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上位2頭は運も良かったが、実力差も決定的だった
文/編集部(M)、写真/川井博


いわゆる「展開予想」を始めたのは、故・大川慶次郎氏と言われていて、いまではほとんどの人が展開を予想すると思うが、最近はどうも、予想通りの展開にならないことが多いような気がする。今回もこれだけのハイペースになるとは、いったいどれだけの人が予想し得ただろうか。

発端はスタートだった。ゲートに不安があったのはフラガラッハゴットフリートだったと思われるが、フラガラッハは出遅れたものの、ゴットフリート好スタートを決め、3番手の位置に入り込んだ。これはゲート練習の成果が出たのだろう。

一方、最内の好枠を引き当てたと思われていたインパルスヒーローは、ゲート内で落ち着きがなく、案の定という形で出遅れてしまった。こうなると、最内枠が好枠から最悪の枠になってしまう。

ルナも出脚が鈍く、近走で短距離を使われてきたテイエムオオタカにハナを叩かれそうになった。それを強引な形で奪い返したことで、結果、ハイペースになった。

逃げるのはルナというのが大方の予想だったが、同馬が3走前に中山芝1600m(春興S・1600万)を逃げ切った時は、前半3Fが35秒1というペースだった。前走の漁火S(1600万・函館芝1800m)は36秒7。それを考えれば、重賞のここで楽逃げするには、好スタート他馬のアシストが必須だったのかもしれない。

ルナは簡単には逃げられないかもしれない。そこまでは予想できたとしても、前半3Fが34秒0というペースになることまでは想像しづらかっただろう。このペースは、近2年(11年、12年)と同じで、今年も差し馬が台頭する結果となった。

ペースが速くなり、各馬の位置取りも想像とは異なることが多かったので、道中は確認作業に手間取った。ドリームバスケットも前にいるの!? マルカボルトミッキードリームはそんなに後ろなんだ!? と、あたふたしながらチェックするハメになったが、そんな作業が不必要なほどにスムーズに流れに乗った馬もいた。その最たる存在がエクセラントカーヴダノンシャークだった。

エクセラントカーヴは久々の右回りに加えて、距離が前走から200m延び、折り合い面がどうかという不安もあったが、おあつらえのペースとなり、馬群の外目で流れに乗っていた。

ダノンシャークも、序盤に押されていつもより前目に付ける感じだったが、それでも折り合いを欠かずに追走し、トップハンデの58kgを背負っても、直線で33秒台(33秒8)の上がりで差してきた。

出走馬14頭の中で、前走の前半3Fが33秒台だったのはこの2頭(エクセラントカーヴダノンシャーク)だけだった。その点でハイペースになったことは運も良かったのだろうし、ゴチャつかない枠順(5枠)だったことも幸いしたのだろう。

ただ、付け加えるなら、最後にこの2頭は後続に2馬身以上の差を付けたわけで、今回の時点での実力の差も決定的だったように思う。

2頭の間には6kgの斤量差があったので、エクセラントカーヴに先に抜け出されては、ダノンシャークは成す術がなかった。それでも、を使われてきたエクセラントカーヴに対して、ダノンシャーク3ヵ月の休み明けで、元々の秋の目標も違っていただろう。ダノンシャークにとっては、及第点の秋初戦だったはずだ。

エクセラントカーヴは中3週で体重が減っていた(8kg減の424kg)が、それでも重賞のここを快勝し、今後に夢の広がる勝利となった。昨秋のアルテミスSを勝ったコレクターアイテムと同じ牝系の差し馬だが、コレクターアイテムハーツクライ産駒なのに対して、エクセラントカーヴダイワメジャー産駒。こちらの方が堅実性は高いのかもしれない。

エクセラントカーヴダノンシャークも、ある程度ペースが流れた方がレースをしやすそうで、そういう意味では、今後、G2G1になっても、パフォーマンスを落とさないのではないだろうか。速い流れで好成績を収めてきていることは、覚えておきたい。

上位人気に推されながらふた桁着順に敗れてしまったクロフネ産駒の2頭(ルナインパルスヒーロー)は、次走以降、ゲートがポイントになってきそうだ。

ルナは時にふた桁着順のある馬で、それだけに大敗を気にする必要はないのかもしれないが、インパルスヒーローはこれまで5戦して連外がなかっただけに、今回のダメージが気にかかる。

3歳馬は、東西の重賞で6頭が出走したが、セントウルSマイネルエテルネルの④着が最高で、京成杯AHゴットフリートの③着が最高だった。短距離~マイル路線は古馬の壁が厚そうなので、3歳馬はさらにもう一皮むける必要がありそうだ。