外から見ただけではよく分からなかった。

エクスペディションは父がステイゴールドで、母父がリファールだから、血統的には道悪を得意にしても不思議ではない。コスモネモシンも母父がサドラーズウェルズ系のシングスピールだから、決して下手そうには思えない。

しかし、エクスペディションは前走の小倉記念稍重馬場で⑥着に敗れていたし、コスモネモシン洋芝の函館で⑯⑦着と結果を残せずにここに参戦してきた身だった。近走を目の当たりにすると、今回の馬場状態では、軸にはしづらい存在だっただろう。

結局、今回にどれだけの変わり身を見せるかを推理するかが馬券のキモだったようだが、エクスペディションについては浜中騎手が継続騎乗してきたことにヒントがあったようにも思う。

いつもは中団に控えて差す競馬をする馬を先行させて接戦に持ち込んだのだから、やはり鞍上の好騎乗だっただろう。浜中騎手は、今回の1番人気馬ニューダイナスティにも近2走で騎乗していたわけで(しかも連勝中)、それでも同じ厩舎のエクスペディションに騎乗したことにヒントが隠されていたように思う。それだけの気合が騎乗にも表れていたのではないか。

コスモネモシンについては、これだけの変わり身を見せるとは、正直、推理するのが相当に難しかったと思う。確かに、状態が上がっているような報道がなされていて、坂路で追ったのも2年ぶりだったらしいが、そのようなことが結果に直結しないことも多々あるわけで……。信じきれなくても無理はないのではないか。

コスモネモシン自身というよりは、新潟記念が行われたふたつ前のレース・9Rの村上特別(500万、芝1400m)にヒントがあったとは言えるのかもしれない。

村上特別は3連単が240万円を超える大波乱となったが、その使者となったのは16番人気だったラインロバートで、同馬はそれまでに9戦連続で⑨着以下を記録していながら、③着まで差し込んだ。

そのラインロバートを含めて、掲示板に載った5頭はすべて1~5枠で、重馬場ながら真ん中から内を回った馬が好成績を収めたレースだった。この結果を受けて、新潟記念も、「馬場は悪いが、こなせる馬は内でも差してこられる」という推理を立てることぐらいはできたかもしれない。

この推論を「無理筋でしょう」「後付けでしょう」と思う人は、今回の新潟記念の馬券はきっぱり諦めましょう。確かに、今回のレースは難し過ぎたから、きれいさっぱり忘れるのもひとつの手にように思います(私はそうします)。

これで新潟記念の1番人気馬は、02年以降で12連敗。それどころか、08年以降は2~4番人気馬も勝てておらず、6年連続で5番人気以下の馬が制している。

近6年の勝ち馬は、そのうち4頭が重賞ウイナーだったので、近走の勢い軽ハンデに惑わされず、実績馬はそれなりに評価すべきレースなのかもしれないですね。