特殊なペースで、騎手が乗り替わった馬に向いた?
文/編集部(M)、写真/森鷹史
「メインレースの考え方」では、
騎手が継続騎乗した馬を上位に取る方法を採ったが、結果は、
騎手が乗り替わった馬の
ワンツースリーとなった……。騎手が継続騎乗で上位人気に推された
ショウナンマイティ(
浜中騎手)と
ダークシャドウ(
戸崎騎手)は、上位と離れた⑤着以下に敗れた。
ダークシャドウも
ショウナンマイティも
32秒8という上がりを計時しているので、流れが向かなかったことがいちばんの敗因だろう。ただ、レースが
特殊な流れになったので、それに対応しきれなかったとも言えるのではないか。逆に言えば、
騎手が乗り替わり、ジョッキーが先入観無く乗れた馬に向いたレースでもあったように思う。
レースは、1000m通過が60秒8で、
上がり3Fが33秒3だった。過去の
毎日王冠で、レース上がりが
33秒台になったことは、05年以降で4度あるが、その4戦の上がりは
33秒6~33秒8。
33秒台前半ということは一度もなく、この事実が今回の特殊性を物語っている。
これまでの
毎日王冠であれば、あと0秒3~0秒4は上がりがかかってもいいはずだった。そうなると、決着時計は
1分47秒0~1。
ダークシャドウと
ショウナンマイティは
1分47秒1で走破しているので、机上の論理では、接戦をしていた計算になる。
実際にそんな計算が働いたかどうかは分からないが、乗り慣れた鞍上であれば、いつもと同じ競馬をして、どれくらいの脚を使えるかは乗っていて分かるものだろう。ところが、
レースの上がりが想定を超えて速くなり、計算違いが起きたのではないか。そう感じたのだ。
優勝した
エイシンフラッシュは、これまで1800m以下では連対歴がなく、昨年の
毎日王冠では外枠の影響もあったのだろうが、差し届かず⑨着に敗れた。
今年も後方から差す競馬をするだろう、それだと1800mでは距離不足だろう、そう思った人が多かっただろう。ところが、ゲートが開くと今回は好スタートを決め、先行馬3頭を見る位置に付けた。これこそ、
騎手が乗り替わった産物だったのではないか。
福永騎手が
エイシンフラッシュに騎乗したのは、2歳秋の
萩S(③着)以来、約3年ぶりだった。偶然にも、コンビを組んだ過去2戦はともに
1800m戦。その時のイメージが残っていた……というのは考え過ぎだろうか。
②着に入った
ジャスタウェイはここのところ
出遅れるケースが続いていたが、今回は他馬と一緒にスタートを切った。たまたまなのかもしれないが、こちらも
柴田善騎手に乗り替わったことが好影響を及ぼしたように感じた。
③着に粘った
クラレントは
川田騎手がテン乗りだったが、初めて逃げの手に出た。勝ち切るためには好位で折り合いを付けた方が良かったのかもしれないが、③着争いを制したのは、常に
レッドスパーダよりも主導権を握っていたからだろう。
逃げた好影響は、少なからずあったように思う。
エイシンフラッシュも
ジャスタウェイも
クラレントも、近走のレースぶりからは
ちょっと想像しづらい位置取りでレースを進めた。結果的に、これが好成績をもたらしたと言えそうで、それには
騎手が乗り替わった影響もあったと感じたのだ。
もちろん、これがそのまま今後の
G1戦線につながるかどうかは未知数だろう。ここに出走した馬の多くは、
天皇賞・秋や
マイルCSに向かうのだろうが、
G1が今回と似たペースになるとは想像しづらい。再び好走をするには、今回とはまた違った面を引き出す必要があるはずだ。
ダービーに象徴されるように、
G1では
乗り慣れた鞍上の馬が戴冠するケースが多い。今年のJRAの
平地G1は、12戦中9戦の勝ち馬が
騎手が継続騎乗でもある。余所行きの競馬をして勝てるほど
G1は甘くないはずで、
G1では信念のこもった騎乗をした馬に幸運が訪れることだろう。
今回、騎手が継続騎乗しながら好結果が出なかった馬は、果たして、次走以降の
G1でどんな競馬を見せるか。今回の敗戦をどのように糧にしてG1に挑んでくるか。その
騎乗ぶりは見ものと言えそうだ。