ホウライアキコが牝馬G1の主役へと一歩近づいた
文/浅田知広、写真/濱田貴大
この時期になると、G1の有力馬情報とともにちらほら流れてくるのが、来年の競馬番組に関する
ニュース。中にはハズレもあるものの、どうやら来年はいくつかG1にも手が加えられそう、ということらしい。G1に変更があれば、そのステップレースにも影響が出るものだが、2歳G1まで少々間があるこの
デイリー杯2歳Sはどうなるだろうか。
このレースのグレード制導入(84年)以降の変化を見ると、11月上旬の芝1400m・G2からいったん中旬になった後、徐々に施行時期を繰り上げつつ、97年からマイル戦、そして昨年からは10月の京都開幕週に行われるようになっている。
そんな流れを見て感じたのは
「人気面でもクラシックで主役級になる馬って、最近あまり勝ってないよなあ」ということ。そしてもうひとつ
「牡馬ばかり勝ってるからじゃないの?」ということだった。
歴代の優勝馬を眺めると、以前は
ニシノフラワーや
シーキングザパールなど、後のG1の主役、もしくはそれに次ぐクラスの牝馬も多かったこのレース。しかし97年以降は
牡馬15勝、
牝馬1勝。その牝馬1勝は、
桜花賞参戦こそかなわなかったものの、
阪神JFを1番人気で制した
レーヴディソールである。
さらに、
今年の2歳重賞は牝馬が4連勝中。そんな牡馬対牝馬の視点で見ると、このレースは
和田騎手の
アキコが勝つのか
川田騎手の
アトムが勝つのか。こう書くと、地球の平和でもかかっていそうな闘いで
和田アキ子が
鉄腕アトムを返り討ちにする図、という混沌とした状況が目に浮かぶが、それはさておき。今年の牡馬では
アトム、そして牝馬は
ホウライアキコに注目が集まった。
レースは、
アグネスドリームが先手を取り、
ホウライアキコはこの馬の出方を見つつ2~3番手。
アトムは中団馬群で我慢する形になった。前半の600m通過は33秒9。例年なら速くても34秒台中盤以降のレースとしてはハイペースで、展開としては
アトム有利にも思われた。
しかし4コーナーは、
和田騎手の
ホウライアキコが馬なりで回ってきたのに対し、
アトムは
川田騎手の手がかなり激しく動いた。そして直線もその手応え通り。
ホウライアキコがすっと後続を突き放すと、
アトムの追撃を抑えて重賞連覇。まずは
ホウライアキコが牝馬G1の主役へと一歩近づいたレースとなった。
ホウライアキコは、小倉開幕週の芝1200m
新馬戦を
レコードタイムで逃げ切ると、最終週の
小倉2歳Sは一転、重馬場の中でもパワーで押し切って2連勝。そして今回は再び開幕週の良馬場、そして初距離の1600mになったが、道中は手応え良く、そして前に馬を置かずとも掛からない落ち着いたレース運びで2度目の
レコード勝ちである。よほど阪神の坂を苦にでもしないかぎり、
桜花賞までは条件面の
不安は少なそうな印象だ。
ただ、ここで少し気になるのは新種牡馬・ヨハネスブルグの産駒成績で、現2歳馬は先週まで芝の連対率
20.0%に対し、ダートはなんと
55.6%。以前の外国産馬や持ち込み馬も、ややダート向きの傾向が出ている。
ホウライアキコは芝の道悪や、逆に
レコードタイムで押し切るような競馬の適性は見せているが、各馬とも脚が溜まった状態で長い直線に向いたらどうなるか。今後、そのあたりの適性が問われる
桜花賞への道筋となる。
しかし、仮にそういった展開が得意でなかったとしても、この馬の存在によって厳しい展開が作られ続け、結果として
連勝街道をばく進する可能性もあるだろう。まずは、おそらく次走になるであろう
阪神JFでの走りに注目だ。
一方、ここでは敗れた
アトムだが、少し前なら
ナリタブライアン(③着)、マイル戦になった後でも
エイシンチャンプ(④着)に
グランプリボス(⑦着)と、負けた馬から
2歳王者が出ているのがこのレース。牡馬はむしろ勝ち馬が2歳G1では苦戦しており(グレード制導入前の83年
ロングハヤブサが最後)、この敗戦ひとつで今後をどうこう言えるものではない。
そのレース内容も、窮地かというところからがしぶとく、最後は勝ち馬にクビ差まで迫っての②着。敗れた中にも
底力や
伸びしろといった、今後へ向けた手応えも感じられる一戦だった。